呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(127)

   「判決」と「監査結果」の不都合

  住民監査制度は、直接請求権の一種である。陳情、請願の提出もそうだ。議会の解散請求、議員や公務員の解職請求もそうだし、住民投票を議会に請求するのもそうである。が、殆んど使われていない。まず署名集めが大変過ぎる。電子署名という訳にはいかないらしい。条例制を求める直接請求もそうである。住民投票を議会に求めても、まず住民等投票制定条例を議会が可決しなければ、住民投票の実施は不可能であり、議会がこれを否決する確率が非常に高い。払った労力と成果が一致しない、常に肩すかし状況になる。だから徒労感で嫌になり、ついに諦め、無関心状態に陥る。が、直接請求権の一種である住民監査制度の運用状況は、自治体間で温度差がある。今夏に住民訴訟(原告四万十町民山本たけし氏、被告四万十町長中尾博憲の判決を受けて「住民監査請求の却下は不適法」が気になり、判決文と却下文を読み比べてみた。

判決文の公表は、中尾博憲町長と森武士町長によって拒否された。

監査却下文の公表は、田辺幹夫監査委員長によって拒否された。

住民監査請求の却下理由が記された通知文は、請求人である山本たけし氏の手元にしかない。一般町民は、何が請求され、監査委員会がそれをどう判断したがが全く分からない、知る由もないという状態が放置されている。これでは、監査委員の力量、監査能力が不問に付されるではないか。監査委員についての自治法上の規程は以下である。

【改正】(平成 30 年4月1日施行)
第 196 条第1項 監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、「人格
が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し
優れた識見を有する者」(議員である者を除く。)及び議員のうちから、これを選任
する。
(追加)ただし、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができる。

どのような監査請求がなされ、それがどのような理由で却下されたかが一切分からなくて、果たして、「人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者」であるかどうかの事後判断が可能だろうか。判断するのは直接請求権を持っている住民でありながら、その判断材料が住民に提供されないということである。ここが地方自治の骨子ではないか。案の定というべきか、色々調べる中で分かったことは、住民監査請求の実態調査を実施している全国監査委員協議会なる組織がある。法人格さえ持たぬ任意団体である。是も任意団体である全国市町村議長会なる組織が監査委員協議会の業務を請け負っている。住所と連絡先は以下である。

全国町村議会議長会兼全国監査協議会

〒102-0082 東京都千代田区一番町25番地 全国町村議員会館4階
TEL:03-3264-8181(代表・総務部) TEL:03-3264-8182(企画調整部)
TEL:03-3264-8183(議事調査部)  FAX:03-3264-6204(共通)

何か変だと感じないだろうか。議長会とは議会側の全国版事務局(ただし任意団体)で監査委員会とは執行機関でありながら、議長会の事務局が監査協議会事務局を兼務している。見かけ上の頭は二つ、胴体部分は一つ、という事である。こ組織が存在しているから、「議員や監査委員の振りができる」のである。いわば「裏方振り付け師」と言ったところか。

議長会の業務内容:会議規則の雛形作り、議員必携作成販売、議員バッジ作成販売

全国町村議会実態調査実施、町村議会事務局からの問い合わせ対応

全国監査委員協議会の業務内容:全国町村監査委員会実態調査実施、町村監査委員会事務局からの問い合わせ対応

何のことはない、上記の「人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者」を満たしていなくとも、執行部に都合のいい監査を実施するための知恵を付けてくれるコールセンターが秘かに公費で設置運営されているということなのである。こんなインチキあるだろうか。判決を受けて、「住民監査請求却下は不適法」と指摘されているが、町長中尾博憲はそれに一言たりとも言及せず、判決文の公表を拒み、田辺幹夫監査委員長は、「住民監査請求却下は不適法」の解釈を拒み、監査請求却下の通知書の公表をも拒んだ、だが、全国監査委員協議会が監査委員会実態調査で調査票を送って来れば、監査委員会事務局職員、長谷部卓也事務局長と正岡静江次長の二人は、易々と、住民監査請求書、監査請求却下通知書、住民訴訟の結果等の資料を丸ごとここに差し出すのである。町民向けには出し渋って止まない監査資料(監査請求、監査結果、訴訟結果等)を全国監査協議会という任意団体主宰の実態調とやらには全面的に協力して提出するという人を食った噺が白昼、公務と称して事務局で展開されているのである。全国監査協議会担当職員によれば、

「監査請求があった時、どのような内容であれば却下か、棄却か、認容(監査に理由あものとして監査を実施し当局に対して是正勧告を出すかの参考事例として全国町村監委員会の監査委員の皆様にはご好評いただいております」

という事らしい。完璧にお得意様扱いである。ここが、監査委員会事務局が事例研究の素材集めには全面的協力を惜しまない理由でもある。ところで、この事例集、監査委員会会員でなければ閲覧できないという。運営経費は全て公費から出ているにもかかわらずである。この奇妙な手の込んだからくりは一切学校では教えない。私が議会に足を踏み入れた時の直感、「ここは、学校で習ったことと違う!!」はここから来ていたのだ。

 監査委員の振りができるからくりに違和感を持たず、知られないが故に成り立っている権威を振りかざして公表を渋り、町民に渡さない資料は全て同業全国組織には手渡すという囲い込み(enclosure)こそ地方自治の本旨から程遠いものはないだろう。それで「まちづくり条例(自治基本条例という名称もある)」や「議会基本条例」等聞いて呆れるではないか。しかも今回の判決は議会基本条例の23条議員報酬の解釈が争点となった判決なのである。それなのに町も監査委員会も公表を渋るのである。実に腹立たしい事この上ない。議長会も同じ穴のムジナである。四万十町は年間90万円の負担金を拠出している。その見返りに議員研修の講師を手配したり、四国大会、全国大会の開催や決議文の作成と国への提出等をやっている、分かり易く言えば、「田舎のよれよれ議会のよぼよぼ議長テーム団に自作自演の晴れ舞台を提供している」のだ。まるでカラオケか部活ではないか。公費接待に近い。更に手の込んだことに、国の予算要求資料等が議長会HPで提供されているという。ここも会員制で町村議会事務局のみに会パスワードを交付し、閲覧できるという。ここは議員時代に知った、が、議長会に聞けば、そのようなものは中央府省が既に誰でも見れるHP上で公開している予算要求資料の寄せ集めでありることを渋々認め、おまけに自分が所属する四万十議会で会員パスワードなど教えられたこともないという詐欺の様な実態があった。ここに年間90万円を易々と差し出している。何でも上に聞き指導を仰ぐ」「上にさえ忠実であれば身の危険はない」という大日本帝国時代からの役人根性は、敗戦をものともせず、このような態様で、日陰の地衣類のように生き延びてきたのである。戦後できた地方自治法なんのそのである。役人根性のしぶとさで換骨脱胎が秘かに練られ、実行されてきたのだろう。恐るべし役人根性である。その役人根性を脂汗の如く発散していたのが時の議会事務局長宮地正人である。この役人根性の見返りは何か、商工会事務局長職を退職後に手に入れた。町が出している運営補助金が原資である事務局長職月給30万円である。彼は議会事務局長としては機能不全を呈していた。法務調査上の機能不全である。この種の役人が組織的にサバイブできるシステムは、徹底的な可視化の隠然たる疎外の上に成り立っている。議会が議事録の公開に踏み切らない理由もここにある。だから議員も監査委員も誰もこの仕組みに異議を唱えない。なぜなら一旦その職に就けば「能力を問われず、楽して議員や監査委員をやるには持ってこい」の仕組みだからである。議会質疑が真剣身と面白さに欠け、監査の99%が却下の理由の根幹はここにある。議会の場合、特筆すべきは、質疑応答の形式である。「一括質問一括答弁」という奇妙な形式は日本独自の物であり、それも戦勝国アメカの日本を対象とした徹底的な「erea study」に基づく日本人の民族性に合った質疑形式の導入だというから驚きである。それも有名な菊と刀の著作者、ルイスベネデイクトの机上の研究結果、「日本人は恥と名誉を重んじる」によるものであるという、何だかすっかり拍子抜けがした。研究され、統治され、制御されている。それもアメリカに、今でも、明らかに今でもである。今でも「会議規則」は生きているからである。正確に言えば会議規則ではなく、「議会運営基準」に書かれている。これも雛形は全町村議会議長会が作成している。上記の話は全国議長会の初代事務局長から聞いた話しである。私は「議会の見える化を求める陳情」「議会運営基準」の公表も求めたが、「議会の内規である」と却下された。内規ではない、それに基づいて公会議が運営されているのである以上、公会議の運営ルールは公知のものでなくてはならないはずであるが、四万十町議会の面々にはその認識が毛頭ないようである。秘かに存在している組織の雇用されている役人紛いが作った形式に則る事で、議員の振りができる都合のいい内規として機能させている「ルール」を町民に明示することは,自分の質疑能力の可視化に繋がるから避けたいのである。「可視化による恥を晒すことの忌避」「公正さの実現」より重んじられている。やはり、アメリカは日本人を良く研究している。「一括質問一括答弁」形式が日本人の民族性に最も合った質問形式であるとルイスベネデイクトは結論付け、そのようにアメリカ政府に助言したのだそうである。一括質問一括答弁では論点が追いにくい、当たり前である。これは論点をぼかし、曖昧なままにやり過ごすには非常に都合がいい。これを民族性とは。長いものに巻かれるという処世訓には合致する。そうやって未だに巧妙にアメリカに間接統治されている。監査委員が町民に対しては、「法的義務付けがないから、必要ないから」知らせない、が公費で運営されている任意団体が実施する実態調査には協力を惜しまず、実態調査の集計によって類型化された「この時はこうすればいいの事例集」を特権的に閲覧しているのである。赤信号みんなで渡れば怖くないの典型である。日本国政府の統計不正の根底にも同じ構図がありそうだが、これこそ日本国の役人(公権力の保持者)が持つ権力構造の正体である。実に隠微にして姑息ではないだろうか。殆ど猥褻でさえある。この様な風習を受け入れる謂われは元々ないのだ。「町民と向き合い、自分で法令に直に当たり、自分の頭で考えて判断し、やってみる」ことを公務員には期待したいし、その様な公務員を要請していくには参画者である必要がある。そこで目下、住民監査請求のやり直しを画策した。まだ試作段階ではあるが原案を用意した。以下である。司法が監査請求却下は不適法と判断した監査請求却下通知文と合わせて読んでもらいたい。

ga kouhyousarete

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簡単に言えば、「監査委員会が監査委員会の不作為を監査しろ」という趣旨である。因みに高知県監査委員会は、却下の場合でも案件と却下の事実を公表している。

さらに埼玉県は、却下された住民監査請求の趣旨と却下の理由までも公表している。

www.pref.saitama.lg.jp

www.pref.kochi.lg.jp

これらの実態から四万十町監査委員会の消極的な姿勢が浮き彫りになる。高知県監査委員会事務局と埼玉県監査委員会事務局の公表理由は以下であった。

高知県監査委員会事務局:地方自治法の解釈により却下の場合も公表している。

埼玉県監査委員会事務局:地方自治法上の解釈ではなく、積極的な公表の姿勢である。前知事の時からの開かれた県政という姿勢によるものである。請求の容姿や却下の理由を県民に公表することで、住民監査請求制度が県民にとってより使い易いものになると考えている。

参考までに、地方自治法上の監査結果の公表に係る規程とは以下である。

地方自治法242条の5

第一項の規定による請求があつた場合には、監査委員は、監査を行い、当該請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、当該請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 彼我の違いは明らかである。四万十町監査委員会は、監査委員会事務局ぐるみで自分達の仕事のし易さを、町民の制度利用のし易さより遥かに優先しているという事である。これは、隠然たる権力の私物化ではないだろうか。結局監査委員とは、伝統的な「日本の権力構造の正体」に心身を沈潜し、虚栄心に満ちた自尊心を養いながら、そこを巣穴にしているのではないか。監査委員会における監査委員のその生存形式そのものを権力の私物化と表現したい。最後に判決文で言及された監査却下当時の監査委員構成は以下である。

監査委員 田辺幹夫、議選監査委員 堀本伸一

現況監査委員

監査委員 田辺幹夫、議選監査委員  水間淳一

住民監査請求は住民の権利である。これもアメリカの納税者の金(tax payers'money)の違法な支出に対するtax payerの異議申し立て権として発展してきた制度であるらしい。日本の戦後にはアメリカが良くも悪くも充填されている。「一括質問一括答弁」には閉口するが、少なくともtax payers'moneyを否応なく徴取,執行されている町民は、住民民監査請求制度位は、換骨奪胎なく自家中のものにしたいものである。残念ながら、正気の沙汰とは思えない愚策アベノマスクには使えない。地方自治法にだけある制度であるんだけれども。

西原真衣