呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(49)

      議事録、人を動かす

 49基の風車が立つ大藤風力発電事業計画について、請願提出者である、生態系協会、四万十大正町づくり株式会社、観光協会、朝霧森林クラブの代表者全員に、「谷口愛子さん講演記録」「フインランドの風車病疫学調査報告」「49基の風車から15km圏内の四万十町地図」「3月12日総常任委員会議事録」を送付した。これを受けて早速、生態系トラスト協会の中村滝男代表が、最新版の広報誌「森のしずく」を送ってくれた。それによれば、2月26日の総務常任委員会で、請願提出団体と総務常任委員の意見交換会が開催され、その録画が、Yu Tubeにアップされているというではないか。驚いた。なんで今頃こんな形でこんなことが分かるのか。非常に腹立たしいことこの上ない。誰に頼まれた訳でもないが、こちらは情報を可能な限りリアルタイムで収集、分析、発信して、何とか将来に禍根を残さないように、大藤風力事業計画の中止に向けて、地元住民の立場で取り組んでいるのである。それに反して、この議会の横着にして怠慢極まる対応は一体なんだろう。委員会報告書も見れない、議事録は仕上がっていない。議事録は公開しない。議事録を読むには情報公開請求がいる、という体たらくである。怠慢と慢心から生じる無知の汚泥が堆積し、腐臭を放っている議会という名のため池が、年間1億円以上の公金で維持されているのである。実に、厄災めいたことではないだろうか。これは、国レベルで言えることである。政府の無能と慢心と怯堕を日々見せつけられて、感覚が麻痺した国民一同は、もやはもっとましなものを想像さえできなくなりつつあるのではないか。それが最も恐ろしい。とはいえここに来て、私にとっての朗報が二つ入ってきた。自前の議事録速報を作成、これはと思う人物に向けて提供した甲斐があったのである。

その①一作年の議員報酬引き上げの経緯が、違法な公金の支出に当たるとして住民監査請求がなされ、監査委員によって却下(不受理)されたために、高知地裁に提訴がなされたこと。無論被告は、議会からの要望を受けて町長提案で一挙に議員報酬を45000円も一挙に引き上げた議案を議会に上程した、愚かなる四万十町長中尾博憲その人である。高知における第一回口頭弁論は4月28日であるそうなので、議員報酬引き上げに義憤を持つ四万十町民有志は是非傍聴に行ってみては、いかがか。

知人経由で却下通知書や訴状の複写物を入手した。両方とも最高裁判所判例を援用した論理構成になっていた。それしても、監査委員(代表監査委員、田辺幹夫、議会選出監査委員、堀本伸一)は、監査委員会事務局(議会事務局と兼任)を通じて全国町村議会議長会中に設置されている監査協議会に照会して回答書を作成している監査協議会は監査の実務書「監査必携」を作成している。町村議会議長会とは、任意団体であり、参加団体の負担金で維持されている。町村議会は、都道府県町村議会議長会負担金を拠出する(因みに四万十町議会は高知県町村議会義委長会に年間80万円を負担している。そして高知県町村議会議長会は、全国町村議会議長会に負担金を拠出しているのである。四万十職員の常套句は、「県に指導を仰ぐ」であるが、議会や監査委員会においても同様に、県や国に指導を仰げる体制が盤石に築かれているのである。公金で指導を仰げる身分の方々は、自己研鑽を怠ることが習い性となり、退化と劣化が進行する。これが、町民福祉の向上の本質的な妨げになるのは、自明の理である。把握せず、理解せず、対外的説明能力が養成されたことのない職員が、全ての町の事業を運営しているのである。上級官庁や任意団体が、代わりに全ての言い訳を考えてくれる。議会においても、監査委員会においても、教育委員会においても、事態は同様である。総務常任委員会のレベルの低さは町民に取って厄災であるが、「住民監査請求」という地日う自治法に明記された直接請求嫌悪一つである住民監査請求制度、ここにも非常に可視化されに居、合法的を塗布された、参画や抗議への障壁があるのである。制度的には表面化されない、この仕組みこそが、日本国における本質的な統治の原理であると、私は考察する。これは、天皇制その物である。中心が空洞であり、責任の所在がどこにもない。私は、実に、これが受け入れ難かった。私は明晰にして明白なものを好む人間なのだ。議会という場でそれを発揮することに何の問題がある、と思っていたし、今でも思っている。私の議会質疑の内容は、議会議員に政治倫理上あるまじき、公務員に対する個人攻撃と全会一で見なされた。けれどもこの場を借りて言えば、私が議会で問うたことは、情報公開審査会の審査会長の、審査会長としての言動や教育委員会次長の次長としての言動を、彼らの職務遂行能力に関連させて言及しただけの事である。これが想定外の物議をかもした。江戸時代以来のお上の統治の原理が、家制度に基づく一致団結と連帯責任を基盤としてきたことの痕跡が、統治された側のメンタリテイに色濃く残っているのだろう。今「空気を読む」とか「忖度する」とか呼称され、時流化されている現象は、何一つ新奇なものではないのだ。この日本社会の根底を通底している暗黙の了解である「所属組織への忠誠が即ち生存保障である」という生存形式から生じる必然的な、集団的判断様式なのである。安倍政権は、法律を理解しないがゆえに脱法と不適法、不法を国民の目に晒してきた。しかし、政治の劣化は国民の劣化である。

その②請願提出団体の一つである、ボランテイア森林整備グループ「朝霧森林クラブ」の嶋岡幹雄氏が、私の提供した総務常任委員会の議事録を食い入るように見つめた挙句、「堀本伸一議員は、2月26日の意見交換会の場では、オリックス社をスポンサーにしてヤイロチョウを保護する、などとは発言しなかったし、自分の発言内容も収録されてない可能性がある。更に、水間淳一議員と堀本伸一議員には、原発には反対してきた(40年前の窪川原発の事を指す)発言があるが、当時を知り抜いている自分は、そうは認識してはいない。その上で、低周波音の健康被害にも関心を寄せ、森林経営管理法や改正農地法の背景に、政権に深く食い込んだロビーイストとしてのオリックス社の存在がある」と島岡氏は、私に力説したのである。

請願が付託されている総務常任委員会委員である堀本伸一議員と水間淳一議員が、請願提出団体との意見交換会の場とそうではない時では、出し物を変えている、つまり発言内容を変えつつ、さらに請願採択できない理由付けとして、原発に反対した立場上、原発代替エネルギーと見なされている風力発電には反対しにくいという布石を打っている様が手に取るように分かるのである。つまり地元賛成派の票を失うまいとしている。かように議事録を共有すれば、現職議員発言の真意が浮き彫りになる。議事録こそ、議員を選ぶ際の最も確かな判断材料なのである。しかし残念なことに、一般町民は議事録を読まない。私が提供したリアルタイムな議事録を食い入るよう読んで、その後の行動に繋げた二人の人物は、やはり二人共元議会議員なのだ。議員でない今も議事録を読み、町政に参画をする、そしてこの両者は、共に80歳代の年齢である。この事実に接して私は、窪川原発以降の40年間、この地の「人、まち、しごと」(地方創成の標語)がどのように変容し、それが、この地の人の意識をどのように変容させていたのかを、改めて考えざるを得ないのである。所で、地方創成と言えば、東京の経済同友会に地方創成委員会なるものがあり、高知県尾崎正直知事の時に東京の経済同友会と連携協定を締結している。内閣府には、大企業連携室があり、経済同友会会員企業が、定年退職後に再雇用された60歳超の社員を、地方創成目的で、アグリのような地方の第三セクターに出向させている。従って、加工施設の稼働を睨んで、JALから迎え入れた営業部長の給料は、出向先であるアグリが毎JALに振り込んでいるのである。そしてこの給料の額は四万十町民は愚か、取締役にも明らかにされていないのである。取締役会で、誰もそれを聞かないのであろう。ここにも暗黙の了解がある。代表締締役の森武士副町長が、契約書を持っているのだそうだが, JALとアグリ間の契約書は、「法的公文書不存在」で、私という町民に開示されなかった。アグリ窪川の設立目的は「農業者の所得の向上と都市に向けての情報発信」であるが、情報発信はさて置いても、最も肝心な農業者の所得の向上の成果が数値化されて町民に知らされたこと、つまり議会に報告されたことは、かってない。そしてどの議員もそれを調べず、質疑しない。おまけにアグリ窪川生産者組合の現代表者が取締役の一人であるが、生産者組合の意見が集約されて取締役会で審議されたという話も聞いたことが一切ないし、第一取締まり役会議事録は株主でなければ開示請求権がないのだという。四万十町にぎわい創出課の地産外商室長小笹氏によれば、「設立時からこの人物が取締まり役であり、経緯、理由は不明である。取締まり役の就任には株主総会での議決がいるが、定款上、株主であることは取り締まり役になるための要件ではない。慣行で、出資団体である町、商工会、森林組合、農協、観光協会、仁井田米米組合の出資率に応じた代表者が各団体の代表者として取締役に各団体から推薦されている。生産者組合の代表者は生産者組合の総会で議決される。生産者組合は出資団体ではない。今の代表者がどのような経緯で設立時に取り締まり役となったかは、不明である。」との事である。因みに嶋岡幹雄氏夫人によれば、ごく最近、最も有為な意欲ある従業員二人がアグリを去ったらしい。無べなるかな、と私は思うのである。ここにも誰も責任を取らないシステムが存在する。新加工施設に投下される6億円超の税金が泣く。因みに私の周辺で、常勤専務理事を抑えて、おそらくJAl出向者である営業部長も抑えて、「アグリで今最も采配を振るっている」と囁かれている駅長は、中尾博憲町長の甥である。おまけに中尾博憲町長は、窪川町職員時代に、アグリの駅長に出向して、残業代だけで30万円を取っていたという話も仄聞しているのである。だからこそ、私は心の底から、高知地裁における4月28日の第1回口頭弁論には、傍聴に赴きたいし、もし原告代理人弁護士から証言を求められたら、「議会で見聞きしたこと」を包み隠さず全て証言したいと思うのである。

 

元四万十議会議員  西原真衣