呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(128)

         「個人情報」の倒錯

以下の事項は個人情報なのかを考えてみた。

1.議会に対する陳情、請願の提出者の氏名、住所

2.情報公開の開示請求者の氏名、住所

3.町職員の時間外勤務実態調査アンケート(四万十町議会総務常任委員会主催)における記入内容

1、は今個人情報扱いとなっているようである。現に私が過去に議会に出した「議員毎の投票行動の一覧表を議会だよりに掲載して欲しい」陳情の提出者名西原さん」が岩井優ノ介議員の発言内容に含まれているという理由で、開示請求対象であった録音データから削除するための編集ソフトの購入予定があるという。因みに価格は57000円相当だという事だ。陳情、請願請願提出者名は、秘匿すべき、即ち第三者への漏洩によって当該個人の「知られたくない」という権利権益が損なわれる情報と言えるのだろうか。私は大いに疑問である。四万十町議会のHPによれば、陳情請願の提出方法というページには、提出者の氏名、住所、賛同者の氏名住所、の記載を要件として明示している。「匿名」では受理しないと受け取れる。これに応じて氏名、住所(出所)を明らかにして提出した陳情請願の提出者名を議会発言の議事録中で、「削除・黒塗り」にする必要などないだろう。それはむしろ陳情請願提出者を貶めることに繋がらないだろうか。陳情者とは、「要望の実現を望むが、出所は知られたくない存在であり、知られることで風評被害を受ける」と想定しているかの如き、不健全且つ不当、不必要な配慮ではないかと思うのだ。陳情請願提出者というのは「請願権」という権利の行使者であり、個人的な判断に基づいてその権利を行使しているのである。普通選挙における秘密選挙、投票の秘密とは全く異なる権利の行使形態である。受理する側の議会や行政が提出者名を個人情報=プライバシー権と見なすのは、根本的に曲解ではないか。と言うのも、個人情報や情報公開についての定見を持たない一般公務員は、氏名と住所の表記を見れば、条件反射で「個人情報」と見なす曲解が横行していることを知っているからである。彼らはなべて、「氏名、住所とは誤って流出させたら咎められる、個人が特定される情報」という刷り込みに従っている傾向がある。

 「個人情報とはその個人の属性を構成する当該個人に帰属する情報であり、個人情報の帰属する当該個人にその個人情報のコントロール権がある。」というのが、個人情報保護」という法的な概念の土台である。が、これがこの制度の運用者である公務員に理解されていない。彼らは、ただおっかなびっくりで「個人を特定化できる情報は外に出してはならない。」と記憶しているのである。彼らにあるのは「丸暗記による対処法」であって「理解」ではない。煎じ詰めれば彼らは、公務員に採用されてからこの方「~とは何か」ここで言えば、「個人情報とは何か」ということを考え、理解し、運用する訓練等は一切受けていないという事なのである。個人情報とは何かが判断できないから当然情報公開とは何かも判断できない。その結果町民が当然知り得るべき情報も、知り得るところとはならないのである。この情報開示度は、即ち町行政の透明度であり、ここが不透明であって、職員の質の向上はあり得ないのだ。一切が不問に付されていれば(知られることがなければ)、職務上の極めて低レベルな自己完結が成立するからである。今起きている統計不正の根っ子もおそらくここにあるのではないか。

2.情報公開の開示請求者の氏名、住所

これには、公務員が職務上知り得た情報として守秘義務が課せらている。「誰が開示請求したか」が知られると萎縮を招くという捉え方が背景にある。これは一定理解できる。情報公開制度というのは、原則的に、何人に対しても行政文書の開示請求権を制度化したものである。税によって運営されている行政組織が「職務上入手、作成し、組織的に用いる共用文書」と定義されている行政文書へのアクセス権を万人に保障する制度である。が時折、政務調査費の開示請求者の氏名の提出を議会事務局に求める地方議会の実態が報道されたり、情報公開請求者が特定化している、とか請求件数が多いを理由に「通常業務以外の業務に忙殺され、職員の職務に支障が出ている」という主張が、「職員を慮る」という体裁でまことしやかになされる地方議会の実態もまま見聞する。私自身も当時の所属議であった四万十町議会で、「議員の地位を利用して(議員個人には与えられていない調査権を職員に対して発動して)職員に圧力をかけ、職務に支障をきたした。」という疑義に基づき辞職勧告を受けたことがある。が、情報公開制度とは万人が使える制度であり、議員であるからこの制度を使うべきでないなどという言い分には全く理がないのである。抑々情報公開条例も個人情報保護条例も、執行部提案で議会に上程され議決したのは当の議会ではないのか。制定された条例がある限り、それを運用するのは当然のことで、情報公開請求への対応は、もはや「通常業務以外」などではないのである。地方議会で時折このような珍妙な議員発言事件が起きるのも、「知る権利」に元々最も疎い輩に限って選挙に出たがるという、拭い難い「政治的風土病」が未だ日本中に蔓延しているからである。議員バッジが表徴している行政内部情報を特権的に知っているという事こそが口利き、収賄斡旋等の議員の権能の存立基盤でもあり、同時に執行部を交渉相手とした水面下での利害調整も議会の実質的な権能であるという、その類の議員連中の現実認識の前には、「知る権利」など端から煩わしい戯言として排斥すべき観念なのである。従って、一般人に知る権利を保障することは議員特権の侵害に繋がるという彼ら特有の縄張り意識から来る思考回路を生み出している。が、これは単なる長年の慣習からくる政治風土病的な意識構造であり、制度上の客観や合理性は毛頭ない。その証拠に、この様な類の地方議会議員はほぼ漏れなく、情報公開条例や個人情報公開条例を全く理解していない。具体例を挙げれば、

※ 図書館協議会委員名を、「個人名は個人情報だから決算特別委員会の場で出さない方がいい。」と発言した武田秀義議員の事例

審議会委員は教育長が任命し、教育委員会が承認する。委員名が明示されないことはあり得ない。職務を拝命する人名は人選の筆頭根拠事項である。従って「特定されようと」個人情報ではない。それとこれとは別の事である。審議会委員とは議会議員と同様に報酬が発生する特別職の公務員に近い位置付けの存在である。武田秀義議員にはこの根本理解がない。一般質問が空転するはずである。用語の定義や論点整理の次元で既に頭の中が曖昧模糊状態なのである。

※ 愛知県東栄町議会の森田昭夫議員が、「情報公開請求の件数が、近隣自治体と比べて非常に多く、職員が対応に追われ、「働き方改革」の推進に逆行する事態が生じている。職務に支障をきたしている開示請求者の氏名は町民には知る権利があるのではないか。開示請求者の氏名を明らかにする考えはないか。」と一般質問している。

 

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注目すべきは以下の発言である。

森田昭夫議員:以前から政争で多くのチラシが配られたが「追及、訴訟まではしない」を町民が選択してきたと思う。最近情報公開請求などで職員は通常業務以外に多くの時間を割いており、インターネットなどでも否定的な書き込みがあり、近隣町村から揶揄されることは多い。

「行政に対する町民間での意見の流布は、「政争」であり、それでも「追及、訴訟まではしない」ことが良識ある町民の総意であり、情報公開請求者や住民監査請求者は、町民総意から逸脱した特定の集団であるので、誰がそのようなことをし、町職員に職務上の負担やインターネット上の否定的な書き込みという被害が生じている。その様な迷惑事の原因を作っている厄介な人間が一体誰なのかを知る権利が町民にはあるのではないか。」という論法が展開されている。「納税者にして有権者である一般町民が、税によって納税者のために運営されている行政情報を知る権利」との対比は、ここには全くない。私に対して議員の調査権云々を持ち出して「職務に支障」と主張した四万十町議会の面々と発想が近似している。年齢的にも近い、この森田昭夫議員も日本中に蔓延している収束の兆しが未だ見えない根強い政治的風土病の罹患者である。議会の調査権とは、地方自治法100条に基づくもので情報公開制度とは無関係である。法律と条令を混同してはいけない。要するに議員職にしては彼らは、法務リテラシーが低過ぎるのであり、その愚劣な混同を振りかざして政争の具にしているのは、町民ではなく常に政治家集団であることは、周知の事実である。国会を見れば一目瞭然である。

※ 職員に対して非公開を前提に、「時間外勤務調査」を実施した四万十町議会総務常任員会の委員会活動がある。なんでも「働き方改革」の一環で意に沿わない時間外勤務から来る職員のメンタルヘルスの改善がアンケ―トの実施目的と聞く。

彼等もまた、四万十町個人情報保護条例上、「職員の職務名と職務内容は個人情報から除外する」を理解していない上に、暗黙の強制による残業代未払い時間外労働実態や最悪のケースでは過労死までもが起こり得る民間企業と、超過勤務手当稼ぎの時間外労働が横行している四万十町職員に対して、「働き方改革」「メンタルヘルスの改善」などという戯言による実に醜悪な、町職員への迎合振りを発揮している。労働環境という社会事象に対して、呆れるほど不見識にして不定見でなければこのような発想自体が生まれてこないだろう。このようなアンケートをそれも非公開前提で実施した総務常任委員会のメンバーを再確認したい。無論彼らは選挙で選ばれている

委員長 緒方正綱、副委員長 村井真菜 委員 岩井優ノ介 味元和義 橋本章央

かく「個人情報」の認識が錯乱しているのは、職員も議員も同様であるようだが、最低でも、議員選挙時には試験を実施すべきではないか。できれば職員採用時や職員研修時にも情報公開条例と個人情報保護条例の条例の解釈を答えさせる試験の実施が望ましい。それによるリテラシーの向上は、必ず職員の説明能力や議員の質疑能力の向上に資するはずである。ただ誰が作問するか、それが問題ではある。

西原真衣