呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(44)

予算の可決と否決

平成31年度当初予算案に対して、質疑の後に岩井優ノ介議員から反対討論が出た。

反対意見の趣旨は、「10月に予定されている消費税増税対策であるプレミアム商品券予算等を織り込んだ予算編成となっているから、消費税増税反対の立場で予算案に反対する。」というものであったらしい。一見なるほどである。けれども予算案とは一般会計、国民健康保険特別会計国民健康保険大正診療所特別会計、国民健康保険十和診療特別会計、大道へき地診療所特別会計後期高齢者医療特別会計介護保険事業特別会計簡易水道事業特別会計、農業集落排水事業特別会計、下水道特別会計、水道事業特別会計毎に議案を構成しているのである。ここで一般会計予算案が、質疑、討論、議決を経て初めて一般会計予算の執行が可能になる。後も同じである。岩井議員は、共産党所属議員であり、田辺哲夫議員と会派をなしている。この3月定例会には、共産党有志からの「消費税増税の反対を求める陳情書」も四万十町議会に対して提出されていた。つまり、共産党は消費税増税に党を挙げて反対であったということである。それは、本質的に自由な、政党としての公式見解である。ところが、四万十町議会ではこれに、妙な物言いがついた。議会での妙な物言いには慣れっこになってしまった私ではあるが、岩井議員の反対討論に次ぐ、堀本伸一議員の賛成討論の内容という形で展開された妙な物言いについて、深い疑義を覚えたので、ここで改めて検証してみたい。堀本議員の賛成討論を議会議事録から抜粋する。

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今、岩井議員のほうから当初予算の編成の中で、疑義が感じる予算があると。そういう場合には反対ということで討論がありましたけれども、予算の仕組みとして、そういった状況が理由として、予算に対する反対を感じ投じたら、この予算の中で全ての予算に対して、各議員が賛成の意思を持っておられるでしょうか。ですから予算の編成に対する討論ということになれば、私はそういうものではないと認識をしております。ですから私も気になる予算のところがあります。それを、それぞれの議員がそれを理由に否決したら当初予算は飛びますよ。ですから、予算の編成というのはそういったことが理由で反対ということにはならないと私は思います。

これに対して当の岩井議員からも反論は出ていない。なので結局、この堀本議員発言があたかも正当であるかのような印象だけが残ってしまったのである。堀本議員の言うように、予算案に個々の議員が各々の対場で反対したら、本当に当初予算が吹っ飛ぶのであろうか。もしそうであれば、なぜ、予算案が一議案として上程され、質疑、討論を経た議決の対象とされているのだろうか。反対多数で予算案が吹っ飛ぶという仕組みが本当にあれば、どの議員も恐ろしくて反対などできないのではないか。堀本議員には是非この質問には答えてもらいたい所ではあるが、地方自治法とその公式解釈(総務省行政課が示すものをここではそう呼称する)によれば、予算案は吹っ飛ばないのである。

議案に対する議決権は議員各位に付与された基幹的な権能である。だから、勝手であろうがなかろうが、議決権の行使は各議員の完璧な裁量の範疇にある。その行使結結果如何(否決に至る可能性)を踏まえた規定が地方自治法には明記されている。以下がそれである

地方自治法176条第1項

長は、議決の内容に関して異議があれば、再議に付すことができる。否決によって、再議に付さねばならないものは、

地方自治法176条第4項

議会の議決がその権限を越え又は法令若しくは会議規則に反するものと長が認める場

地方自治法177条第1項

収入また支出に関し執行することができないものがあると長が認める場合

地方自治法177条第2項第1号

義務費を削除または減額する議決をした場合

地方自治法177条第2項第2号

非常災害等に要する経費を削除または減額する議決した場合

再議に付して尚且つそれが出席議員の2/3以上の賛成により再議決された場合は、長はその議決に拘束される

注釈:義務的経費とは、法律や条例で執行が予義務化されている予算枠を指す。

概括すれば、否決によって予算が執行できなくなるのを防ぐための予防措置が法に規定されている。それでも最終的に否決されれば、それは、議会の長への不信任を意味する。長には占有的な予算編成権、提出権が付与されている。予算案哀愁否決には議会解散で対応できる。若しくは辞任する。これが長と議会の対峙、拮抗関係であり、議会の長に対する監視権能の本体である。堀本議員をはじめ、他の議員もこの基本原理を理解していない。若しくは理解していない振りをしている。いずれにしても、実におぞましいことである。

議事録によれば、岩井議員は消費税関連予算が織り込まれているがゆえに、一般会計当初予算案に反対したのであり、議決権を行使できる以上、反対討論に立ち、反対に賛同を求め最後に反対票を投じる権利は当然ある。その前段での反対討論である。反対意見への賛同を募るものであるこの岩井議員の反対討論に触発された形での堀本議員の賛成討論が続いたが、予算案が一議案である限り、それに反対する権利は全ての議員にある。だからこそ、上記の方の規定が存在するのである。従って予算の編成に対する討論ということになれば、私はそういうものではないと認識をしております。ですから私も気になる予算のところがあります。それを、それぞれの議員がそれを理由に否決したら当初予算は飛びますよ。ですから、予算の編成というのはそういったことが理由で反対ということにはならないと私は思います。という内容の堀本議員の発言は本質的に虚偽であ。が、誰もこれ反論できない実態が存在したことを、町民は注視すべきである。このレベルの法律知識さえないがゆえに、このレベルの堀本議員の議会のフィクサー気取りの作為的なミスリードが議場で通用しているという事である。そしてそれに、議員はおろか執行部さえ、誰一人反問さえしない。平成21年の議会基本条例制定後には、執行部は議長の発言許可を得たならば、反問できるのである。私の知る限り、執行部が反問権を行使したのはわずかに2回である。1回目は、自由討議の最終場面での中尾町長の反問である。

ケーブル中継を見ている多くの町民の皆様にあたかも公平公正な補助事業が執行されていないような印象を与えるは発言がありましたが、私はあくまで公平公正に補助事業を執行しております。

2回目は、私の一般質問に対して、川上哲夫教育長が行使した反問権である。

町長室である人を推薦したと16番議員は発言したが、推薦というのはどういう事かな、私はこの行為は、四万十町議会議員政治倫理条例違反であると思う。私には、政治倫理審査会の立ち上げを要望する権限はないが、ここはぜひ、議員の皆さんに政治倫理審査会を立ち上げていただきたい。

上記2か所しか、私には、記憶にないのである。敢て注釈すれば、中尾町長の反問内容は、単なる自己喧伝であり、議論が全くかみ合っていない。補助事業が、公平、公正に行われているというのは証拠、具体性に基づかない、自己喧伝でしかない。

川上教育長発言は更に、奇妙奇天烈である。私からの推薦後、森副町長からの公募導入の勧告を経て、教育委員会定例会で公募ではなく選任と決定したのは、川会教育長その人である。私は公募を受け入れたし、推進者の名前も出していない。私に取っては単に、公募によらない選任という名称の縁故採用(役場退職者や学校教員退職者に退職後のポストを占有的に提供する)の悪習を立つ目的の試行であった。

総じて、議会の参加者が、法律や条例に無知であるために。虚偽が通用し、議会が空転し、結果的に既得権だけが守られていくのである。既得権とは、具体的に言えば、情実人事の横行に留まらず、補助事業の周知が特定の事業者に偏る傾向や、中には特定の事業者が、補助事業の制度設計を町に働きかけている実態もある。また、本来不必要である職員の時間外勤務も後を絶たない。議会の監視機能とは、これらの諸問題に具体的にメスを入れ、行政の事務事業遂行の実態を露見させ、その露見によって、執行体制の是正を促すことである。そのためには、行政の事務事業執行の詳細を事前に綿密に調査するしかないのである。私はこれを実践していた。自分のやり方が唯一とは思わないが、不当であるとは全く思えない。これによってしか、抑止力は生じないのである。職員の時間外手当追及は、味元和義議員の十八番となっている感があるが、味元議員は基本的に不勉強が著しい議員であり、かっての同僚議員よれば、自分を詐欺師と言ってみたり、はたまた聞予算書を議員ロッカーに入れっぱなしであったらしい。それはそうであろう。増してや法令等真面目に読むはずもないのである。その証拠が味元議員の議場の見せ場「職員の残業問題追及」場面である。答弁に立った清遠総務課長は、「職員が特定される恐れがあるので課名や職務内容は言及を控える。」と答弁してきた。味元議員は、それ以上は追及しない。そこから始まるのは単なる味元議員の与太話的な説教である。「自分は自営業で汗をかいている。そのようなやり方は、民間企業では通用しない。民間感覚を持たなくてはいけない。」が定番である。議会とは、説教する場ではないし、教え諭す場でもない。実態を明らかにする場である。四万十町情報公開条例にも、個人情報保護条例にも、一読すれば分かる事であるが、職員の氏名、職務内容は個人情報に該当しないと明記されているのである。従って法外な時間外手当を発生させている職員の氏名及びその時間外職務内容は、個人情報ではない。本来はこれを根拠に本会議で時間外職務内容を詳細に答えさせるべきである。その際、その時間外が止む得ない正当な職務内容であれば、本人には何ら不利益を与えないはずである。条例の趣旨はここにある。「職員の氏名、職務内容は個人情報に該当しない」には、対外的に説明できないような時間外勤務を抑止する趣旨、実効性があるのである。

これが議場で質疑する側(味元議員)にも答弁する側(清遠総務課長)にも理解されていない。私は断言する。彼らは条例を読んでいないのである。前述の堀本議員に至っては、総務常任委員会委員長であった時、味元議員に進言されて時間外実態調査を実施した。私は当時、総務常任委員会委員であった。各課から管理職を委員会に招聘し、半日掛りで実態調査を実施した。各課に堀本委員長が作を要請した資料は、「時間外の月別平均値」であった。委員会冒頭には、「この調査の目的は職員の福祉の向上である。」と発言した。更に「調査結果によっては正規職員の増加も視野に入れる必要があるのではないか。」とも発言した。そしてその調査結果を執行部に送付さえしなかった。この堀本議員、親類縁者に役場職員が多い(子供及びその配偶者)のは、果たして偶然であるのか、はたまた、過去の私の議会質疑「シルバー人材センター事務局長と教育研究所所長、しまんと町雇用創出協会事務局長が、歴代役場退職者と学校教員退職者で占めらえているのは問題ではないか。」に対する中尾町長答「役場退職者と言えども優秀な人材は排除できない」を捩れば、「 現職議員の子弟と言えども優秀な人材は排除できない。」であったのだろうかと考えざるを得ない、堀本伸一議員の公式発言の数々なのである。いずれにしても私としては道半ばである。退職後ポストが町の補助交付団体である組織、具体的には、シルバ人材センター事務局長、教育研究所所長、しまん町雇用創出協議会事務局長、商工会事務局長の当該ポスト就任者に関しては、「公務員退職者だからと言って排除できない優秀さの持ち主であるかどうか」を実証検分するという仕事がまだ残っている。ある程度の進捗もあるのでこのブログで、その実証結果を追って四万十町民に報告したい。

 

四万十町議会議員  西原真衣