呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(15)

    中尾博憲町長の意志が見えない 

四万十町オリックス社からの依頼を受けて、オリックス社に向けて発行予定の土地貸借同意書についての取り扱いが、目下最重要事項ではないか、と考える。企画課山本課長は、私に対して、契約書では同意書であり、賃貸料の提示は含まない、と言い切った。資源エネルギー庁が、最終的に賃貸契約書を求めている以上、同意書は、契約書への布石になり得る。大規模風力発電事業によって環境影響を受ける四万十町民にとって最も重要なのは、大藤風力発電事業計画に対する町の意志である。従って同意書が町の意志表明上、どのような意味を持つのかを町民に対して詳らかにしなくてはならないはずである。そして、それを町にさせるのは、議会を置いて他にない。それにもかかわらず、現時点までで既に、町側の無償貸借ではない同意書の提出意志を理由に、下元昇議長が総務常任委員会の場で「議決事項でないので特別調査委員会は立ち上げない。」と明言したり、中尾町長が本会議の場において、「特別調査委員会とかではなく、議員を交えた、利害関係者の懇談会を開催する用意がある。」と発言している。これは、町が議会を巻き込んで、町の意志を町民に対して詳らかにしようとする意志を欠いていることの、紛れもない現れではないか。町と議会の本来の責務がここで、既に放棄されている。私は先日、大藤風力発電事業計画に反対を公言している岩井雄之助議員、村井真菜議員、武田秀義議員に対して特別調査委員会を立ち上げるよう文書で依頼した。が、今の所、誰からも応答はない。恐らく応答がないことが、応答であると推測している。議会本会議という議員の仕事のハイライト部分で反対意見を公言した3名の議員から、特別調査委員会立ち上げ依頼への応答がない。つまり返事がない。この事実は、四万十町民にとって、22%引き上げられた議員報酬によって、町民が従来に増して感知できるはずの「議員の働き」を測る際には、抑えておくべき事ではないかと思う。

 私見では、議員の仕事とは、年4回の定例会で、一般質問(事前に要通告、一人1時間の時間制限あり)と呼ばれている、ある種の作文発表会に参加する事ではない。議会は、演舞場ではない。質問通告があれば当然、答弁する側も答えを準備できる。国会と同様、町議会においても質問取りと呼ばれる、答弁者が通告者本人に質問通告の意図を詳しく聞き出す、開会前の事前作業がある。この事前作業は、通告質問内容の担当課長によって通常行われる。私も何度か経験したし、質問取りを打診されて拒否したことはない。議会はあくまで、公開の場である本番、本会議が全てである。しかし、質問者にとってより的を得た答弁を引き出す目的での、事前の質問取りには一定の意義がある。狙い通りの答弁を引き出すためには、まず答弁者に質問の意図を正確に理解させる必要があることは、言うまでもない。ただしそれは、質問者の質問の意図の明確さ、言い換えれば、質問者が何を明らかにしたいかに大きく依存している。だから、質問自体が明確な意図を欠く場合は、事前に質問と答弁をすり合わせて、一般質問を滑らかに運営する,言い換えれば、議員のパフォーマンスとプレゼンテーションの黒子として執行部答弁が機能しつつ、議会本来の機能(物事を明らかにすることによって、より良い方向性を見出す)を骨抜きにするために、この質問取りが利用されているという、質問取りのもう一つの顔がある。かくて、議会とは、デキレースが性懲りもなく展開される議員集団と執行集団の共存共栄の場にもなるということである。このデキレースの裏舞台は通常非公式の場である。先日、用ありで議会事務局に行った。議長室(非常に立派な、まるで企業の重役室のような構え、議長机と副議長机があり、各机にはPCが設置されている。が、執務しているのは残念ながら見たことがない。)で、議長(下元昇)、副議長(緒方正綱)、議会運営委員長(酒井吉祥成功)議会事務局長(長谷部卓也)が打ち合わせ中であった。何の打ち合わせかは不明である。用と言うのは、岸本氏と私が連名で出した公開質問状への対応について確認することであった。6月に出した質問状に、まだ答えがないのである。委員会単位で回答を用意し、全員協議会で最終的に決済するという段取りだけ決まっているらしいが、回答が用意されつつある気配が全くない。おそらく膠着状態、別目棚上げ状態に陥っていると推測するので、当方としては、目下、質問を一点に絞り込むことを岸元氏に提案中である。質問の情報量が多すぎて、恐らく彼らのCPUがクラッシュしているのだ。それにそもそも、質問するより質問に答える方が、遥かに難易度が高い。事物への知識、理解度、全体的な見識が問われる。選挙時の応援演説と見栄えの良さであれほど名を馳せた小泉進次郎が、環境大臣に就任し、国連で記者インタビューを受けたり、国会で答弁に立った途端、立ち往生した事が、格好の実例ではないか。その意味でも、議会で注目すべきは、事前に通告できる一般質問ではなく、議案質疑である。ここでの執行部との応酬に、少なくとも一般質問より議員の実力が出る。議案質疑には決まりがある。一議案一人3回までで、尚且つ一括質問一括答弁という形式で質疑しなくてはならない。この形式は、まるで知られていないと思うので、簡単に解説する。まず議員の質問は、一般質問と議案質疑に二分される。一般質問は町政全般に渡って、議案と関係ないことでも自由に設問を設定できる。議案質疑は、執行部が上程した一数々の議案に対して,一議案につき一人3回まで質疑できる。ただし、1回目の質問で質疑内容すべてを提示しなくてはならないのだ。分かりにくいと思う。ある議員が、質問A、質問B、質問Cを聞くと、執行部が答えA、答えB、答えCと答えていくのである。これが三回繰り返されるというわけである。二回目以降に、質問Dは追加できないという不便さもさることながら、この形式で、質問A、質問B、質問Cが結局どうなったのか、傍聴者はおろか質問する側も、正確に論点を追えるだろうか。答えは否である。そしてこのような会議規則を持っているのは日本だけなのである。実にバカバかしくないか。質問とは論点を明らかにしてこそ意味がある。ところが、このバカバカしさから恩恵を受けているのは、答える側ではなくて、質問する側なのである。明らかになりにくい論点は、質疑能力の可否を覆い隠してくれる。怠けていたい、若しくは質疑能力に自信がない議員にとっては極めて好都合な会議規則であるとも言える。だからこそ、このある意味都合のいい会議規則を変えようという動きは、議会内部からは出てきた試しがない。実はこの奇妙な、日本特有の質疑形式は、敗戦後にGHQが、自国の民俗学種ルースベネデイクト(「菊と刀」で有名)で日本人特有の民族性を研究させた結果導入された質問形式であるということである.私は、このことを全国の町村議会の会議規則の雛形を作成している、「全国町村議会議長会」経由で知った。この事実は、私にとって衝撃的であった。物ごとが明らかになりにくい質問形式が日本人の民族性などと、殖民地政策が、まんまと続いているのか、である。そしてそれは,中央集権にとっても都合がいいはずである。これはこちらにも責任がある。「依らしむべし、知らしむべからず」で統治されてきた我々のDNAがそれを本能的に受け入れたとも言えるからである。事態は単純ではない。歴史的に形成された何か、であるからだ。されど、この質問形式の害は否めず、議会が機能不全化していることの大きな要因の一つである。

 ここで、高知県議会に目を転じてみる。四万十町議会はケーブル放映されている。高知県議会もケーブル放映されている。多くの人にとって、高知県議会はもっと更に分かりにくいとの印象があるのではないか。私自身には、大いにある。そこで、ある時高知県議会事務局に質問形式に関する会議規則を聞いてみた。聞いてみて初めて、分かりにくく、デキレースにしか見えない理由が判明した。何と県議会は、一般質問だけでなく、議案質疑も全て事前通告しているとのこと、さらに一人の議員が、持ち時間の中で、一般質問と議案質疑を抱き合わせて一挙にやる方式であるとのことであった。どおりで、答える側がもれなく延々と目線を下に原稿を読んでいるし、全体として臨場感が極度になく、従って以外な展開等毛頭なく、従って全く面白くなく興味を引かれないはずであると、ひとしきり思った。この全く芸のない高知県議会、高知県予算書によれば、議員数36名で議員歳費(議員の給与と賞与と政務調査費の合計額)は、有に10億円を超えているのである。方や、県議会の議会図書室の資料購入費は年間300万円相当である。私自身の体験から言えば、議会図書室に中央政府が発行する白書及び官報全てと数多の県政資料を据え置き、それらに目を通し、後は担当職員から聞くだけで、精緻で実効性のある質問は用意できる。それをやり切れば、政務調査や議員視察(海外も含む)は不要になるのではないか。高知県議会の議員視察と言えば、高知県議会の体質を物語る、ある個人的体験談もある。当時議員であった私の所に、一枚のファクスが届いた。内容を一読した限りでは、四万十町仁井田の水利組合代表者名で、組合員に配布した文章のようであった。ファックス受信直後に電話が鳴り、「水利組合員である親戚の人間から依頼を受け、私に対して、仁井田にある山の斜面に設置されたメガソーラーから水路に流れ込む土砂被害についての説明会があるので、聞きに行って欲しい。」と依頼された。私はその気になったので、翌朝、話し合いを見学してもいいか許可を得ようと考え、水利組合代表者に電話した。そこで初めて、高知県議会農林水産商工委員会が赴くので、地元住民を集めてくれと依頼されたと聞いた。まだ、ここまででは詳細は分からない。そこで高知県議会事務局に聞いた。そこでやっと、高知県議会農林水産商工委員会による視察(現地設備の見学と地元水路土砂被害に関する事業者と地域住民ヒアリング)であることが判明した。その時返す返す思ったのは、一般の人は、高知県議会の委員会視察と言われてもピンとこないし、それを理解してはいないという事であった。そこで私は、議会事務局を通じて、県議会農林水産商工委員会の委員長に対して、地元水利組合会員である住民から間接的に依頼を受けた地元議員である私のヒアリングの見学許可を打診してもらった。四万十町内に設置されている太陽光設備の事業者と地域住民ヒアリングであるので、高知県議会と四万十町議会の共通の課題であると言えるし、地元議員がヒアリングを見学することに、特に問題があるとも思えなかった。が、農林水産商工委員会委員長は、私の見学を許可しなかったのである。委員長ではなかったが、その委員会には、地元選出武石俊彦県議が所属していた。委員長判断であったので、武石県議がこの一件をどこまで知っているのかは分からない。ただ私は、この時の県議会の委員長判断に異議を覚えたので、同じ委員会に属する武石県議に、この一件に関する見解をメールで聞こうと思い立った。県議会事務局に武石県議のメールアドレス聞き出そうとしたが、「武石県議はメールアドレスを一般に公開していません。」と応答されたので、メールで聞くこともできなかったのである。私が、この時、メールアドレスを一般公開しない武石県議のスタンスに失望したのは言うまでもない。事後的に分かった事は、四万十町議会産業建設常任委員会には事前説明があり、四万十町建設課課長はヒアリングに出席していたという。県議会事務局からのメール内容によれば、ヒアリングには水組合代表者だけが出席依頼を受けたそうである。県議会農林水産商工委員会が、尾崎知事の意向を受けて、事業者と地域住民双方の意見聴取及び現地視察に乗り出したという事らしかった。会場の混乱を避けるため、出席を依頼したのは水利組合代表者一人であり、四万十建設課には出席依頼があり、四万十町議会産業建設常任委員会には出席依頼がなく、私などは問題外であったのだろう。しかし、このヒアリングは、紛れもなく、法的に付与された議会委員会の調査権の行使である。その議会特有の権限を行使する場が公開であっていけない訳はない。だから、見学の申し出を拒否する理由は本来ないはずである。その証拠に、四万十町議会が立ち上げた「西ノ川取水問題特別調査委員会」(現職である田辺哲夫議員の水道料金未払い疑惑事件)は全て公開の場で行われたではないか。この一件で、高知県議会が私に垣間見せた体質を、私なりに表現するとすれば、「知事を見上げ、県民に向きあわない。」である。都道府県知事は、終戦まで官選であったし、東大卒財務省出身の尾崎知事の威光に高知県議会は目を眩まされたのか、と思う。この体質に5期20年間浸ってきた武石俊彦県議が、次期四万十町長になった暁には、いかに町民に向き合い、いかに町民に対して説明責任を果たせるのかに、中尾町政以上に注視が必要だろう。