呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(14)

       総務常任委員会風力視察

先週は、四万十町議会総務常任委員会が、愛媛県宇和島市愛南町風力発電事業の視察を行ったとの情報が入ってきた。午前中は、宇和島市で、宇和島市議会と市の担当課が、総務常任委員会一行を迎え、意見交換会と風車立地の見学をしたらしい。午後は、愛南町で同様の、との予定ではあったが実際は、視察の事前申し入れ時点で裁判が係争中であることを理由に、愛南町議会及び愛南町担当課は、視察を受け入れられない旨伝えて来たとの事である。そこで、総務常任委員会委員長古谷幹夫議員の計らいで、四万十町ふるさとの自然を守る会に参画し、この会からの、大藤風力発電事業計画の中止を求める請願書の紹介議員でもあった村井真菜議員に声が掛かり、四国風車ネットの代表である黒田氏、風車直下で暮らす町民(元愛南町議会議員)、村井議員と交友のある個人的に参加した愛南町女性議会議員という顔ぶれとの意見交換会と風車の見学会が持たれたという事であった。それで、午後の愛南町での交流の場にのみ、村井議員本人も参加した模様だ。風車視察の動きを最初に知ったのは、村井議員本人のフェイスブック投稿によるのだが、以上の事実関係は、別途、視察に同行した四万十町議会事務局長谷部氏に確認した。村井議員の発信内容では、愛南町では裁判係争中のため、公式な議員視察が受け入れ不可能であったことが事の発端であることも含め、総務常任委員会の視察に教育民生委員会の委員である村井議員が参加した理由、つまり経緯が全く判然としなかった。いずれにしても、長谷部事務局長によれば、愛南町で風車から1.1kmの距離に居住している町民(元愛南町議会議員)の方からは、風車が回っている時には騒音が気にはなるが、家の中では気にならない、風車から出る低周波音と健康被害については、因果関係が立証されていない等の認識が示されたという事である。また四国風車ネットの黒田氏は、風力発電に関する一般的な知見について発言し、個人的に参加した愛南町女性議会議員は、全く発言はなかったらしい。これでは、村井議員が手配した人的交流によって、総務常任委員会が有益な知見を得られたのかどうかは、かなり疑わしい。まず、地元四万十町風力発電事業中止の請願紹介議員である村井議員としては、愛南町が裁判係争中という理由で四万十町議会総務常任委員会を受け入れなかったという件は、まずは自身のSNS上で、しっかり発信してもらいたかった所ではある。この愛南町を相手取った裁判に関しては、9月7日に、四万十町庁舎にて、四万十ふるさとの自然を守る会主宰で催された勉強会においても、四国風車ネットのメンバーから報告されていたと記憶している。原告側の弁護士の市川守氏の講演もあったし、そこでも保安林の解除の差し止めと言う手法を使っているとか、風車から出る低周波健康被害については、睡眠障害を主軸に訴えているというような内容の講演であったと記憶している。愛媛新聞ネット版で確認したところ、やはり、愛南町僧都地区に建設予定の風力発電事業の立地にある保安林の解除が土砂災害を招くとして、保安林解除の権限を持つ林野庁愛媛県を相手取って提起された、反対派住民による保安林解除の差し止め請求として報道されていた。そしてその請求に対して、林野庁愛媛県が請求の棄却を求めている、とも報じられていた。ここまでの情報で、つまり四万十町議会総務常任委員会の風車視察の動きから、愛媛県愛南町という隣県の風力発電事業計画地では反対派住民による裁判が提起されているという事実が伝授され、又愛南町での行政や議員以外の一般人との意見交換からも、大規模風力発電事業が投げかける様々な課題が浮かび上がってくる。それにしても、私には素朴な疑問がある。今回の視察の一行は、総務常任委員会であり、古谷幹夫議員、堀本伸一議員、水間淳一議員、田辺哲夫議員、吉村アツコ議員という構成である。意見交換会の参加者の一人、四国風車ネット代表の黒田氏は9月7日の勉強会で講演していたし、その勉強会に、古谷幹夫議員、水間淳一議員、田辺哲夫議員は参加していたのである。それでまた、わざわざ公費を使って視察に行って、四国風風車ネットの黒田氏に会っているのである。風車を見学し、又風車直下で暮らす人にも会ったことに意味がないとは言わないが、そもそも総務常任委員会は、風車だけを視察したわけではない。その前日までは島根県岡山県を回って、公共交通の視察が行われていた。全て事務局長と担当課職員が同行している。私も総務常任委員会委員の時に公共交通の県外視察があった。確か、石川県と兵庫県ではなかったか、当時の委員長は、堀本伸一議員である。今再び、総務常任委員会委員として公共交通視察に参加している堀本伸一議員、あの時の公共交通視察内容は、今の総務常任委員会委員長に引き継がれたのか、私は、引き継がれてはいないと思う。議員視察の報告書は、A4一枚であり、従来公表されないままで来たし(今やっと委員会報告書が議会HP掲載されるようにはなったが、改選以降のみである。)、視察先で各議員に配布された資料は、議会図書室に保管されるでもなく、持ち帰った各議員の家でいつの間にか紛失状態と言うのが落ちであった。このような現状を横目で見てきた以上、私は、議員視察は限りなく、税金の無駄遣いに近いと思っている。それよ何より、一刻も早く為すべきは、議事録作成速度を上げて、全ての議事録をHPに掲載するという事ではないか。議事録とは公共財産である。だから議事録閲覧に、情報公開の開示請求が必要である現状は極めてよろしくない。議会を見える可すると公約した下元上昇議長、速やかに、まず委員会議事録や視察の委員秋報告書を速やかに議会HPに上げるべきではないか。でないと、勉強会参加議員が、勉強会で講演した同一人物に会い、同じ話を聞きに、公費で赴くという無駄さえ発覚しないままである。結果的に議員の不勉強と怠慢が、野放しとなる。行政も議会も機能と効率を求めるなら、「見える可」しか道はない。冷蔵庫の中だって「見える可」されていなければ、必ず、食材も総菜も腐らして無駄になって不経済極まりない。これは実証済みである。税負担を結果的に「食えないもの」にして、いいのか。

 ところで、模型を作った知人から、風車の搬送路の拡幅は、事業者負担かどうか確認してくれと依頼を受けた。あと、模型上に、風車立地予定地の町有地(町有林)をプロットしたいので、町に図面でそれが確認できるものがないか、探してくれとも依頼された。以下が、四万十町担当課対応である。

企画課課長山本康夫:方法書を見れば、町道は分かるので、一般的な地図上で示す。町有地地番が分かるので、地番を出せる。(方法書を見せるとは言わない。)

建設課課吉岡範満:搬送路に町道が含まれていれば、まずが事業者(オリックス)と協議の上、最終的には町長の政策的判断で、町負担で町道の拡幅工事をすることもあり得る。オリックスから協議の申し出は、現状ではない。

林業振興室長多賀啓一:作業道は開設時には定額補助が町から出るが、残りは事業者負担である。風車の搬送目的であれば、作業道の拡幅工事費用は、当然事業者負担と認識する。町有地の地番が分かれば、立地予定の山の町有林部分その中の保安林も併せて地図上でプロットできる。作成し、交付する。

知人はとにかく探究心が強い。まずは、探究心が強くなければ模型なんか作れないだろう。知人は、とにかく模型を完成させて、オリックス側の言説の真偽を究めたいようである。稀に見る実証精神である。私としては、その意味でも知人に協力したい気持ちにはなる。その知人はもう一つ、文化的景観検討委員会の動向を注視している。模型完成によって、どこからどう風車が見えるかが、可視化されるという。楽しみである。それで、直近で開催された文化的景観検討委員会の審議結果を問い合わせた。オリックス側が同席していたようであった。

生涯学習課副課長味元伸次郎:重要文化的景観検討委員会の座長は福山大学客員教授中越信和氏である。重要文化的景観検討委員会審議結果は、一の又風景林中の重要文化景観の構成要素の構成要素部分に、風車の設置個所が2基入っていた。その事は県からも指摘され、その2基は、別の個所に移動するとオリックス側が意向を示した。それ以外の風車群は、重要文化的景観構成要素である山の第一稜線にはかかっていない。座長からは、最終的に、沈下橋等の観光地点から風車が見えないように配慮するようにとの意見が示された。オリックス社側は、これから実施する住民説明会での意見も聞いて、風車の位置を最終的に決めるとの意向を示した。

村井議員はファイスブック投稿の中で、オリックス社に対する町有地賃貸借の証明書(同意書のことか)の提出の中止と、町民対象の勉強会の開催を、町に対して提唱していた。そこで、私は、9月定例会で大藤風力医発電事業計画について、反対の立場で質疑した武田秀義議員、村井真菜議員、岩井優之介議員3名に対して、以下の内容の文章を送付した。

大藤風力発電事業計画に関して、9月定例会で反対の立場で、一般質問した~議員に、私が、今までに企画課山本課長を通じて確認していることを伝達します。

11月末に提出予定だと、町長答弁があったオリックス社への町有地有償貸借同意書は、

1.オリックス側が文章の原案を町に対して提示してきているという事(メールで)

2.町側の同意の意志が将来的に拘束されるものではないと同意書内に明記する用意があるという事(山本課長は、議会答弁でも拘束されないと明言した)

3.文書最終原案が完成したら、議会からの要請があれば、議会に対して開示する用意があるという事

村井さんが、町が同意書提出を断念し、町民勉強会の開催を重ねることを提言しているようですが、最も手っ取り早く又確実な方法は、議会が自ら特別調査委員会を立ち上げて公開の場で、町やオリックス側を呼んで、説明させることです。議会は町民代表ですので、公開の場でやればそれがそのまま、町民勉強会になります。これは議会でないとできない事です。本会議場を使い、ケーブルで放映すればどうですか。これこそ「議会の見える可」の真骨頂です。議会とは、私の考えでは、物事を明らかにして、明らかにすることによって、より良い方向性を見出すために存在しています。町側にお願いしたり、希望的観測を述べていても、議員個人のスタンスが見えるだけで、中々事態は進展しません。議会は議会に法的に付与された権能をフルに発揮(特別調査委員会立ち上げ)してこそ議会です。特別調査委員会の立ち上げには、議会の議決が必要です。臨時議会を招集すれば可能です。反対の立場を公にしている~議員には、議会内部でそのように働きかけてくれることを期待します。

四万十町議会西原真衣

更に、町側が言う、町有地貸借の同意書なるものに対して、資源エネルギー庁に対して問い合わせた。以下が回答である。

資源エネルギー庁新エネルギー課:第一種風力発電事業の固定格買い取り申請時には、土地の確保を証明する書類の提出が要請される。具体的には以下。

土地売買契約書、土貸貸借契約書、地上権設定契約書のいずれか、これは、停止条件付でも可。停止条件設定は契約当事者間の協議による。一例として、申請の認可が下りなかった場合に契約を停止する、とかである。停止条件の契約上の有効性については、本質的に資源エネルギー庁は関知しない。弁護士の管轄である。前期の契約書の他に、土地の登記簿、全部事項証明書が必要である。

 

因みに企画課山本康夫課長は、契約書ではなく、同意書であると強調していたが、不自然と見るか、無知と見るか。資源エネルギー庁の言う通り、実質は契約書である。又先述の、模型上に町有地と町道をプロットするための図面を入手するに当たって、企画課に送付された環境影響評価方法書を、税務課と林業振興室に渡すのを山本企画課課長は非常に逡巡した。結局、税務課に持ってきたが、電話では、見に来るようにと、最初は問いあわせた税務課職員に対して言ったらしい。その時私は税務課で、町有地の地籍図を見ようとして、税務課職員に相談中であった。とにかく、大規模風力発電事業の環境影響を受ける立場である町民の環境影響評価実証研究に資する資料を提供する目的で、環境影響評価法において関係行政機関に送付すると規定されている方法書を関係行政機関内で共有することに何の問題があるのか。それ程の逡巡を見せた山本企画課課長、町民に対して、法に基づいて論理的に説明してもらいたい。公僕であるならば。

 

四万十町議会議員  西原真衣