呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

地方議会から日本を見る(1)

選択的夫婦別姓アンケートに回答拒否

      ー高知県議会自民党会派19人全員

 この記事を目にしたのは、今年の4月2日の地元高知新聞である。アンケートの実施主体は、高知県内14の女性団体とある。直に議員の会派控室に持参し、郵送かファックスでの回答を要請したとの事、これが2月下旬、締め切りは3月25日の設定だったようだ。

2月下旬と言えば高知県議会2月定例会会期中で、議員に会える時期であり、閉会後3週間以上がある訳で回答を用意する十二分な時間があったはずである。自民党会派と言えば高知県議会最大の派閥である。当時19人の陣容で現在は補欠選で当選した女性議員二人を含む全21名の最大派閥である。当初「会派としては回答しない。個々の議員の自由意思に任す。」との姿勢が示されたとの事。がその結果、締め切り近くに(実施団体代表が)会派控室を訪問すれば、そこに居た会派議員より「全員の返信用封書を返却された。」という。会派所属の19名の個々の議員の自由意思が見事なまでに回答拒否で合致したということだろうか。いささか不自然である。事前の申し合わせがあったとしか思えない。

 それにしても回答拒否とは、政治家として抜本的に不誠実である。県民代表でありながら県民女性グループ14団体からの意向調査を拒否していながら、目下国葬が物議を醸している元自民党領袖の言った「女性が輝く社会」を踏襲していると言えるのだろうか、私は、高知県議会HPで、自民党会派の大半が、政務調査費種出項目「調査研究費」に日本会議会費12000円」と報告していることを把握していたので、(令和3年政務活動費報告より)。その分余計にアンケートの回答拒否が気障りだったことも否めない。日本会議と言えば真正保守を語る国家主義者の寄せ集め的な政治団体として有名である。公式HPを開いてみれば、家族の一体感」即ち「同じ日本人である事の一体感」であり、これが彼らにとっての「国家的真、善、美」であり、その価値観の崩壊が今日の家族破壊、教育破壊、牽いては国家の国際的地位の低下、脆弱化をもたらしたという国家間、歴史観が述べられている。その歴史観、国家観の帰結として、当然夫婦別姓」「ジェンダーフリー絶対対の立場であると同時に独立心に欠ける現行憲法は改正すべきであり、現行憲法下の「行き過ぎた政教分離「権利と義務のアンバランス」にも警告を鳴らしている。だからこそ、元号の法制化、教育基本法改正(公共心と道徳心の涵養の導入)、自虐史観ではない新しい歴史教科書の作成に長年熱意をもって取り組んできたのである。会費を拠出している上記自民党会派の県議会議員は、日本会議の政治理念のシンパであると見なされる。ではなぜ、そのシンパ振りを、如何なく、アンケートの回答に示さないのか、ここが抜本的に不誠実である。政務活動費から会費を拠出し、政務活動に資する調査研究名目で日本会議の政治理念に触れ政治家としての自己研鑽に励んでいるのである。アンケートへの回答を通じてその結果を県民に報告するのは当然の事である。回答を拒否した自民党会派の面々とは以下である。

桑鶴太郎-日本会議会費拠出なし

上治堂司-日本会議会費12000円拠出あり

土森正一日本会議会費12000円拠出あり

上田貢太郎日本会議会費12000円拠出あり

今城誠司ー日本会議会費12000円拠出あり

金岡佳時ー日本会議会費12000円拠出あり

下村勝幸ー日本会議会費12000円拠出あり

田中徹ー日本会議会費拠出なし

土居央ー日本会議会費拠出なし

野町雅樹ー日本会議会費12000円拠出あり

横山文人日本会議会費12000円拠出あり

西内隆純ー日本会議会費12000円拠出あり

加藤漠ー日本会議会費12000円拠出あり

西内健ー日本会議会費12000円拠出あり

弘田憲ーー日本会議会費12000円拠出あり

明神健夫ー日本会議会費12000円拠出あり

桑名龍吾ー日本会議会費12000円拠出あり

森田英二ー日本会議会費12000円拠出あり

三石文隆ー日本会議会費12000円拠出あり

 アンケート用紙を受け取った会派19名中、日本会議会費を拠出していないのは僅か3名である。自民党会派は全員回答拒否でありながら、アンケートを受け取った最中の2月定例会においては、議員提出議案第2号、憲法改正の実現に向けた国会審議の促進を求める意見書」議案には会派全員が賛成、アンケート回答拒否後の高知県議会6月定例会においては、議員提出議案第2号夫婦別姓の法制化を求める意見書議案」には会派全員が反対、議案第3号「旧姓の通称使用の更なる拡充を求める意見書議案」には会派全員が賛成という日本会議のシンパを絵にかいたような投票行動を示している。その同一主張をなぜ、県内14女性グループに示すことを回避するのだろうか。この行動を読み解くには、14の女性グループの構成を知る必要があると考えた。記事には3つの団体名しか記載されていなかった。そこでまず記事を提供した高知新聞社に問い合わせてみた。そこで教えてもたらったのが以下の女性団体名である。

1.女性会議高知本部

2.高知県商工団体連合会(民商)婦人部協議会

3.高知県母親運動連合会

4.高知県自治労働組合総連合

5.こうち男女共同参画ポレール

6.新日本婦人の会高知市支部

7.新日本婦人の会高知県本部

8.高知県退職婦人教員連合会

9.高知県職員組合連合会女性部9

10.民主青年同盟高知県委員会

11.高知県母親運動連絡会

12.高知県自治労働組合高知県本部

13.高知県労働組合連合会女性部

14. 高知大教職員組合

目瞭然、いずれも革新、野党系である。自民党会派は、この団体名を一瞥し、「票に影響なし」と見て「応答拒否」と判断した可能性が高い。が、県議議員都は「全体の奉仕者である。党派性のみで判断されては、第一政務活動費の正当性が揺らぐ。回答しないくらいであれば日本会議の会費12000円は自腹で払ってもらいたい。因みに県議会議員報酬は月額76万円である。記事は、回答者12名の内訳を賛成10名(共産党、反対1名、どちらとも言えない1名と記載している。高知県議会は、定数37名、欠員3名、現在全34名(アンケート実施当時)なので、回答しなかった議員が22名にも上っている(回答率35%)。記事では自民党会派以外の会派の議員別の回答状況が分からなかったので、高知県職員組合女性部に問い合わせた結果以下が判明した。

共産党:全員賛成(岡田芳秀、中根佐知、吉良富彦、米田稔、塚地佐智)

県民の会:賛成4名(田所祐介、石井孝、坂本茂雄、上田周吾)どちらとも言えない1名(橋本敏男)

公明党:  賛成:黒岩正好  無回答:西森雅和

一燈立志の会:反対:依光美代子(家族の遺体感が失われる。旧姓使用の拡大で十分)   無回答:武石俊彦、大石宗

特徴的なのが、回答拒否県議会議員全員が、6月定例会においては、議員提出議案第2号夫婦別姓の法制化を求める意見書議案」には反対で、議案第3号「旧姓の通称使用の更なる拡充を求める意見書議案」には賛成票を投じていることである。自民党会派、

一燈立志の会の武石俊彦、大石宗、公明党の西森雅和である。彼らは県民に忠実であるより自民党公明党という党に忠実であろうとしているのであろう。政治家としての命運が党への忠実度にかかっているという実感があるからであろう。そもそも自民党会派の日本会議への会費拠出もここから来ているのではないか。日本会議国葬問題で揺れている前首相の後援団体であったのは周知の事であある。自民党会派及び自民党に復党を果たした武石俊彦県議(先輩である武石氏の判断に従う大石宗県議も含め)も含め彼らの行状は、実に家父長制的でないだろうか、食い扶持(選挙)を制する家長(党の長)に服従しているが、政治家としての判断理由は、家の外にいる部外者には示す必要が無いと思っているのだ。小説家の橋本治氏は「父権性の崩壊ーあるいは指導者はもう来ない。」の中で、団塊の世代以降に普通の人が政治に関心を持つようになった。それまでは政治は偉い人が為すものであった。偉い人は、セクハラもパワハラも認知外であった。今政治が普通の人の社会的関関心事となっても、政治家はその「父権性」の中に取り残されている。」と評しているらしい。同感である。取り残されているからこそ「夫婦別姓」に強いアレルギー的拒否反応を示すのだろう。自民党会派の秘書業務は、3名の高知県会計年度任用職員によって担われているらしい。全員女性である。この件で、何度もやり取りをした。一律に「聞いていない。」を連発されて閉口した。毎回話が振出しに戻る。秘書とは「伝書鳩」であろうか、違う。当方の意志をまず正確に確認し向こうに伝え応答内容を正確に当方に伝える業務であるはずである。県議会議員が、自分の携帯番号もメールアドレスも公表していない以上、秘書はその役割を担わなくてはならないはずである。自民党会派が当方(家の外にいる有権者、彼らにとっての部外者)の意向を疎んでいることがここにも現れている。アンケート対応と同根である。自己権益の保持と拡大に寄与しない有益性の希薄な疎ましい存在、一昨年の東京オリンピック組織委員会における森喜朗「女性は話が長い」をつい思い出した。

 四万十町議会事務局も同様である。「聞いていない。」を連発する女性部下の上司男性には、女性部下に対する庇護意識があるように見受けられる。彼らの居心地の土台となっている職場環境、慣習は、彼らの日常感覚を守りはするが、その日常の積み重ねによる閉塞感と停滞感は回避できないだろう。そしてやはり指導者は来ないのである。14にものぼる県内女性団体グループからのアンケートを通じた対話の呼びかけにも応じる考えのなかった(高知新聞記事によれば、グループ代表は記者会見中で、「率直に答えてくれた人とは対話し、理解し合える可能性があるが、無回答には失望が大きい。別姓を選べず実際に困っている人がいる事実から目を背けないで欲しい。」と述べている。)自民党会派の全員及びその他無回答者は、票に影響ないとみ踏みつつ全員だんまりを決め込むことで「話の長い」女性達の地雷を踏むのを避けつつ、党是に忠実であることだけは、党に向けてしっかりアピールしたのである。実に分かり易い本音ではないだろうか。このように「父権性の中に取り残されている」地元政治家男性の方々は、女性の就業率と同時に離婚率が全国的にも際立って高い高知県における就業構造の特徴は御存じのはずである。医療及び介護系の従事者が際立って高いということである。勿論就業者に占める女性比率が高い。保育関係もそうである。女性の労働が報酬面で報われない(正規公務員女性は例外)ということと「夫婦別姓反対」は根っこの部分で繋がっている。男性政治家が社会参加する女性の意思に対して聞く耳を持とうとせず、その様な男性権力者からの庇護と彼等への服従が女性政治家(政務3役に登用されてきた様な主に自民党系の女性政治家)及び一般女性就業者の生存手段となっている社会は、全体として活力から遠ざかる以外にない。当然である。女性がその持てる本来の能力と意欲を発揮できない、つまり本質的に女性が輝かない社会が放置されるということでになるからである。本当にそれでいいのですか、と言いたい。

 

西原真衣