呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(60)

        議事録を取らない

 今朝、メールソフトを開くと、Change.orgから、「森友学園の問題で公文書改竄を指示した疑義を持たれている元佐川宣寿理財局長の国会召喚を実現して下さい」署名の経過報告が送られてきていた。何でも野党の森友問題合同再調査チーム座長の川内博史衆院議員に託す形で衆参両院議長に提出するとの事で、提出後の院内集会参加の申し込みフォームも添えられていた。公文書の在りかとは、行政の説明責任の在りかその物である。議事録もしかり。ここ、四万十町に置いては、オリックス社の大藤風力発電事業計画の中止を求める請願が付託された四万十町議会総務常任委員会の請願審査も大詰めを迎えていた。令和元年9月定例会でこの委員会に付託されて以降ずっと継続審査で、結論が出ていない。というより結論を出せないのだ。古谷委員長は長々と経過報告に40分をかけた。個人的に取りまとめたものを読み上げる事40分である。その間、全委員が黙してじっと聞いている。その表情から、水間淳一委員と下元昇委員がめているのではないかと表情を伺ってみたが、判別が困難だった。実にかったるい委員会である。寝ているのか起きているさえ分からな沈滞モードである。本当の所帰りたくなってきたが、そこはじっと我慢してメモを走らせた。40分後に休憩の指示が出た。そこで、

西原:風力発電事業計画の請願審査の推移を関心をもって見守っている側からすれば、いかにも委員会報告書が議会HP上で見れるタイミングが遅い。何とかならないか。

注、ここで報告された内容が委員会報告書という形で議会HPにアップされたのは、5月末である。それもやっと3月分までだ。遅すぎる、関心を持つ住民側が経過を把握できない。

古谷委員長:3月毎に挙げていると聞いている。本会議議事録が先という優先順位がある。

西原:優先順位の問題ではない。3月後では動向把握に支障がある。住民側には議会HPしか情報源がない。議会HPの掲載状況を問題視しないのか

古谷委員長:自分は見る必要が無い。自分は分かってる。

上記発言は要注意である。これは解説すれば、「自分は議員であり、従って主権を行使している側であり、行使の有様をわざわざ議会HPで確認する必要はない。」という意味であろう。つまり、住民代表でありながら、住民側の視点を議員としての視点の中に包含する必要性はないと言っている。住民代表として住民側と情報を可能な限りリアルタイムで共有することで住民の知る権利と参画を保障し、かつ代議制民主主義における議員とししての代表性を担保するべきである、つまり「住民主権という民主主義の根幹をなす理念がこの人物の中に欠落している。」という事である。このレベルの代議制民主主義の理解のレベルなのである。この辺からこの人物の「議会組織論」も出てくるのだろう。農協に置ける意思決定が稟議制であり、基本的に全会一致であり、議論というより妥協点を探ることに終始してきた農協文化をそのまま、議会に躊躇なく持ち込んでいる。その結果、委員会が議論の場ではなく単なる座談会(個々の意見の開陳の場)となり、開陳された意見の列挙、再確認が委員会の実質となっている。さらに、堀本伸一委員が「いつまでも結論を引っ張れない。」発言に続いて休憩を申し出た際に、阿吽の呼吸で古谷委員長が、「休憩を取るので、いつ頃までに結論を出すのかも含め、自由に発言して欲しい。」と発言し休憩となった。休憩とは議事録に残さないという意味である。傍聴者の面前で臆面もなくこれが言えるところがすごい。つまり議事録とは、彼らにとって、表に出すことに差し障りのない形に予め意図的に修正された開陳意見の集約でしかないということである。結論を出す時期や自由な意見、つまり本音の部分は、まかり間違っても議事録に残さない。これでは真の意思形成過程が議事録に残らない、このことに彼らは自責の念が全く無い。これでは、四万十町通信新年号に載った下元昇議長挨拶、「複合文化施設建設と大藤風力発電事業計画は、町民と情報を共有しつつ議会内部でも検討、熟議を重ね、将来に禍根を残さないようにしたい。」は完璧な虚偽である。やはり議員報酬は上げるべきではなかった。上げる意味がない。開陳された個々の意見を相互確認しつつ、委員会としての妥結点という全会一致への道筋しか、この議員先生たちの頭の中にはないのである。委員会としての妥結点の形成過程に討議はないので、論点が明らかになる事もなく、従って世論形成に貢献することもない。だから議員報酬を挙げて議員定数削減に伴う職責の増大などという方便を用意したところで無効である。これまでの総務常任委員会請願審査に係る委員会報告書の内容を要点整理すれば(四万町議会HP左側にある各種委員会報告書のタブをクリッすれば出てくる)

1、風力発電再生可能エネルギーであり、再生可能エネルギーの普及が国策であり国策は是とすべきである。

2.騒音や低周波音による公害には、行政が苦情相談窓口を設置して対応可能である。超低周波音への苦情対応は国の基準値に基づくしかない。町が風力発電を観光振興目的で誘致した大月町では行政が苦情を事業者に取りつぐことで苦情に対応できている。

注釈:今後の陳情、請願の取扱いについて目下委員会単位で協議中の事項に、陳情請願の採択基準というのがある。国策に係る陳情請願は権限外を理由に不採択という基準を設定しようという動きがある。この動向は、2の意見とどのように関連するのか、国策(国の基準)によって町民の健康被害に受容を強いることは、国策の容認なのか。権限外は即ち容認か。それであれば自治法に規定された「議会に付与された権能としての公式に国に意見を述べる権利」は陳情請願の取り扱いについては無効化されるのか。

3.立地予定地全70haの内訳は、四万十町12、四万十市33、民有地24である(全部で100にならない?意味不明発言)四万十町が反対しても四万十市側に立地をずらせるので無意味であり、建設に反対すれば、経済的恩恵も同時に取り逃がすことになる。むしろ町にとってのメリットを町民に理解してもらうには、町と議会が共催で、オリックス社による説明会の開催を要請するのが望ましい。

以上は、まるで行政側の言い分であり、行政側のスタンスと完全に合致しているのであり、彼らは、議会が、行政の監視機関であることを完璧に忘れ去っている。身体機能の不全化要因の一つに廃用症候群(使わないことによって使えなくなる。例として歩かないことによって歩けなくなる。)というのがあるが、長年行政情報のおこぼれに預かって(自ら情報を取ることを怠り)議員をやってきたが故の廃用症候群による機能不全が委員会審査の場でその徴候が顕著である。これは、議会の機能不全で済まされる問題ではない。町全体にとっての危機的状況である。風力発電設備による健康被害を憂慮する住民4人が、下元昇議長に対して特別調査委員会或いは少なくとも公聴会開催を要請したことも経過報告の中で言及されてはいたが、その申し出はいつの間にか総務常任委員会の中で虚偽を厭わない下元昇議長に誘導されつつ完璧に換骨奪胎されて、議会が設置する特別調査委員会→総務常任委員会が開催する公聴会→町と議会が共催するオリックス社説明会へと変容を遂げたのである。ここで念のために基本的なことを整理する。

(A)議会が設置する特別調査委員会

質疑者は議会議員、喚問され質問を受け答えるのはオリックス社、地元利害関係者、学識経験者、傍聴は一般町民

(B)総務常任委員会が開催する公聴会

質疑者は議会議員、参考人として喚問され意見を陳述するのはオリックス社、地元利害関係者、学識経験者、陳述された意見について質疑するのは総務常任委員、傍聴は一般町民

(C)町と議会が共催する、オリックス社による地元住民説明会

説明者はオリックス社、質疑者は説明会に参加した地元住民、町と議会はオブザーバー

注:昨年12月にオリックス社が大正地区10か所で開催した地元住民参加限定説明会への批判(主にSNS上のもの)を受けて、町と議会で工作したのがこの(C)案である。

議会が、(A)案と(B)案を敢て回避し、町と協議の上(C)にたどり着いた理由は、明らかである。自らが質疑者となり、この大藤風力発電事業計画の問題点を明らかにされたくないからであるし、質疑によって、いわゆる事を荒立て、主に賛成派の票を失いたくないからである。このような議会は議会の機能(調査と審査を通じた行政の監視)を果たすことは不可能である。だからやはり議員報酬は引き上げるべきではなかった。議員報酬と言えば、コロナ禍の中で延期されていた高知地裁での裁判の第一回口頭弁論の期日が決まった。6月30日である。17日には、訴訟代理人の谷脇和仁弁護士との打ち合わせ、18日には記者会見の予定である。

四万十町議会運用基準165条:議会運営委員会に協議の結果については議員はこれを遵守するに基づき、遵守しなかった岩井優の介議員、武田秀義議員、中屋康議員、下元真之議員は酒祥成議長より厳重注意を受けたが、議員報酬条例改正議案(議員報酬引き上げ議案、中尾町長提案)について、議会運営委員会委員の議案に対する賛否の意思統一を議案上程前に図ること自体が、議会基本条例23条に照らして不当な脱法目的の共謀行為であることが、司法の場で明らかにされることを願っている。冒頭で記載した森友学園問題におけ公文書改竄問題では近畿財務局に勤務する赤木俊夫さんが自殺したが、未だに改竄を指示したであろう官僚トップや国答弁の支離滅裂さの責任を問われない一国首相が存在している状況があるからこそ、見ようと思えばよく見えるところにある地元議会で、議員がその討論や投票行動の自律性を公示もされない議会運用基準なるものによって、厳重注意されるというという内部圧力に晒されたり、議会の調査権、審査権を行使する場である議会委員会議事録作成に1年を要し会議録に資料添付もなく、忌憚ない意見表現の場では議事録を取らず、議会基本条例で規定されている原則公開である全ての会議の秘密会の基準策定も出来ていないこの四国の山間である四万十町の町議会への具体的な批判を通じて、今起きていること(オリックス社による大藤風力発電事業計画)の状況把握と状況判断に基づく行政監視能力を議会に再構築しなければ、そこに利益だけを見ていることだけは明らかな、開発業者による巨大な開発事業による、山林破壊やヤイロチョウを含めた生物多様性の喪失や四万十川の水産資源の枯渇や風車近隣住民の一部を間違いなく襲うであろう睡眠障害等の不定愁訴その他の深刻な健康被害という厄災が新たに発生することは、間違いのないことである。全国の報告事例を見れば、一目瞭然である。行政トップが風力発電はいらないと言えば風力発電は止まる。議会の仕事は調査権、審査権を駆使して、監視という圧力を通じて行政トップに妥当な判断を迫る事である。けれども現況のように行政にひたすら情報を依存している限りは、調査権審査権が機能することは、絶対にないと言い切れる。「情報を依存することは判断を依存する事である。」議員の発言が行政側からの説明(情報提供)を受ける毎に行政側寄りになっていっていることが、委員会報告書でわかる。これでは、議会とは到底言えないと、私は思う。

 

西原真衣