呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(59)

       高校魅力化って何だ

  今年度の地元窪川高校と四万十高校の入学者数が逆転した。人口1万人規模の窪川地区の新規入学者数が12人で、人口3000人規模の大正、十和地区の四万十高校の入学者数が19人であるという。ついでに「みんなの高校情報」という口コミサイトを覗いてみれば、偏差値と、全国版ランキングと高知県版ランキングが掲載されていた。何と、窪川高校は偏差値36、全国順位が10054校中9896位、県内順位が92校中82位、四万十高校は偏差値37、全国順位10054校中9603位で、県内順位は92校中66位であった。結局、入学者数と偏差値は、しっかりリンクしていたのである。この口コミサイトには、現役地元高校生の書き込みもあった。「みんなの高校情報」を、つまり自分の通っている高校の偏差値ランキングを当事者である地元高校生が、何ら衒いなく見ていると言う事である。だが、この偏差値の低さには正直驚いた。これほどとは思っていなかったからである。教育委員会であれば、「学校関の序列化につながる」を理由に、偏差値の公開など決してしない。けれども、進路選択には偏差値情報は欠かせないのは常識である。現実をありのままに言えば、序列化につながるではなく、偏差値という物差しによって既に十二分に序列化されているのである。四万十町は、地元高校存続支援目的で「高校応援大作戦」事業なるものを展開しているが、事業推進側の四万十町職員は、自身の子弟となると、学資の工面上の事情も反映してか、可能な限り偏差値の高い高知市の私学に入学させようとしてるように見受けられる。進路の選択は、子供の将来に係る最重要事項なので、これは親としては当然の事だろう。町の事業としてみれば、県立高校に上乗せで公費を投入し、地元高校を魅力化して地元中学校からの入学生を増やして存続を図ろうというのであるから、投資に見合う成果検証は避けられない。一方県教育委員会の高校存続方針は、入学者数が20人を2年連続で切ったら、地元2高校を統合するというものである。そして投資効果空しく今年ついに、両校とも今年20人を切ってしまったのである。それにしても「高校応援大作戦」とは、一体いかなる事業実態を持っているのだろうかまず、町営塾「じゅうく」には、講師陣である「高校魅力化支援隊」9名が投入されている。設立時には、確か「学力を上げて、地元国公立に合格できる体制を作り、高知市の私立高校に行かせなくてもよい環境整備をし、親の経済的負担の軽減につなげる。」議会答弁したのは、人材育成を公約にした中尾博憲町長その人であった。その事業目的は理解できる。が、「地元高校から地元国公立合格への学力増進」は、県立高校が長年為し得なかったことであり、「じゅうく」開設以降も町の広報誌に掲載される、地元高校の進路状況(就職先と進学先)の進学先は全て推薦入試であり、偏差値は上記の通りであり、入学者数は両校共20人を切るという事業目的からは程遠い結果がここに出てしまった。だがここが補助事業の恐ろしいところであるが、一旦走り出した事業は中止にならないという鉄則があるのである。なぜかと言えば、町の事業には赤字という概念が存在せず、赤字が目に見える形で新聞記事等になり世論の非難が醸成されない限り、事業の廃止や中止は、即ち行政側が失敗を認める事になるからである。又、自己負担額8万円弱で2週間のカナダへの夏季短期留学付きの授業料のいらない塾を廃止すれば、受益者側(地元高校生とその保護者或いは存続に熱心な学校OB)から非難囂々の嵐が吹きすさぶのは目に見えているのである。例え、事業目的未達成が甚だしくても、である。これが、補助事業の怖さである。平成年に高知市に町が出したアンテナショップ「四万十の蔵」は国の補助事業「ふるさと雇用再生特別基金事業」で失業対策による人件費を賄えている間は存続していた。この補助事業は、リーマンショックの後遺症で町に失業者溢れ出た時に政府が、労働保険特別会計の余剰金を使って補正予算を組んで財源を手当した緊急出動的、時限的な失業対策事業であり、この補助事業の終結をもって人件費が賄えなくなったために赤字が可視化され、これを地元高知新聞が報道し、事業が廃止に追い込まれたというのが、アンテナショップ「四万十の蔵」撤収の真相である。赤字額は1憶4千万円であった。方や人材育成は赤字が見えないとは言え、結果がかくも芳しくなくても、地元高校存続の大義は、地元高校愛着組には、問答無用の絶大な支持を得ているのであろうし、前回、中尾町政開始以来、なぜか役場職員(正規と非正規を合わせた)の総数がうなぎのぼりに増え続けていることを指摘したが、地元役場が若者一大雇用の場と役場が化すことにも、実に闇雲な郷土への愛着意識を持つ支持層が背後に存在し、それこそが、大盤振る舞い中尾町政への支持基盤の一角をなしている。振舞われて悪い気はしない支持基盤と無関心層によって、中尾町政の無投票二期目が実現しているのである。しかるに、この偏差値の現実味をまざまざと見せつけられて、塾経営の経験者として、今までにも増して私が思う事は、たった一つ、学力養成は、高校からでは遅いと言う事である。特に英語や数学は積み上げの科目であり、中学で土台ができていなければ、高校になってからでは成果を出すことは、極めて難しい。そこで、議会でも「親の資力によっ中学生時代に塾にいけなかったり、偏差値の高い学校への進学をあきらめている子供への支援の方が、本筋ではないか。公設の高校生対象塾ではなく、中学生対象塾、せめて中学生に門戸を開いたらどうか。」と提唱してみたが、相手側からは、現状追随的で消極的な応答しかなかったのである。

川上哲夫教育長:中学に出向いて、「じゅうく」の宣伝をし、地元高校への進学を勧奨している。

山脇人材育成センター室長:非認知能力の開発による意欲の醸成に取り組んでいる。学力力養成はまず意欲の喚起から。学力養成という段階にまで至っていない。

「非認知能力の開発」とは、いま流行りの幼児教育用語であり、やれやれ、我々は地元高校生に公費を投じて公設ロンパールームを提供しているのである。おまけに高校魅力化支援隊の一部がコーデイネーターとして高校に常駐し、総合学習の企画立案支援(教員の、であろう)に従事しているというではないか。一週間1コマの総合学習の時間のために、教員以外の外部から来た人間が常駐しているとは、いささか異様な現象ではないだろうか。窪川高校では、「地域リーダー養成コース」(進学組ではないコース)の生徒を対象に地元商店訪問等の事前コーデイネーテイングをしているという。地元に暮らす高校生であれば、地元商店位知っていそうなものである。保育園児よろしく大人同伴で地元商店を訪ねるなんて、保育園児遠足誘導じゃあるまいに、としか私には受け取る事ができない。結局、最初の懸念が的中し、塾の運営ノウハウを持たない自治体職員は、運営コンサルタント「ファウンデイングベース」に「中身」を丸投げしているのではなかろうか。この公設塾運営経費は総額6000万円(職員人件費を除く)であり、財源はふるさと納税の寄付金である。この構図は、経済同友会地方創成員会と尾崎正直知事のタッグによって天下のJALからの出向者を営業部長として高給(契約内容を開示しないところを見るとその疑いが濃厚である)で遇しているあぐり窪川にもそっくり当てはまる。つまり、有体に言って、地方創成ではなく単に殖民地化化されているのである。この殖民地化高校存存続ビジネスが如何に手が込んでいるか、四万十高校入学者募集PR活動の実態を知って、私は彼らのビジネススモデル構築の痕跡を垣間見たのである。「地域教育魅力化プラットホーム」という一般財団法人があある。設立年度は平成29年である。島根松江市事務所を置く。この一般財団法人のCEOは、株式会社リクルートキャリア初代社長水野智之氏である。代表理事は、岩本悠、島根県教育魅力化特命官、共同代表が、今村久美認定NPO法人カタリバ代表である。アドバイザリーボード、評議員構成を見てみよう。鵜尾雅隆(日本ファンドレイシング協会代表)、小泉進次郎(衆議院議員)、須藤修(東京大学教授)、錦織良成功(映画監督)、丸山達也(島根県知事)、宮脇和秀(島根県経済同友会終身特別幹事)である。この団体が考案した過疎地の高校生リクルート事業に「地域みらい留学」がある。東京と大阪で会場設定をし、全国200校余りの過疎地の高校が登録し、生徒募集一大イベントを開催している。四万十高校に常駐しているコーデイネーターの仕事には、教員と共にこのイベントに参加して生徒をリクルートすることも含まれている。今年の入学者数19人中5名は、ここでリクルートしたらしい。生徒募集活動(学校HPの更新等も含む)にかける費用は総額100万円相当である

「域教育魅力化プラットホーム」に支払った手数料:30万円

出張旅費:教員分は窪川高校総合振興費に計上75000円、コーデイネーター分は、四万十町旅費として計上75000円

その他:550000円

虐め等にあって不登校になったの中学3年生を抱える都会の保護者が、「自然豊かな、地域住民が人情に篤い、少人数の高校」に藁をもすがるように最後の期待(高校だけは何とか卒業させたい)をかけてその子弟を送り込んでくる事情はいかにもありそうである。事情が事情であれば、偏差値が低いとかは二の次であろうことは想像に難くない。実際、この「域教育魅力化プラットホーム」事務局長に聞いてみたら、全体の2割はそれであるという。では残り8割は、一体「地域みらい留学」という体裁をまとった過疎地の高校に子弟を送り込んでくる本当の理由はどこにあるのだろう。四万十高校には寮があり、全室個室で寮費は食費込みで月額3万年と破格に安い。これも大きな誘因となってることは想像できる。けれども今や過疎地所自治体は、地域おこし協力(特別交付税対象一人当たり450万円)や移住定住促進事業で人口増のために、政策投資を行っているが、その投資の受け皿は、都会の企業である。人材育成を掲げた途端に、この企業が既に食指を伸ばして殖民地化している。見分が狭い自治体職員など、瞬く間に、人材、情報、コンセプトが一体化(クラスター化)したネットワーク(蜘蛛の巣)に引っかかり、瞬く間に捕食されてしまうのである。一例を挙げよう。「ファウンデイングベース」は 四万十町人材育センタ―準備室が立ち上がった時には、既に島根県津和野高校野公設塾の運営も受託していた当時の山脇光章室長は、部下を連れてここに視察に行って、すっかり「ファンデイングベース」の虜となった。ここの社長は、リクルートコスモス出身者である。因みに「じゅうく」がこの前の地元高校休校時にやったオンライン総合学習授業のテーマはファンデイングベースが運営を受託している3高校を繋いでの「町づくり」をテーマとした高校生オンラインデイスカッションというものであった。CATVで紹介されていたので知ったのだが、開催後の高橋塾長談によれば、「普段口数の少ない子でもチャットで発言し易かったみたい。」とあくまで、プラス志向、背中を押す志向、寄り添い志向で、何だか私は、違和感満載となってしまう。「特徴なく、主体性なく、自信を持てず、非意欲的である地元高校生を勧誘している新興宗教に近い団体の甘言」に近いものを感じるのである。前にも書いたが、特徴なく、主体性なく、自信を持てず、非意欲的であるのは地元の高校生の保護者、卒業生、自治体職員等の地元民であり、高校生本体ではない。実は、この実体こそが、彼らコンサルの商売ネタそのものであるのだ。つまり私とコンサルは同意見であるということになる。「地域教育魅力化プラットホームHP」の「活動の流れ」から抜粋する。

「地域教育魅力化プラットホームHP 「活動の流れ」より引用

地域の教育から社会を変えます。
社会に開かれた魅力ある教育の実現により、地域社会の未来に意志ある若者たちが続々と育ち、「過疎化」した地域の「魅力化」が始まり、地方への新たな人の還流が生まれていく。

地域は子どもたちが憧れる本気の大人と若者に溢れ、多様な主体が協働しながら課題解決に挑戦し、課題先進地域で起きた様々なイノベーションが拡散・伝播し日本社会全体を変えていく・・・

日本はGNH(国民総幸福度)の高い持続可能な社会づくりのモデルとなり、「課題解決先進国NIPPON」として世界に貢献していく・・・

これは、私たちが目指す、一つの未来の姿です。

隠岐島前高校の魅力化を推進してきた現在は島根県教育魅力化特命官も務める岩本悠と、全国でナナメの関係と本音の対話を16年間届けてきたNPOカタリバ代表理事の今村久美、人材育成分野のトップランナーであるリクルートキャリア初代社長の水谷智之がタッグを組み、地域の教育から社会を変えることを目指しています。

 

 どうだろうか。過疎地にないものが、まず外からやってくる。「過疎地の高校を魅力化」するには外からやってきた、「子どもたちが憧れる本気の大人」からの刺激を若者に与える必要があり、これが地域活性化起爆剤になるという意味であり、これをそのまま裏返せば、「地域は子どもたちが憧れる本気の大人の欠乏によって衰退した」と言い切っているいるのである。また「社会に開かれた魅力ある教育の実現」とは、それが、地域にはないことが前提とされている。けれども少し冷静に考えてみれば、「子どもたちが憧れる本気の大人」が都会にはいるのであろうか。はたまた「社会に開かれた魅力ある教育」が一体どこで実現しているのであろうか。はたまた「GNH」(国民総幸福度)の高い持続可能な社会づくり」とは、まるで国連開発目標の指標まがいである。発展途上国向けの国連開発目標の指標が持ち込まれなくてはならない程、この地が後進的であり、未開発であれば、このような過疎地をターゲットとするベンチャー企業に6000万円の大盤振る舞いができるだろうか。ODA(政府開発援助)ではないのであり、過疎地の自治体がふるさと納税で得た寄付金を財源として充当しているのである。彼らが悪玉と言う訳ではない。ただ彼らは商売上手なだけであり、課題解決型ソーシャルベンチャーという政府の尻馬である標語に素早く飛び乗って(若しくは事前にそれを政府に入れ知恵して)、その足で、素早くその手の補助事業を拾いに地方に触手を伸ばしてきただけの事である。ふるさと納税マネーや国から還流してくる地方創成マネーの尤もらしい受皿づくりに彼らは非常に長けているのである自作自演集団である。政権中枢に近く補助事業の動向に詳しくないとなかなかこうは行かない。そういう意味では、広告代理店に近い虚業である。因みにこの一般財団法人「地域教育魅力化プラットホーム」は応援委員会10000人を目標に一口1000円の寄付を募っている。けれども、一般財団法人や一般社団法人が法律で義務付けられている貸借対照表の広告を平成29年の設立以来まだ1回も行っていない。「寄付金募集が今年からなので、7月に評議会で貸借対照表の広告を議事にする。」というのが事務局の言い分であるが、本気の大人が、子供にまず教えなくてはならないのは、「財務状況を公に明らかにしてから寄付を募る」という倫理ではないだろうか。これは、今も昔も変わらない。が、これは彼らに限ったことではない。町が補助金をつぎ込んだ、この地の農業系の「一般社団法人」も、この「地域教育魅力化プラットホーム」と同様に、設立以来貸借対照表の広告を出していなかったばかりか、「地域支援コーデイネーター」という新規事業まで町に作らせて、新たな補助金にありつくことに成功している。「本気の大人」は、常にいずこでも、都合の悪いことは表に出さず、水面下で八面六臂の躍動を為すものであり、それもこれも彼らが「本気の大人」であるからこそである。従って、その補助金の受け皿団体が、果たして「何に本気か」を伺う探査力が最終的に必要とななってくる。のような実践的な学力の礎は「識字力」である。それが、引いては、最終的に地方の生きる力に直結してくるのではないだろうか。極論すれば、我々を生かすも殺すも「識字力」であり、それによる税の使途の解明である。税の使途の不透明さは、政府に対する国民の、町長に対する町民の信頼を毀損する、つまり税金の払い甲斐がなくなり、これが国民(町民)の幸福度を下げることは疑いが無い、と思うからである。

西原真衣