呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(33)

     風力発電ヤイロチョウの森

 四万十町議会12月定例会に、総務常任員会がオリックス社を呼んで公聴会を開催する請願を提出する準備を進めていたが、一身上の都合で見送った。その後、高知県環境影響評価義j通審査会資料経済産業省の環境審査顧問会風力部会資料を議会事務局に届けることにした「オリックス社に町有地を貸借しない」ことを求める請願も、「ヤイロチョウのさえずる町づくり条例の制定を求める」請願も継続審議になったので、このままいっても一向にらちが明かない気したからである。議会事務局長の長谷部卓也氏は、本来議会事務局がこういう資料を探して総務常任員会に提供すべきだった言いつつ、総務常任員会にこれらの資料を提供する意向を示したが、これが前職の宮地正人氏であれば、必ずや、「なんで、そんなことを議会事務局に言うのか。議長に直に言ってくれ。」と実に迷惑そうに厄介払いされることは、必至であった。宮地氏は「議長の指示に従う」ことのみが自分の仕事であると信じて疑わないので、もっと正確に表現すれば、「そこまでしか思考が及ばない」ので、「とりあえずそういう事にして自分を守るしかない」ので、そのような対応になるのである。彼には、議会事務局が本来どうあるべきかが、全く検討がつかなかったのであろう。尤もこれは局長以下の全ての議会事務局職員にも当てはまる。「集団における自己保身のための暗黙の思考停止への一斉同調」である。これが議会内でも、一構成員である私に対して、かって起きた。

 その議会である。彼らも水戸黄門の印籠みたいに「議員必携」を有難がりつつ議員歴を重ねて来たので、法律を原文で読みつつ資料を探索し、限られた時間の中で議論の核心に迫ろうなどという気概に欠け、又その能力も養われてはいないのだ。だからして、彼らに本来の議会機能の発揮を期待して、特別調査委員会を立ち上げたり、又委員会単位で公聴会を開催したりも実質到底期待できない現実がある。そんな中で、ある情報が私の所に飛び込んできた。高知県漁業管理課の事前意見とオリックス社の回答部分に関して、つまり「四万十川への土砂流入による鮎、鰻等の漁業資源への影響について漁協との事前協議の場で、下流漁協、漁協連合会、東部漁協のトップが積極的な事業の推進を了承した。」部分について、ある漁協関係者筋の話として、「これらの事業の推進を了承した漁協の取引銀行からの圧力があったらしい」というのである。そこで、ハタと思ったのは、オリックス社が、保険、金融部門を持っていることである。保険金融業に相手先企業の信用調査は欠かせない。オリックス社は、保険、金融部門で蓄積された、又同業間でなければ知り得ない内部情報をも活用して漁協の取引先金融機関に手を回したのではないか、と私は想像した。これはあくまで想像である、が、決して荒唐無稽な想像ではないだろう。実にありそうなことである。我々地元住民が知るべきは、オリックス社に限らず、開発行為を行おうとする企業の本質や本音はそこにあるという事である。だからこそ、我々の生活環境の保全と地域振興の均衡点をどこに置くかの、行政の判断力や議会の監視力に期待するしかないのである。下元昇議長は、請願審議の場で、こう発言している。「オリックス風力発電事業を認めたら、他社の計画が目白押しである。河川の汚濁が懸念される。」そう発言していながら、何もしなかったら、意欲と能力の欠如では、やはり済まされないことにはなる。下元昇議長は、四万十町議会史に汚名を残すことになるだろう。今まで議会で議決してきた四万十川及び流域の自然の保全活用関連の事業を忘れてもらったら困る。全ては、我々の血税である。議会は責任を負わなくてはならない。以下四万十町決算資料から列挙する。

平成27年度 四万十川保全と活用検討推進業務委託料:14000000円相当   

平成28年度 四万十川保全と活用検討推進業務委託料:14000000円相当  

平成29年度 四万十川保全と活用検討推進業務委託料:14000000円相当  

委託先:西日本科学技術研究所 

平成28年度 ヤイロチョウの森保全と活用事業委託料:3242675円

平成29年度 ヤイロチョウの森保全と活用事業委託料:3638000円

平成30年度 ヤイロチョウの森保全と活用事業委託料:3638000円

委託先:生態系トラスト協会

更に、堅い握手を交わす、協働の森連携事業の協定締結式の様子が、高知県林業政策課のHP上に残っている。握手しているのは、中尾博憲町長、尾崎正直知事、畦地履正四万十ドラマ社長である。林業政策課によれば残念ながら、四万十ドラマは平成30年に協定が満了を迎えての更新はなかったとのことである。これは、十和道の駅の指定管理者を外れたのが、平成29年12月であることと関連している感がある。いわゆる企業の社会貢献活動を対外的にPRする動機付けが薄れたのではないか。現在四万十町と協定を締結して協働の森づくりに助成金を出しているのは、「キリンビール」(たっすいがはいかんの森事業)、「四国電力」、「コクヨ」であるらしい。四万十町森林組合は「コクヨ」と提携し、いわゆるOEM(相手先ブランド受託生産)を実施している。四万十町組合組合長田村耕一氏は、中尾博憲町長の選挙参謀の一人と聞くし、四万十森林組合の事務新設や、集成材工場前の展示商談会ルームの新設も、県予算と町予算で賄われたことは記憶に新しい(展示ルーム新設平成29年度高知県産業振興推進総合支援事業採択、補助額223521000円、平成29年森林組合本書建設費補助金、町一般財源39676000円)ので、中尾町長の議会答弁「オリックス風力発電事業により経済的恩恵を受ける町内事業者から聞く賛成意見」の町内事業者の一つに四万十町森林組合を推測するのは自然な流れである。そして四国電力は、シーテックという子会社を通じて風力発電事業への参入を画策していると聞く。実に、民間企業の思惑は自己利益実現を巡って入り乱れているのである。そのなかで、ヤイロチョウの森に隣接する26haの森林を自から所有する「王子製紙」は、協働の森事業ではなく、生物多様性保護活動に取り組んでいて、生態系トラスト協会と協定を結びヤイロチョウの保護活動に協賛している。この26haと対照的なのが、11月15日の全員協議会の場で耳にした、オリックス風力発電事業の立地総面積、70haである。この立地予定地は、ヤイロチョウ保護区域内にはないが、従来からの知見では、ヤイロチョウの台湾からの飛行ルートにはかかっているのである。王子製紙の社会貢献活動である、生物多様性保護活動とコクヨ四国電力キリンビール各社の協働の森づくり事業を比較して、優劣を付けたり、論評できるほどの知見は持ち合わせてはいないが、四万十町が、協働の森づくりの協定締結当事者であり、ヤイロチョウの森の保全と活用事業の実施当事者であったことは、確かな事である。更に四万十川保全と活用推進検討事業は、激減した天然鮎の復活を視野に入れた四万十町実施事業であったことも、確かな事である。従って、中尾町長がまず勘案すべきは、四万十町事業の継続性や整合性であって、風力発電事業から経済的恩恵を受ける町民や環境保護の視点から反対する町民を右顧左眄することではないはずである。ところが、最近、文化的景観検討委員会の議事録を呼んで、非常に気になる点があった。この会議には、オリックス社から担当者が説明のために出席していた。議事録の当該部分を転載する。

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この議事録を読んでどういう感触を受けるだろうか。私自身の率直な感想は、まず、オリックス社の態度、物言いにある種の横柄ささえ感じる。これが県や中央省庁との場となれば、オリックス社側の態度や物言いが変わりそうな印象である。もう一つは、副委員長の池田氏発言の、風車の観光資源化による地域振興の視点と自然保護の視点をからめて、「王子製紙さんは承認をしていない~」に即座に反応して、座長の中越委員長が、「あまりよそのことは言わない方がいい。」と火消しに走っている発言をしていることである。座長は、所管課である四万十町生涯学習課が選考した人物であり、会議の前には事務局と入念な打ち合わせが通常行われる。従ってこの座長の言い分は、四万十町の意向を代弁していると見るのが順当な判断である。この人物は、高知県四万十川流域保全振興委員会の委員でもあり、また議事録にあるように、熊本の阿蘇山の外輪山にできた風力発電装置を「風車は生活上不可欠なものであるから文化的景観に入れた」とあるので、熊本県でも文化的景観関連の審議会委員を務めていることが伺われる。そのような経歴を四万十町生涯学習課によって買われたとすれば、研究者としてのレベルはいざ知らず、行政の意向に沿う発言を行政から期待されていると言えるのではないか。オランダにある歴史的な木造建築物としての風車なら、確かに当時は生活に必要であったのだろうが、固定価格買取制度によって政策誘導された再生可能エネルギー発電装置の一種である風力発電は、文化的景観となるには日が浅すぎるのである。そもそも大手企業による開発行為を伴う発電設備と生活の必要とは、元より乖離がある。結局、行政の意向に沿い、議論を誘導してくれる大学の先生を喉から手が出るほど渇望しているのは、川上哲夫教育長率いる四万十町教育委員会生涯学習課なのである。何といっても、私的見分によれば、四万十町教育委員会というところは、教育委員会定例会の議事録が無記名であったり、無暗に意味不明な休憩(議事録に残さない)が挟まれていたり、文化財の指定や解除を巡る教育長による諮問書と文化財保護審議会による答申について、「取りに来たら見せますが、持って帰られたら困ります。」などと言う判断を示す、失策を恐れるあまり、思考停止にひた走った臆病極まりない公務員集団なのであるからして、この選考には今更驚きはしない。

序破急という言葉があるが、彼らの思考には、終結しかなく、従って序もなく、破もないので、急(展開)もないのである。このような行政組織を税金で存続させるべきか否か、今や再考の余地が大いにある。

 「行政組織は原則として民間開発業者に阿る必要はない」にもかかわらず、思考停止は必然的に判断力の衰退をもたらすので、このような阿り発言を生業とする大学人が跋扈することになるのである。少子高齢化は大学の経営を圧迫している。官需に依存している大学に及び大学人にはこの背景があり、行政が設置する審議会の座長としての発言には、雇用主である行政への過剰な忖度が働いていると、私は見ている。行政から受け取る謝金自体は微々たるものであっても、実際、この中越信和教授が所長を務める、福山大学グリーンサイエンス研究所は、文部科学省の私立大学ブランデイング事業を受託していることからしても、行政の審議会委員の経歴が物を言うのであろうと推測する。先日、池田副委員長と偶然会った。河川へ度者の流入に関して、工事期間中だけのことと見る向きが、池田氏の知り合いの四万十川流域保全振興委員会の委員である中越氏以外の学識者にもあるという話が聞けた。現実は決してそうではない。河川工事のコンクリートのり面からも、間伐していない山からも、田んぼの代掻きからも、土砂の流出は続くのである。四万十川下流では川のりが取れなくなって久しい、多少の鮎漁や渓流釣りの経験のある私の夫もそう言うのである。川底にたまる土砂で、鮎の餌である岩につく水苔が、つかなくなる。水苔が駆逐されれば、水苔を食べるアユが居なくなる。これ以上分かり易い話もない。山が変わると川が変わり、海が変わるのである。水系は繋がっているのである。当たり前の事である。これが生態系である。生態系の中で人間の営みはあり、その営みの中から文化が生まれる。だから、「重要文化的景観生物多様性保護と地域振興を包摂する議論、見識こそが期待されるのではないか。」だから、池田副委員長発言、「王子製紙の不承認」は、決して「そとのこと」ではないのである。これへ中越委員長の見え透いた議論誘導目的の作為的発言である。議論の調整、統括上、座長である自分の都合が悪いだけである。複合文化施設検討委員会の座長も高知大学地域協働学部内田純一教授であり、この文化施設の基本構想、基本計画職員向け研修、町民向け啓発イベント全ての支援(ガイダンス)業務を受託しているのは、株式会社アカデミックリソースガイド社長岡本真氏である。この、四万十町教育委員生涯学習課における審議会座長やコンサルタント等の「外への依存振り」と、その依存を忖度した彼らの言動及び、その背景にある教育委員会「集団的思考停止」の実体については、追って考察、レポートしたい。因みに高知県四万十川条例に基づいて設置している四万十川流域保全振興委員会委員名名簿及び直近、平成31年度2月2月14日開委員会議事概要を見たら、委員である中尾博憲法四万十町四万十川総合保全気候 会長)と四万十町議会議員であある橋本章央(四万十川東部漁業協同組合理事)の名前が委員名簿にありながら、両者とも欠席のため発言なしとの事であった。この開催時点ではオリックス社の大藤風力発電事業計画の計画段階配慮書の手続は済んでいたはずである。四万十町議会は、取り合えず、橋本章央議員を参考人招致して、オリックス社と東部漁協の交渉内容をヒアリングすべきではないか。11月15日の全員協議会の場では、この橋本章央議員は、「ダム堰堤からの排水が水性生物に与える影響を調査する委員会に地元が参加できなかった。」と発言した当人である。今こそ地元の出番ではないか。二枚舌は感心しない。中尾町長は流域8町村で構成されている四万十川保全機構の会長として、この委員会の委員に名前を連ねている。この保全機構は四万十町内に事務局を構え、四万十町だけでも毎年200万円相当を拠出している。施策の継続と整合性を毀損することは税の価値を毀損する事である。

 

四万十町議会議員  西原真衣