呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(61)

      風力発電問題一般質問こもごも

 

6月17日に大藤風力風力発電計画について一般質問があった。質問者は村井真菜議員である。傍聴した知人夫婦より情報提供を受けた。

村井議員:風車による健康被害が出れば(低周波音被害という言葉は使わなかった)町が補償するのか。

山本企画課長:補償しない、オリックス社に申し入れて欲しい。

この触り部分だけ聞いた。これは一体何だろう。この質疑に傍聴席10席が満席であったという。この質疑は意味があるのかとしばし考えた。答弁者山本企画課町の従来の認識以下である。

オリックス社は開発業者である。開発業者のすることに行政は口出しできない―山本課

オリックス社が方法書を公表してくれるなと言っている。公表できるものはない―山本課長

大正の説明会には行ったが、大正の地区住民限定説明会には行っていない―中井四万十川対策室長

大正での2度目の説明会では、地区住民限定で説明会を開催したのは、集会所が狭いかららだとオリックス社が言っている。-町政懇談会で山本課長

昨年度の大正、十和の説明会(環境アセスメント法により開催が義務付けられている)で低周波音の健康被害について、村井議員と同様の質問に対するオリックス社回答:低周波音による健康被害については医学的因果関係が立証されたら補償する。」ではなかったのか。

今日6月18日議会最終日、開会前に村井真菜議を直撃した。経済産業環境審査顧問会風力部会にオリックス社が提出した、騒音と低周波音の調査地点地図によれば、調査地点全10か所は全て1k㎡圏内の住居であり、最短距離は500メートルであったからであり、この前、YouTubeで放映された「四万十ふるさとの自然を守る会」のオンラインシンポジューム中の村井真菜議員の発言「最も近い住居が瀬里にある2㎞です。」は事実と異なっていることを指摘し、訂正する意志の有無を本人に確認したのである。ところが村井真菜議員の反応は、全く真剣味に欠けた実にえへらえへらしたものであった。

村井議員:オンラインシンポジューム中の発言は覚えていない。確認します。済みません。

村井議員:訂正する。次回は7月にシンポジュームの予定があります。その時に訂正します。

西原:訂正する距離の根拠をどう説明するのか。人から言われたから訂正するのか。

村井議員:ムニャ、ムニャ(全く頭に入っていない)済みません。

「四万十ふるさとの自然を守る会」今後の活動費用に充てる寄付を募っている。シンポジューム参加者中現職議員は村井真菜議員だけである。村井真菜議員と岩井優の介議員は「オリックス社による(仮称)大藤風力発電事業計画の中止とオリックス社に町有地を貸さない」請願の紹介議員である。請願が付託された総務常任委員会の委員長には、この「経済産業環境審査顧問会風力部会にオリックス社が提出した、騒音と低周波音の調査地点地図」は既に渡している。けれども村井真菜議員も岩井優の介議員もこれを全く精査せず、文書の出所さえ知らない。これでは質疑に迫力がないのは当然である。行政同様「やる気があるのか」である。当の総務常任委員会でも、「立地予定地祖面積は、70haで、内訳は、四万十町12ha、四万十市33ha、民有地24haで、町有地は、17.4%にしか過ぎない。従って町が反対しても市側にずらせば、風力発電設備は建設可能である。反対によって四万十町が経済的恩恵も取り逃すことになるので得策ではない。」というのが全体の論調となっている。

          と・こ・ろ・が

私が別途、高知県環境共生課に方法書に記載された事業実施総面積を問えば、「事業実施面積は、1470haと方法書には記載されている。」と答えた。四万十町本会義議事録には、山本企画課課長答弁として、「町が令和元年11月にオリックス社に提出した町有地貸借証明書に記載している町有地の総面積は21、3haである。」が残されている。四万十市農林水産課林地開発担当者は、貸借証明書上の四万十市有地総面積は683haと明言した。残りは民有地であるから756haと試算できる。この面積と前述の総務常任委員会での総面積70haの落差が何を意味するか、熟考の余地がありそうである。事業実施総面でさえ、様々な情報が飛び交っている。こんなことが正常な状態と言えるのだろうか。現に風力発電が設置されている自治体の様子はどうだろう。総務常任委員会視察報告を二つ紹介する。本来このような報告はとっくに町民の元に届いてなくてはならないはずである。それが全くできていない議会である。だから議場で有効な質問を繰り出せない。

1.令和元年10月、愛媛県愛南町僧都風力発電視察

この視察には、村井真菜議員がオブザーバーとして現地参加、この時に村井真菜議員によって委員会に紹介されたのが、四国風車ネット代表の黒田氏と元愛南町町議、元々愛南町建設課課長という経歴を持ち風直下500mの所に住むK氏である。以下は、K氏談である。

 愛南町風力発電の事業者は民有地賃貸料を20年間分一括で支払った。

 地元限定事業者協力金が2年間で155万円、年間15万円(集落人口150人)

※ 発電所上流は土砂による汚濁が危惧される。

※ 風車のストロボ現象が気になる。農業をやめた人もいる。低周波音については風 車との因果関係の立証が困難(発電所設置に積極的に協力する)である。

2.令和2年1月、高知県大月町洞ケ山風力発電視察

大月町の場合は、まずもって再生可能エネルギーの導入と地元観光振興の一挙両得を目論んで町が積極的に誘致したという経緯がある。事業者のGIPと大月町は、まず町が風力発電事業計画に全面的に協力するという「確認書}を交わしている。町と事業者が協同で町民からの苦情対応を行うという「協定書」も交わしている。更に地元対策として、地区住組織、事業者、町の三者間には土砂災害対応や地元協力金に関する「覚書」も交わされている。一般的な公害苦情相談窓口は、大月町の場合、生活環境課であるが、風力に関する公害苦情処理窓口は誘致に関わったまちづくり推進課である。現在行われている具体的な騒音や低周波音の苦情処理の手法としては苦情が出ればGIPが日本気象協に委託して騒音や低周波の測定を実施し結果を町に報告するというもの。つまり苦情対応調査の主導権は事業者側にあるという事であり、積極的に事業所を誘致した行政側の担当課に苦情処理窓口が設置されているという事は、事業者と行政が苦情処理に対して同じ側に立っているという事である。以上の視察報告は、風力発電事業計画を考える上で非常に参考になる。なぜ町民代表の議会がこの視察報告を速く議会HPに掲載しないか納得が行かない。これは怠慢を超えて犯罪的である。この視察報告内容が速やかに町民に届けば、怠慢で不勉強な議員たちの頭ごなしに、昨年の大正地区における地区住民限定説明の席でも愛南町のように、「林道整備や地区への協力金の甘言が出ているだろう。」とか、「756haを所有する地権者へも20年間一括払いの土地賃貸料の支払いが個別訪問時に約束されているかもしれない。」と容易に推測できることになる。つまり風力発電事業者が地元の反対を遮るために通常どのように振舞うのかが学習できるのである。高齢化、収入源のなさ、人口減少から来る将来への不安感プラス情報過疎(風車について何も知らない)は、開発事業者に取っての「手玉」に取る「手玉」その物であろう。そのような状況下で、総務常任委員会は、「オリックス社に来てもらって再度大々的に住民説明会をしてもらって、町が受ける経済的恩恵を町民に広く理解してもらおう。」などと寝ぼけたことを言っている。そして請願紹介議員である村井真菜議員と山本企画課町は議会本会議で、冒頭のような寝ぼけた質疑応答で、寝ぼけた傍聴者を沸かしているのである。風力発電事業を含むエネルギー政策は全て経済産資源エネルギー庁の所管である。同じく経済産業省傘下の中小企業庁を通じてコロナ禍における零細事業者向けの持続化給付金の事務委託手数料を巡って、「サービスデザイン推進協議会」への多額の委託料が物議をかもしている。この「サービスデザイン推進協議会」へは、竹中平蔵氏率いるパソナから、電通を抜いて最も多くの職員が出向していると報道されている。この竹中氏を社外取締役に据えているオリックス社は、関西空港静岡県浜松氏の下水道事業をコンセッション方式(設備は公設公有で運営権を民間委託)で受託している外資系企業に出資している。規制改革会議の民間議員と企業人の二面性を持つ竹中平蔵氏は、アメリカ仕込みの強欲資本主義の申し子のような人物である。アメリ連邦議会へのロビーイングを行うグローバル企業の重役がアメリカ政権中枢の役職に就任するのは珍しくない。これは一般的に回転ドアと呼ばれている。竹中氏は、一ツ橋大学出身の経済学者で開発銀行研究員を皮切りにアメリカ仕込みの回転ドアが齎す利権を総なめにしてきた人物である。竹中氏だけが問題なのではない。比類のない如才のなさと強欲さを併せ持つこの人物を政治任用してきた歴代首相が背後にいるし、現に竹中氏は驀進速度を緩めていない。規制改革が経済成長に繋がったかどうかは別にして、竹中平蔵氏にオリックス社が何を期待しているかは誰の目にも明らかではないだろうか。強欲とは常に奪うものの分量が、与えるものの分量より多いところに存在する資質である。竹中氏やオリックス社の強欲さの前には、2年がかりで月給205000円を25万円に上げることに苦心惨憺した四万十町議会議員達やそれによって議会対策(円滑な議会運営)を期待している中尾博憲町長が太刀打ちできる訳もないのだ。何といっても、町のトップや議員が寝ぼけているのである。肝心な地図(風車から人家までの距離が記されたもの)を見たこともなければ、環境審査顧問会の議事録さえ読まないのである。それでいて「調査結果が出たら、自分が学識経験者を選任し、町独自の調査を実施する。」と町長室で私に臆面もなく言ってのけた中尾町長、経済産業省電気保安課によれば「オリックス社は既に調査に入っている(風況、生物、騒音、低周波)1年ぐらいかける予定らしい。次の準備書に調査結果が記載されるのが一般的である。事業者によって結果の数値の精度はかなりのばらつきがある。評価書が最終版である。電気事業法によって評価書には大臣(経済産業大臣)が変更命令を発動できる。」との事である。中尾町長、調査結果が読めなければ煙に巻かれておしまいになるだけですよ。なんせ相手はあなたより遥かに如才なく、強欲で、かつ学識の調達に財力をはたける力があるのですから。読まない人は読めない。これは鉄則として村井真菜議員にも言いたいことではあるが、やめて置く。なんせ彼女は私に予算書の読み方を教えてくれと電話をかけて来たことがあるが、本気ではない、単なる迎合である。その意味では中尾町長に性格が酷似している。対面した相手の機嫌取りだけには余念がない。つまり、へらへらしているのである。議員報酬を上げて若者登用を喧伝した中尾町長、餌を変えても釣れた魚は結局釣り糸を垂れた人間に似通っていたという事ではないでしょうか。まるでイソップ童話みたいで面白いですね。議員報酬と言えば、昨日高知県庁の県政記者会見室で記者会見が行われた。会見したのは、提訴人の山本たけし氏と訴訟代理人の谷脇和仁弁護士の二人であったが、谷脇弁護士によれば、何と10社が来たという。その内数社は、四万十町関係者にも取材したと言っていたらしい。さんさんテレビで昨日報道されたとも聞く。地元ケーブルテレビも町の公共放送の担い手として、提訴側と応訴側の両者を取材して報道したらいいのにと思う。それこそ、この町の学童たちへの生きた主権者教育になるのではないか、何人も裁判を起こす権利があるということを通じて、特に今回は住民訴訟であるので、法律が人間の権利、義務関係を扱う社会的規範であるという事や、議会や町が本来こうあるべきであるという考え方を法は体現し制度化されているということを学習し、社会の構成員として、現況の町や議会のあり方に異議を唱えることで、それを変えていくことも出来るという事、つまり行政訴訟とは選挙以外の参画の手法であるということが伝わるのではないかという希望的観測が、私の中にはあるからであるが、肝心の四万十公職員が、常勤専務理事の森雅順氏を含めそのような事柄をどこまで意識、認識しているのかは、正直覚束ないのである。彼らは無論成人なのではあるが。

西原真衣