呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(65)

               請願審査の行方

7月14日に総務常任委員会が開催され、請願審査の部分を傍聴した。
古幹夫委員長は、企画課の中井四万十川振興室長、山本企画課課長を委員会に呼んでいた。企画課が説明のために持ち込んだ資料が以下である。


資料1:風力発電アセスに係る参考項目の見直しについて
(第22回新エネルギー発電設備事故対応・構造強化WG会議資料)


資料2:風力発電施設における騒音及び超低周波音について
秋田県再エネ海域利用法に基づく協議会提出資料、日本大学町田信夫)


資料3:石炭、火力100基 休廃止へ  非効率30年度までに(令和2年7月3日 高知新聞朝刊)


資料4:風力発電施設から発生する騒音等に対する取組について
環境省水・大気環境局大気環境課大気生活環境室  ちょうせい第99号)


資料5:風力発電施設による超低周波・騒音の健康影響
(石竹達也  久留米大学医学部環境医学講座  日本衛生学会学会誌)


上記ラインアップの第一印象はどのようなものであろうか。風力発電の主務官庁、つまり経済産業省環境省及び公害紛争の調停を所管する総務省の機関紙「ちょうせい」からの記事等全て当局筋のものであり、担当職員がネット公開資料から適宜拾って来たものということだ。共通テーマは、「風力発電から発生する騒音と低周波音」である。元をただせば、請願紹介議員である武田秀義が、中尾町長に対して公式の場で、「オリックス社の調査結果はオリックス社にとって都合のいいことしか出てこない、町独自調査が必要である。」と発言したことにある。その時「町独自調査を実施する」と請け負った手前、何らかの調査をやらざるを得なくなった中尾町長であるが、この資料の選択そのものが町独自調査の概念を裏切っているいうことに、この会議の出席者全員がどうも気が付いていない気がして、私はかなり不安になった。これらは全て風力発電推進側の作成した資料である。そうではない側が作成した資料はなく、従って対比することで得られる信用性への訴求が端から期待できないではないか、と思ったが、彼らは全くそう思わないのであろうか。思わないようであった。この懸念は、早速炸裂した。何と、資料1の結論は、低周波音の調査を参照項目から外す」であった。この結論を導いたのは、「第22回新エネルギー発電設備事故対応・構造強化WG」である。いっそのことこのような御用WG(ワーキンググループ・作業部会)はホワイトハウス並みにタスクフォースと言ってもらいたいところだ。超低周波音を参照項目からはずす理由は、


1.今までの調査結果は、超低周波音と健康被害との直接の因果関係を認めていない。


2、最も有望な再生可能エネルギーである風力発電設備の普及には、環境アセスメントのプロセスを迅速化し、併せて業者負担を軽減すべきである。


中井四万十川振興室長はここで言い添えた。「今回のオリックス社の大藤風力発電計画の環境影響評価には超低周波音は調査項目に入っています。」
参照項目から外れることへのコメントはない。外すという意向が先にあって、理論付けを請け負う御用学者が蝟集するのがWGというものである。四万十町議会議員には、こういう常識が無いから、怖いのである。やっぱり議員報酬は上げるべきではなかった。さらに中井四万十川振興室長は続けた。「風車全般(景観、騒音、低周波音を含む)への捉え方には、風車から経済的恩恵を受けている立場かそうではないかで違いがあると報告されています。」

ふんふん「経済的恩恵」ね。「経済的恩恵」を受ける側と受けない側を事前に正確に割り出した上での意識調査でもやったのか、地権者をどうやって割り出したのか。もしそれを本当にやったのだとしたら、経済的恩恵(20年間の土地の貸借良料)を受ける地権者と個別交渉に及んだ開発事業者から情報の提供を受けるしかないではないか。全くよく言うよ、とはこのことである。行政の人間は今までずっと口を揃えて、「民間のやることに介入できない」と言ってきたではないか。開発業者の個別交渉からしか出てこない情報が規制官庁に筒抜けで、そこで組み立てられ結論が、学識の装い新たにWGの承認を待つばかりとなっているのである。さて、これを読み上げられた四万十町議会総務常任委員会面々の反応はどうだったか。


古谷幹雄委員長:(四万十川振興室長配布資料説明開始時に)暫時休憩

注釈:これで説明部分は議事録に残らない。何のために委員会に呼んだのであろうか。執行部からの申し出ではなく委員長が招聘した執行部議事説明員による説明部分は、議事公開に適さないという思考回路が存在する。これは判断を相手に委ねることが習い性になっているからである。情報を依存し判断も委ねているということである。このように人々に私は「議会の調査権からの逸脱」を指摘されて辞職勧告を受けたのである。これっ冤罪ではないだろうか。

 

堀本伸一委員:今風況調査に入った所で、風況がよくなければ、撤収ということになるから。

注釈:請願採択をそれまで引き延ばせるというニュアンス。賛否を明らかにすることを避けて自然消滅を待ちたいのであろう。環境省経済産業省の外郭団体NEDOがシュミレーションによる全国風況マップなるものを公表している。この情報に基づいて立地が選択されるのが通常なので、風況が思いの他良くなく撤収という事態は、非常に低い確率でしか起こらない。この人物の特質は、審議に必要な一般的知見の手薄感である。


田辺哲夫委員:町全体にとっての総合的なメリットは感じられない。


注釈:誤っていはいないが、あくまで印象論で論拠が弱い。感想を述べるにとどまっている。論拠があろうとなかろうと、とにかく発言したいのである。この人物により議会本会議の質問時間が占有されている実態に疎ましさを感じているギャラリーは少なくない。


水間淳一:今日は葬儀が入っているので早退したい。


注釈:水間淳一議員にとって政治とは、畢竟、冠婚葬祭への顔見世を怠らず支持者の好印象を次の選挙までキープする事であるらしい。政治家はそうでなくてはと本気で思っている節がある。これがこの人物の処世訓である。が、そもそも区長と民生委員と議会議員の役割分担が曖昧模糊としている以上同情の余地はありそうである。が、この辺りの観念が頭に長年住み着いている以上「政党は組織であるが、議会は組織ではなく議決機関である。」レベルの議論は到底無理である。この弊害は、恐らくこの人物の支持者には理解されていない。

 

下元昇議員:(コロナ禍で)オリックスに来てもらえる状態ではないが、四万十町立地分が12基と聞いている。最大49基である。四万十川流入する土砂量が気になる。土砂量はまだ試算できないのか。四万十町が反対したらオリックス社が事業を中止する考えがあるかどうかを知りたい。オリックスに聞きたい。

 

中井四万十川振興室長: まだ航空調査の段階なので土砂量は計算できていないと聞いています。

山本企画課課長: 風況調査が終わらなければ、設置基数も決定できないと聞いています。


注釈:この町の行政職は、まるでオリックス社に飼いならされた伝書鳩のようなことしか言わない。実態は、民間に介入できないのではなく、オリックス社に介入されているのである。試算値は試算値である。最大49基で排出土砂量いくらと試算できるはずである。オリックス社は経済産業省の環境審査顧問会で同様の指摘を受けた時も「計画段階が未熟」と逃げていた。逃げる相手にはこちらの試算値を突き付けて、反証を求めればいいだけではないか。下元昇議長、聞きたければ、オリックス社に対して議長名で「公開書簡」でも出したらどうか。オリックスが無視できるはずもない。地方自治法上「国に意見を述べる」権限をさえ付与されている地方議会の議長権限をそれほど持て余しているのなら、いっそ権限を返上して患い事から解放され、心安らかに余生を送ったらどうか。

古谷幹雄委員:四万十市議会に視察を申し入れたが、動きが無いという事で受け入れをやんわり断られれた。地元も反対の意向はないようである。


注釈:四万十市農林水産課林地開発担当者によれば、地元は、全会一致で大賛成である。風車を起爆剤にとの期待も高まっているらしい。起爆の内訳は、集会所の屋根の修理、管理道の草刈と、20年間の土地貸借料であり、これを起爆と受け取ってくれる字もおt住民は、オリックス社に取っては、神様みたいに有難く見えるに違いない。ここで思い出すのが、「風車直下の6地区での住民説明会が、住民側の意向で非公開で開催された」という地元高知新聞の記事である。地元住民はむしろ誇らしげに、オリックスから自分の所に電話があったとか、自分を訪ねてきたとか、担当課長に言ってらしいので、オリクス社の念入りでまめな個別交渉の甲斐あって、「自分たちが得をしている(別名経済的恩恵を受ける)ことを外の人間に知られたくない。心理が作動したのであろう。オリックス社の戦略は見事大成功である。これらの成功体験が、早速都に帰ってから関係機関間で共有され、「経済的恩恵を受ける住民とそうでない住民とでは、風車に対する捉え方が異なっている」という資料となって結実したのである。我々の公務員や議会議員に比べて比較にならない勤勉さであり、フットワークの良さである。やっぱり収益力のある大企業は違う彼らの勤勉さに比べれば、町も議会もただ言われたことを鵜呑みにしながら、問題の先送りに余念がないだけである、そして「収益を上げたい」側が積み上げていく既成事実に押し切られることを装って、責任を回避したいだけなのである。何といっても中尾博憲町長本人が四万十市の地域住民よろしく、「自分がオリックスに言う。」とは、「自分がオリックスに要請する。」とかをご満悦の風情で宣うところを見れば、過疎と高齢化に喘ぐ四万十市地域住民と同様中尾博憲町長もオリックス社を自分尾町長人生に花を添えてくれる頼もしい存在だと感じているに違いないのである。まあ、ざっとこの辺が、令和2年日本の風力発電計画四国の方田舎の地元反応である。主体性だけは、どこにもない。請願紹介議員であり、町独自調査の提案者武田秀義議員は提案者として今後どのような主体性を発揮する考えなのか、全く不明である。別の紹介議員である村井真菜議員は、窪川原発を止めた功労者である嶋岡幹雄氏に中尾町長をリコールできないかと佐藤さや氏と相談を持ち掛けた挙句、大正田野コミュニテイセンターでの島岡氏の「窪川原発を止めた」講演につないだとの情報が入ってきているが、そうかと思えば、議会本会議では、過去に一般質問の冒頭で「議員になって8ケ月矢面に立つことの大変さを痛感しています。町長、副町長の御苦労が偲ばれます。」とのリップサービスもあった。「御苦労が偲ばれる人をリコールする」とは本意が全く疑わしい。佐藤さや氏とは「四万十ふるさとの自然を守る会」代表で、町長室で風力発電反対署名を提出した人物である。それにしては、「四万十ふるさとの自然を守る会」HPでは当該イベント周知がないのはなぜなのだろうか。島岡氏講演のお知らせは、なぜか村井議員のフェイスブック投稿のみである。それじゃ人は集まらない。もう一人の請願紹介議員、岩井優ノ介氏は、犬の散歩でもしているか赤旗を配達しているのであろう。いずれにしても彼らもまた、勤勉さ、つまりエネルギーの投下量でオリックス社に完敗していることは間違いない。

 やっぱり稼ぐって楽じゃないという教訓でした。「議員報酬引き上げ」裁判第2回公判は高知地裁で8月25日です。午前10時開廷の予定です。被告中尾博憲四万十町長訴訟代理人行田博文弁護士の準備書面への反論が原告山本たけし氏訴訟代理人谷脇和仁弁護氏によって行われます。

 

西原真衣