呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

大藤風力発電から四万十議会を見る(1)

     風力発電勉強会が開催された

 

大藤風力発電の勉強会に行って良かった。北海道から駆けつけてくれた市川守弘弁護士は、大規模風力の問題点を実に具体的に、分かり安く解説してくれた。以下が概要である。

四国は電気が余っている。発電した電機は首都圏へ送られる。原発も風力も立地は過疎地である。再生カ可能エネルギーだけで、ゴーサインは拙速である。医学的因果関係こそ立証されていないが、健康被害が多大報告されている。山の稜線がバリカンで刈ったように皆伐される。取付道路や管理道も新たに設置され、膨大な土砂が出る。土砂災害の危険性が大である。環境アセスメント法は、作らすための手続き法である。自全意見によって求められた環境影響回避、低減措置とは、動植物の巣箱の移動や希少植物の移植でしかない。保水力調査も立地部に見であり、山全体には及ばない。調査しているのは、下請けが雇った学生アルバイトである。地元には固定資産税が若干入るのみ、健康被害や環境破壊は金銭では測れない。圧巻は、原発メーカーが風社メーカでもあるという事。これは説得力があった。止めるにしくはない。そこで、議会動向をモニターした。その前に行政との問答で、解せない話を何点か耳にした。

1.事業者が事前意見を求める目的で作成、行政に送付し、公告、縦覧に付環境計画段階配慮書、方法書、準備書、評価書の全てに事業者の著作権が設定されているため、縦覧期間(1ケ月)以降は閲覧できない。

2.知事は、意見を出す前に、関係自治体に意見を照会するとアセス法に規定されているが、関係自治体の意見が関係自治体住民に知らされない。

3.意見公募で出された一般住民からの意見は、事業者が取りまとめて、県に報告するとアセス法に規定されているが、その内容は、一般住民には知らされない。

4.知事が最終的に諮問する環境影響評価技術審査会の議事録は公開されるが、肝心な会議資料が公開されない。

これだけで環境アセス法が、実に作為的なザル法であることが十二分に察知される。

さて、肝心な地元住民代表、四万十町議会は、この問題にどう取り組んだか。

令和元年3月定例会で武田議員、村井議員から、風力発電に対する町の意向が質されている。この時の町長答弁は、固定資産税の増収が期待できるという、問題意識の極めて低い、事業開始に前向き答弁であった。

令和元年8月27日総務常任委員会で、大藤風力発電事業計画に対する町長の所見を聞いている。ここでも町長発言によって、「行政の立ち場では、民間企業の企業行為を規制できない。」という受け身な姿勢が示されたようです。その時、事業中止を求める[四万十町の自然を守る会」代表の佐藤さやさんが、傍聴に来ていた。傍聴席で隣であったので、偶々彼女から請願を今日提出すると聞いた私は、持ち込んでいた議会基本条例中の、「町民からの陳情、請願は町民からの政策提言と位置付けて、審議される委員会の場に、説明を受けるために、陳情、請願提出者の出席を求めることを義務付ける。」という条項を見せて、古谷幹夫総務常任委員長に委員会に説明のため呼ぶことを申し入れることをアドバイスした。休憩時間に早速彼女は古谷委長の所に飛んで行き、その旨を伝えていた。その時は実ににこやかに、「条例にある以上、当然呼ぶ。」と彼女に言ったのを、私も聞いたつもだったが、いざ蓋を開けてみれば、古谷委員長は、佐藤さんを呼ばないで済ませようと計らとしか思えなかった。なぜかと言えば、9月定例会で請願審査が付託された総務常任委員会(令和元年9月12日9:30開始)の席で、開会前の古谷委員長と私の会話

「古谷さん、昨日別件で佐藤さんと電話で話したんですが、今日の総務常任委員会の開催知りませんでしたよ。彼女を呼んでないんですか。」

「呼んだ。前日に連絡した、タイミングが違っただけだ。」(この人は自分の落ち度を指摘されると向きになるという習性がある。)

佐藤さんの説明は、以下から始まった。その前に古谷委員長が彼女に対して「手短に」と促し、彼女が、「それはできません。」即座に撥ね付け、脱兎のごとく出て行って、資料の複写ヲ求めて議会事務局に駆け込んだことを、ここで特記する。

「私は、腹が立っています。前日、今日開かれると聞きました。結局準備ができませんでした。昨日は畑仕事をしていました。議員さんを説得するためにもっと準備したかったのに、事前に申し入れまでしているのに。まちづくり基本条例に書かれていることととやっていることが、全く違うと思います。」

私は傍聴席で、心中快哉を叫んでいた。そこで小声で、今日開かれると誰から聞いた、と彼女に囁いてみた。即座に古谷委員長から、「傍聴席は私語を控えるように。」と、私に対して注意が飛んだ。自分の対面を守ったなと即座に思ったが、むしろその後の佐藤差に対する古谷委員長の言い訳が聞き捨てならなかった。

古谷委員長「請願陳情文書表で審査するのが基本で、提出者には補足説明を求めるのが、制度の趣旨である。何日もかけて準備してもらう必要はない。あの時(申し入れを受けた時と今回は話が繋がっていない。」

佐藤さん「意味が分からなんですけど。」

私は、一部始終を聞いて、圧倒的に佐藤さんに肩入れする。「四万十町の自然を守る会」が勉強会を重ねて懸命に積み重ねてきた知見や風力を止めたい思いを、果たして「手短に」説明できるものだろうか。佐藤さん達のような移住者が、この町に何を求めて移住してきたか、そこにある自然の希少性にいかに地元民が逆に,無知、無頓着か。ここは到底「手短に」で済む話ではない。その実感を語れる人から説明を受けるからこそ、政策提言に値するのじゃないかと、私は思う。古谷委員長、あなたの頭の中の回路こそが繋がっていないんですよ。失礼ながらそう断言せざるを得ません。事後的に確認したところでは、

9月9日の議会運営委員会で請願付託先が決定され、佐藤さんが古谷委員長から出席要請を受けたのが、前日の11日の午後5時だった。11日午前中の私との会話で、12日開催を知った佐藤さんは、その日のうちに議会事務局に何度も電話して、古谷委員長の意向確認をしている。そのたびに委員長から連絡はありませんかと言われ続けて、連絡を待ち続けたそうだ。待てども待てども連絡がないので、再度議会事務局に電話したら、やっと、事務局から古谷委員長に打診して、その結果を伝えますという事で、事務局から連絡があったのが、夕方5時だったとの事。佐藤さんが怒るのは無理もない。もうここまでで、四万十町議会が大藤風力春発電に対して、真摯に向きあっていないことが、十二分に分かる。が、その後の質疑応答部分で、町と議会の動向が透けて見えてきた。

 

 

請願紹介議員の武田秀義議員と村井真菜議員の説明、請願提出代表者佐藤さやさんの説明が済み、質疑応答が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風力発電と蠢く町政(5)

     地方創成と地域おこし協力隊


地域おこし協力隊と言う制度をご存知だろうか。総務省所管の事業で、財源は特別交付税、一人当たり年間450万円である。任期は1年ごとの更新、上限で3年間、採用された自治体の嘱託職員という身分である。勤務は月に16日、報酬額は月額166000万円であるが、住居は自治体借り上げ、勤務日以外は、副業もできる。卒業時には起業支援金100万円の交付もある。応募要件は、首都圏及び大都市圏在住者で、年齢は50歳まで。ただし、一定期間郷里を離れていたUターン希望者も応募できる。ところで協力隊の定着率は、現況で54%。これだけでも費用対効果が疑わしいが、おまけに役所で何をしているかと言えば、イベント手伝いや事務補助業務で、どう見ても協力隊自身のキャリア形成にはつながりそうもない感触である(ここは、あくまで四万十町の事情である)。彼らからは、都会の過酷な労働環境に疲弊して、地方の役場に3年間緊急避難してきたような印象さえ,少なからず受ける。まず彼らは、役所が設定する「ミッション」と呼ばれる業務に応募してくる。書類選考と面接で採用が、決定される。このミッションという呼び名からして、十二分に気恥ずかしいが、中身の大半は、漠然とした地域振興、活性化である。私は過去に、集落維持が目的の集落活動センターへの支援員や、専門職が皆無の町立図書館や美術家の学芸員をミッションとして提案してみたが、実現した試しはない。特別交付税450万円の使途として、ないものを補充すればよりましではないか、という単純明快な発想でもあり、地域振興、活性化という空虚さにする批判でもあった。この協力隊制度の主旨は、地方への移住定住である。「首都圏から若者人口を地方に誘導し、地方の集落維持や活性化を図り、地方を存続さす。」という大儀名分がある。結局これも、「地方創成」の一環である。その意味では、巨大風力発電設備は、地方の魅力(田舎であり、開発行為から免れ、それゆえ豊かな自然が残っている)を半減させるので、

〇Iターーン、Uターンの人達は来なくなり集落維持・存続の危機に陥ること

という指摘は、正鵠を得ている。けれども、理念踊れど現実は踊らず、である。協力隊の多くは、町の外郭団体や補助交付事業者に就職するのが、積の山であるし、補助金の切れ目が雇用の切れ目に往々にしてなっている。ある一人の協力隊の足取りを追ってみよう。この協力隊員は、補助交付事業者に就職した。ふるさと納税関連事業事業で、平たく言えば、官製インターネット通販事業の下請け業務に従事していた。卒業時にあぐり窪川の採用の内定も受けていたが、本人の意向で、地元民間事業者に就職した。数年後、そこを止めて一地元の首都圏に帰った。移住定住をあきらめたのかと、想像していた。無理もない。町の事業を取っている地元事業者達は、あの有名な四万十ドラマをはじめ、対外的な顔と対内的な顔を巧妙に使い分ける、名うての田舎起業家連中なのである。四万十ドラマの社長にいたっては、経済産業省主催の講演会の講師を依頼されたり、総務省の地域振興アドバイザーにも名を連ねている。もはや全国版有名人である。この有名人四万十ドラマの社長畔地履正氏は、最近、彼が代表を務める、NPO法人RIVER( 無論四万十川を指す)を通じて、著名人に川について語ってもらった、オムニバス形式の本を出版した。ライター名を見て驚いた。あの養老孟司南伸坊安藤桃子をはじめ、そうそうたる顔ぶれ、総勢32名である。町職員や県職員の人脈の及ぶ所ではない。原稿料は、四万十川の天然鮎とある。この本の価格は2200円である。相変わらずのあざとさである。若者が仕事がないので、流出するのである。そんな田舎で急成長が可能なのは、補助金ビジネスだけである。議員時代に補助事業全般を精査した。四万十ドラマは傑出して、補助件数と金額が大きかった。四万十町高知県経済産業省農林水産省及びその外郭団体と事業の所管が多岐に渡っているので、精査は並大抵ではなかった。到底、全貌を精査出来てはいないが、直近では、農林中金が出資する農林未来基金から1億円の交付金を得た事実は把握している。畦地氏は補助金ビジネスのプロであり、同時に東京の文化人の活用にも長けている。マスコミやSNSを通じた露出によって商機を見出すことに成功しているという意味では、時流に乗る、畦地氏の実力を認めざるをえない。が、補助金の適正な執行のあり方は、又別の話なので、それは別の機会に再び書きたい。協力隊に話を戻す。その協力隊は、首都圏帰還後、四万十町東京事務所に再就職した。高知県尾崎知事の産業振興、地産外商に右に倣えで、四万十町も東京事務所を開設、HPもリニューアルした。平成30年度の事である。このHPリニューアル事業の事業名は「シテイプロモーション事業」である。この命名も相当に気恥ずかしい。結局、東京コンプレックスが根強く、東京経由の目新しいコンセプトに対して、無抵抗になるのだ。この辺は殖民地根性のような有様だ。実に苦々しい思いがする。とにかく東京に弱い。東京事務所の業務は、フリーペーパー発行やSNS 上の発信を通じた、四万十町応援店(町産食材を扱う首都圏の飲食店)の開拓と聞いて、早速SNS上の投稿文を検索した。その中で、「仁井田米超上手い。四万十町に行きたくなりました。」と言うキャプションや、中尾博町長が開所式で、「ぱど」」社員の若い女性達に囲まれて脂下がっているがっているインスタグラム投稿を見て、唖然とした。「ぱど」さん、まずは、社員に国語教育を施すべきじゃないのか。それに中尾町長の風情の醜悪さ、慄然とした。そもそも我々の税がこのような、泡のような業務に費やされていいのか。それはそうと、この協力隊の足取りから、再確認できたことは、やはり、過疎地で跋扈するのは補助金ビジネスであり、その補助金ビジネスを通じて、過疎地に中央から降りてきた補助金は、着実に中央に還流しているという事である。以下を見てもらいたい。これは直近の数字であり、単年度の委託料である。

高知県中山間地域対策課、地域人材確保連携事業委託料、2,928,000円、委託先:株式会社ぱど

令和元年度事業、継続は未定、県外で地域おこし協力隊をセミナー開催を通じて募集

又県内では、集落支援員(地域の課題の把握と課題解決)を募集する事業

移住定促進・人材確保センター.首都圏コミュニテイ活性化事業委託料、8,532,000円、委託先:株式会社ぱど

令和元年度事業、事業継続は未定、首都圏で高知県出身者のコミュニテイを構築し、Uターンに繋げる。具体的にはHPの作成

四万十町賑わい創出課、移住定住促進プロモーション事業委託料8,140,000円、委託先:株式会社ぱど

平成30年度事業開始、令和2年度事業終了、四万十町応援店の開拓、東京での商談会開催の委託、四万十出身者のコミュニテイ構築

おまけに「ぱど」は、自社の社員を四万十町賑わい創出課に1名出向させている。この出向者に対して、四万十町は、あぐり窪川JAlに営業部長の給与を振り込んでいるように、ぱどに給与を振り込んでいることだろう。

以上の事業は、全て公募型プロポーザルという方式で、受託者を決定している。審査に当たるのは、通常公務員である。又、応募者は全て東京に本社がある企業である。県内企業を排除している訳ではない。結果が偶々そうなった(移住定促進・人材確保センター職員)。

元協力隊は、東京、高知県を往来しつつ、「首都圏コミュニテイ活性化事業」(高知県出身者のコミュニテイを首都圏で構築するためのHPの作成)に従事しているらしい。首都圏に在住する高知県出身者にとってそのHP経由で得られる情報が、Uターンのきっかけになるのだろうか、疑わしい。そこには、加工食品さながらの過剰な加工が施されるはずである。目的のある情報とはもともとそうしたものである。一説によれば、ネット空間には、エコチェインバ―効果というものが存在し、同じ意見の者同士のSNS上のコミュニテイは炎上し易く、議論が先鋭化する傾向にあるという事である。補助事業を巡る、役所間、相互参照的エコチェインバ―効果が感知される。利害が一致している関係機関(内閣府高知県、市町村、補助事業の受託者)、社会通念的な表現では、「お世話になっている間同志」に対外的な振興策や活性化策が抜本的に可能なのか。受託者の委託者に対する安易な迎合がないか。「仁井田米超上手い、四万十町に行きたくなりました。」あるいは「元四万十町協力隊の採用」等、事業の精査が必要である。

追記:私が、今まで協力隊から得た、最も有益な情報は,ある一人の女性隊員の言葉だった。埼玉から来たその女性隊員は、私に、こう言った。

「この町に来て初めて、野菜に旬があるという事を知りました。」

又別の協力隊時代はのリーダー格であった男性隊員は、プレゼンの場で、地域住民である聴衆に向かってこう言った。

「オーストラリア産とかアメリカ産ではなく、地元産の肉がごく普通にスーパで買えることの豊かさを痛感した。」

対面で、肉声を伴って聞いた言葉は、聞く側に伝える力を持っている。尤も、この町の食の豊かさを発見して、地元民に伝えてくれたこの協力隊員、結局地本人の地元に帰って、地元役場に再就職しました、というのが、今回のオチである。理由は明瞭だった。町のオートキャンプ場を運営する指定管理者である事業者に就職はしたものの、給与面で不満と不安があったようだ。その隊員には、妻と幼い子どもがいた。昇給や退職金が期待でき、将来やお、老後の生活設計が可能なのは、この国では目下、役所と大企業だけだということは、公然の事実である。やはり、根底にある問題は、移住、定住より、前にある、大枠の、「経済の低成長、人口の高齢化という条件下での、税制のあり方を通じた税の再配分のあり方が、若者や子育世代の将来設計が成り立ちにくい状態を作り出している。」という事に帰着するのではないか、と思う。つまり、政策の問題ではなく、政治の問題だという事である。その意味では、本質的な問題から目をそらし続けたまま、協力隊制度を創設し、原資に「特別交付税」を充当した、政権中枢の無策の罪は重い。

交付税地方譲与税特別会計によれば、歳出の4割以上が、国際整理特別会計への繰り入れとなっている。財政赤字国債の発行で埋め合わされていることも公然の事実である。国債の発行とは将来世代への債務を意味する。

 

四万十町議会議員  西原真衣

 

 

 

 

風力発電と蠢く町政(6)

      

   方法書の著作権には情報公開開示請求で対抗

オリックス社の方法書の中で、工事に伴って排出される土砂の処理方法の記載部分と、2026年運転開始、2046年運転終了後の風車の撤去方法についての記載部分を開示請求した。土砂災害を懸念する、建築に詳しい知人からの要請があったからだ。担当課は、事前にオリックに打診して、オリクス側に異議がなかったので開示に踏み切ったという事である。開示請求書と開示された文書を公開する。

 

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一連の問い合わせ作業を通じて判明したのが、

オリックスは、著作権を設定している環境影響評価図書は、

〇自社のHPでは縦覧期間以外は公表しない。

〇関係行政機関のHPでの公表は、断る。

〇担当課には、なるべく地域住民に見せないようお願いする。

〇開示請求があれば、あきらめて、異議を唱えない。

という手法であるという事だ。ここで「お願い」が最も気になる所である。話法として、「情報が切り取られて独り歩きをする。」という、どこかで聞いたようなことを連綿と述べたらしい(四万十町企画課長山本氏)。まるで風評被害を受ける側のような言い分である。多岐に渡る行政庁の許可が必要とされている開発行為なのである。切り取られて、誇張され、歪められたた情報を訂正するのもまた、開発行為を行う事業者に課せられた社会的責務なのではないのか、と私は思う。考えの基本が甘くないか。それに、かような稚拙な話法にそのまま乗せられてしまっている担当課課長の姿も、ここで再度浮かび上がってくる。この課長は、最初、四万十町に送付された配慮書や方法書を、「公表できるものはありません。」と当初、私に対して言い切っていた。環境影響評価法と情報公開条例を丹念に読めば、そんなことは言えなくなるはずである。なぜなら、環境影響評価法6条で、事業者が作成した環境影響評価図書の都道府県と関係市町村への送付が義務付けられており、7条で、公告及び縦覧、住民説明会が事業者に義務付けられている。更に、情報公開条例上、開示請求対象公文書の定義は、「職員が職務上、入手、作成し、組織的に用いるもの」なので、オリックス社から四万十町に送付された方法書は、開示対象公文書に該当し、たとえ、それに作成者の著作権が設定されていようと、条例の規定に基づき開示、部分開示、非開示を決定しなければならない。非開示にしたくとも、ここでまさか、「企業の競争上の正当な地位を脅かす怖れがある」とか、「関係機関の意思決定の中立性を損なう怖れがある」とか「現在及び将来の行政の円滑な運営に支障をきたす怖れがある。」を根拠にはできないであろう。そもそも著作権とは、企業の競争上の正当な地位に関わるものであるのは、明らかなので、この条項の適用に当たっては、「正当な地位」が、ここでは、環境影響評価法の趣旨に照らして、具体的、客観的に担保されなくてはならないはずである。このように、必要最低限、法律と条例を読めば、決して「事業者が公表してくれるなと言っているので、公表できるものはありません。」発言は出てこないはずである。ところが、十分読んでいないのである。若しくは、読んでいても、理解していないのである。私が、町役場の課長に法律と条例の基礎的読解力を求めて止まないのは、このような実態があるからである。議員時代も、私の質疑に答えないという現象が、本会議で多々起きた。「答えがないなら答えなくてもよい。」という、実に安直で、その場しのぎの議事整理をしたのは、酒井祥成議長である。「答えがない。」は、答えの一種である。その視点がない、考えたことがない、という「答え」である。「その視点についての答えがない。」という事実を確定するのが議長の仕事のはずである。従って「答えがない。」を明瞭に露見さすべきである。議会を、行政側に立って、自己完結させてはいけない。それでは議会とは言えなくなる。が、そこまで議長の意識が届いていない。ここで、ブレグジットの紛糾が続くイギリス議会をTVで見ていてハタと気が付いた。誰も原稿を読んでいないし、居眠りをしていない。全員が長椅子に座り、質疑に意識を集中させている。口角泡を飛ばしながらの舌戦が続く。非常に精力的であり、かつ長丁場に耐えようとする気概が感じ取られる。首相のボリス・ジョンソンが離脱に反対する議会勢力を封じ込める目的で議会閉鎖した時も、早速違憲訴訟が提訴され、最高裁は、違憲を認め、議会が再開された。このスピード感、リアル感は、正に、我々、普通の日本人からすれば、議会制民主主義及び三権分立が機能している感である。機能している議会では、男性議員は、通常のスーツ姿だが、女性議員達は、ワンピースにジャケットと、服装も簡素である。翻って、日本の国会議員の女性達は、妙にけばけばしいスーツ姿が目立つ。特に高市早苗総務大臣のけばけばしさが際立っているし、「放送法4条の発動も辞さない。」発言のおどろおどろしさや、自民等右派の寵愛を受けているという、「LGBTは生産性がない。」発言の杉田水脈議員が野次る姿の品のなさを目にする際にわいてくるのは、日本の国会が、イギリス議会との比較だけでも、グローバル水準からは、隔絶しているという実感である。むしろ、進化から取り残された、ガラパゴス諸島の生物みたいなグロテスクな政治家たちが、イグアナ風に睨みを聞かせて、我が物顔で跋扈している異様な空間、と形容したい。グローバル人材の育成を唱えて、小学校の英語を教科化したのは文部科学省であるが、その文部科学省は、加計学園問題で国会であれだけ追及されて、果たして事態の本質の究明に協力したか、否である。因みに、今回、非開示理由として想定して、列挙した「企業の競争上の正当な地位を脅かす怖れがある」とか、「関係機関の意思決定の中立性を損なう怖れがある」とか「現在及び将来の行政の円滑な運営に支障をきたす怖れがある。」は、最近、報道された、愛媛県が、加計学園関連で今治市補助金を出した時の、開示請求に対する、「黒塗り忘れ」謝罪事件の後始末目的の部分開示の理由でもある。これは、今治市民ネットワーク共同代表の村上治氏の執念の開示請求が明るみに出した。ネット上で公開されてるので、ここに転載する。

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愛媛県は、文書開示請求者村上氏に対して最初は、全部開示通知を出していたので、これは、決して「黒塗り忘れ」などではない。だから、部分開示と部分開示理由は、事後処理目的のつじつま合わせである。前川喜平氏の言う通りであり、行政が今後に及んで、一般市民に対して歪められ続けている。行政がここまで私物化されているのである。それも無意識化で。それが、報道された、愛媛県地域政策課の謝罪時の言葉に表れている。「関係機関に迷惑をかけて申し訳ない。」の謝罪の弁は、補助金の原資を徴収されている、我々国民は、関係者ではないと言っているに等しい。そして、愛媛県職員は、そのことに気付いていない。四万十町企画課課長の「公表できるものはありません。」発言と同様の思考回路である。加計学園文部科学省も、森友学園の近畿財務局も首相官邸に迷惑をかけてはならない一心で動き、その忠誠心が、官僚組織の自己保存をも完結させたのだろう。その間、密かに脱ぎ捨てられ、放棄されたのが、「説明責任」とか「知る権利」と呼ばれる、ついぞ関係者にはなり得ない、我々不特定多数の国民のたゆまぬ努力によって支えられるしかない、民主主義を成立させるための、政治理念であり、政治倫理である。主権者は我々である。主権者には、知ろうとする意志と努力が求められるのではないか。今治市民ネットに感謝したい。彼らは私物化からは無縁である。

四万十町議会議員 西原真衣

 

風力発電と蠢く町政(14)

       総務常任委員会風力視察

先週は、四万十町議会総務常任委員会が、愛媛県宇和島市愛南町風力発電事業の視察を行ったとの情報が入ってきた。午前中は、宇和島市で、宇和島市議会と市の担当課が、総務常任委員会一行を迎え、意見交換会と風車立地の見学をしたらしい。午後は、愛南町で同様の、との予定ではあったが実際は、視察の事前申し入れ時点で裁判が係争中であることを理由に、愛南町議会及び愛南町担当課は、視察を受け入れられない旨伝えて来たとの事である。そこで、総務常任委員会委員長古谷幹夫議員の計らいで、四万十町ふるさとの自然を守る会に参画し、この会からの、大藤風力発電事業計画の中止を求める請願書の紹介議員でもあった村井真菜議員に声が掛かり、四国風車ネットの代表である黒田氏、風車直下で暮らす町民(元愛南町議会議員)、村井議員と交友のある個人的に参加した愛南町女性議会議員という顔ぶれとの意見交換会と風車の見学会が持たれたという事であった。それで、午後の愛南町での交流の場にのみ、村井議員本人も参加した模様だ。風車視察の動きを最初に知ったのは、村井議員本人のフェイスブック投稿によるのだが、以上の事実関係は、別途、視察に同行した四万十町議会事務局長谷部氏に確認した。村井議員の発信内容では、愛南町では裁判係争中のため、公式な議員視察が受け入れ不可能であったことが事の発端であることも含め、総務常任委員会の視察に教育民生委員会の委員である村井議員が参加した理由、つまり経緯が全く判然としなかった。いずれにしても、長谷部事務局長によれば、愛南町で風車から1.1kmの距離に居住している町民(元愛南町議会議員)の方からは、風車が回っている時には騒音が気にはなるが、家の中では気にならない、風車から出る低周波音と健康被害については、因果関係が立証されていない等の認識が示されたという事である。また四国風車ネットの黒田氏は、風力発電に関する一般的な知見について発言し、個人的に参加した愛南町女性議会議員は、全く発言はなかったらしい。これでは、村井議員が手配した人的交流によって、総務常任委員会が有益な知見を得られたのかどうかは、かなり疑わしい。まず、地元四万十町風力発電事業中止の請願紹介議員である村井議員としては、愛南町が裁判係争中という理由で四万十町議会総務常任委員会を受け入れなかったという件は、まずは自身のSNS上で、しっかり発信してもらいたかった所ではある。この愛南町を相手取った裁判に関しては、9月7日に、四万十町庁舎にて、四万十ふるさとの自然を守る会主宰で催された勉強会においても、四国風車ネットのメンバーから報告されていたと記憶している。原告側の弁護士の市川守氏の講演もあったし、そこでも保安林の解除の差し止めと言う手法を使っているとか、風車から出る低周波健康被害については、睡眠障害を主軸に訴えているというような内容の講演であったと記憶している。愛媛新聞ネット版で確認したところ、やはり、愛南町僧都地区に建設予定の風力発電事業の立地にある保安林の解除が土砂災害を招くとして、保安林解除の権限を持つ林野庁愛媛県を相手取って提起された、反対派住民による保安林解除の差し止め請求として報道されていた。そしてその請求に対して、林野庁愛媛県が請求の棄却を求めている、とも報じられていた。ここまでの情報で、つまり四万十町議会総務常任委員会の風車視察の動きから、愛媛県愛南町という隣県の風力発電事業計画地では反対派住民による裁判が提起されているという事実が伝授され、又愛南町での行政や議員以外の一般人との意見交換からも、大規模風力発電事業が投げかける様々な課題が浮かび上がってくる。それにしても、私には素朴な疑問がある。今回の視察の一行は、総務常任委員会であり、古谷幹夫議員、堀本伸一議員、水間淳一議員、田辺哲夫議員、吉村アツコ議員という構成である。意見交換会の参加者の一人、四国風車ネット代表の黒田氏は9月7日の勉強会で講演していたし、その勉強会に、古谷幹夫議員、水間淳一議員、田辺哲夫議員は参加していたのである。それでまた、わざわざ公費を使って視察に行って、四国風風車ネットの黒田氏に会っているのである。風車を見学し、又風車直下で暮らす人にも会ったことに意味がないとは言わないが、そもそも総務常任委員会は、風車だけを視察したわけではない。その前日までは島根県岡山県を回って、公共交通の視察が行われていた。全て事務局長と担当課職員が同行している。私も総務常任委員会委員の時に公共交通の県外視察があった。確か、石川県と兵庫県ではなかったか、当時の委員長は、堀本伸一議員である。今再び、総務常任委員会委員として公共交通視察に参加している堀本伸一議員、あの時の公共交通視察内容は、今の総務常任委員会委員長に引き継がれたのか、私は、引き継がれてはいないと思う。議員視察の報告書は、A4一枚であり、従来公表されないままで来たし(今やっと委員会報告書が議会HP掲載されるようにはなったが、改選以降のみである。)、視察先で各議員に配布された資料は、議会図書室に保管されるでもなく、持ち帰った各議員の家でいつの間にか紛失状態と言うのが落ちであった。このような現状を横目で見てきた以上、私は、議員視察は限りなく、税金の無駄遣いに近いと思っている。それよ何より、一刻も早く為すべきは、議事録作成速度を上げて、全ての議事録をHPに掲載するという事ではないか。議事録とは公共財産である。だから議事録閲覧に、情報公開の開示請求が必要である現状は極めてよろしくない。議会を見える可すると公約した下元上昇議長、速やかに、まず委員会議事録や視察の委員秋報告書を速やかに議会HPに上げるべきではないか。でないと、勉強会参加議員が、勉強会で講演した同一人物に会い、同じ話を聞きに、公費で赴くという無駄さえ発覚しないままである。結果的に議員の不勉強と怠慢が、野放しとなる。行政も議会も機能と効率を求めるなら、「見える可」しか道はない。冷蔵庫の中だって「見える可」されていなければ、必ず、食材も総菜も腐らして無駄になって不経済極まりない。これは実証済みである。税負担を結果的に「食えないもの」にして、いいのか。

 ところで、模型を作った知人から、風車の搬送路の拡幅は、事業者負担かどうか確認してくれと依頼を受けた。あと、模型上に、風車立地予定地の町有地(町有林)をプロットしたいので、町に図面でそれが確認できるものがないか、探してくれとも依頼された。以下が、四万十町担当課対応である。

企画課課長山本康夫:方法書を見れば、町道は分かるので、一般的な地図上で示す。町有地地番が分かるので、地番を出せる。(方法書を見せるとは言わない。)

建設課課吉岡範満:搬送路に町道が含まれていれば、まずが事業者(オリックス)と協議の上、最終的には町長の政策的判断で、町負担で町道の拡幅工事をすることもあり得る。オリックスから協議の申し出は、現状ではない。

林業振興室長多賀啓一:作業道は開設時には定額補助が町から出るが、残りは事業者負担である。風車の搬送目的であれば、作業道の拡幅工事費用は、当然事業者負担と認識する。町有地の地番が分かれば、立地予定の山の町有林部分その中の保安林も併せて地図上でプロットできる。作成し、交付する。

知人はとにかく探究心が強い。まずは、探究心が強くなければ模型なんか作れないだろう。知人は、とにかく模型を完成させて、オリックス側の言説の真偽を究めたいようである。稀に見る実証精神である。私としては、その意味でも知人に協力したい気持ちにはなる。その知人はもう一つ、文化的景観検討委員会の動向を注視している。模型完成によって、どこからどう風車が見えるかが、可視化されるという。楽しみである。それで、直近で開催された文化的景観検討委員会の審議結果を問い合わせた。オリックス側が同席していたようであった。

生涯学習課副課長味元伸次郎:重要文化的景観検討委員会の座長は福山大学客員教授中越信和氏である。重要文化的景観検討委員会審議結果は、一の又風景林中の重要文化景観の構成要素の構成要素部分に、風車の設置個所が2基入っていた。その事は県からも指摘され、その2基は、別の個所に移動するとオリックス側が意向を示した。それ以外の風車群は、重要文化的景観構成要素である山の第一稜線にはかかっていない。座長からは、最終的に、沈下橋等の観光地点から風車が見えないように配慮するようにとの意見が示された。オリックス社側は、これから実施する住民説明会での意見も聞いて、風車の位置を最終的に決めるとの意向を示した。

村井議員はファイスブック投稿の中で、オリックス社に対する町有地賃貸借の証明書(同意書のことか)の提出の中止と、町民対象の勉強会の開催を、町に対して提唱していた。そこで、私は、9月定例会で大藤風力医発電事業計画について、反対の立場で質疑した武田秀義議員、村井真菜議員、岩井優之介議員3名に対して、以下の内容の文章を送付した。

大藤風力発電事業計画に関して、9月定例会で反対の立場で、一般質問した~議員に、私が、今までに企画課山本課長を通じて確認していることを伝達します。

11月末に提出予定だと、町長答弁があったオリックス社への町有地有償貸借同意書は、

1.オリックス側が文章の原案を町に対して提示してきているという事(メールで)

2.町側の同意の意志が将来的に拘束されるものではないと同意書内に明記する用意があるという事(山本課長は、議会答弁でも拘束されないと明言した)

3.文書最終原案が完成したら、議会からの要請があれば、議会に対して開示する用意があるという事

村井さんが、町が同意書提出を断念し、町民勉強会の開催を重ねることを提言しているようですが、最も手っ取り早く又確実な方法は、議会が自ら特別調査委員会を立ち上げて公開の場で、町やオリックス側を呼んで、説明させることです。議会は町民代表ですので、公開の場でやればそれがそのまま、町民勉強会になります。これは議会でないとできない事です。本会議場を使い、ケーブルで放映すればどうですか。これこそ「議会の見える可」の真骨頂です。議会とは、私の考えでは、物事を明らかにして、明らかにすることによって、より良い方向性を見出すために存在しています。町側にお願いしたり、希望的観測を述べていても、議員個人のスタンスが見えるだけで、中々事態は進展しません。議会は議会に法的に付与された権能をフルに発揮(特別調査委員会立ち上げ)してこそ議会です。特別調査委員会の立ち上げには、議会の議決が必要です。臨時議会を招集すれば可能です。反対の立場を公にしている~議員には、議会内部でそのように働きかけてくれることを期待します。

四万十町議会西原真衣

更に、町側が言う、町有地貸借の同意書なるものに対して、資源エネルギー庁に対して問い合わせた。以下が回答である。

資源エネルギー庁新エネルギー課:第一種風力発電事業の固定格買い取り申請時には、土地の確保を証明する書類の提出が要請される。具体的には以下。

土地売買契約書、土貸貸借契約書、地上権設定契約書のいずれか、これは、停止条件付でも可。停止条件設定は契約当事者間の協議による。一例として、申請の認可が下りなかった場合に契約を停止する、とかである。停止条件の契約上の有効性については、本質的に資源エネルギー庁は関知しない。弁護士の管轄である。前期の契約書の他に、土地の登記簿、全部事項証明書が必要である。

 

因みに企画課山本康夫課長は、契約書ではなく、同意書であると強調していたが、不自然と見るか、無知と見るか。資源エネルギー庁の言う通り、実質は契約書である。又先述の、模型上に町有地と町道をプロットするための図面を入手するに当たって、企画課に送付された環境影響評価方法書を、税務課と林業振興室に渡すのを山本企画課課長は非常に逡巡した。結局、税務課に持ってきたが、電話では、見に来るようにと、最初は問いあわせた税務課職員に対して言ったらしい。その時私は税務課で、町有地の地籍図を見ようとして、税務課職員に相談中であった。とにかく、大規模風力発電事業の環境影響を受ける立場である町民の環境影響評価実証研究に資する資料を提供する目的で、環境影響評価法において関係行政機関に送付すると規定されている方法書を関係行政機関内で共有することに何の問題があるのか。それ程の逡巡を見せた山本企画課課長、町民に対して、法に基づいて論理的に説明してもらいたい。公僕であるならば。

 

四万十町議会議員  西原真衣

 

 

 

風力発電と蠢く町政(15)

    中尾博憲町長の意志が見えない 

四万十町オリックス社からの依頼を受けて、オリックス社に向けて発行予定の土地貸借同意書についての取り扱いが、目下最重要事項ではないか、と考える。企画課山本課長は、私に対して、契約書では同意書であり、賃貸料の提示は含まない、と言い切った。資源エネルギー庁が、最終的に賃貸契約書を求めている以上、同意書は、契約書への布石になり得る。大規模風力発電事業によって環境影響を受ける四万十町民にとって最も重要なのは、大藤風力発電事業計画に対する町の意志である。従って同意書が町の意志表明上、どのような意味を持つのかを町民に対して詳らかにしなくてはならないはずである。そして、それを町にさせるのは、議会を置いて他にない。それにもかかわらず、現時点までで既に、町側の無償貸借ではない同意書の提出意志を理由に、下元昇議長が総務常任委員会の場で「議決事項でないので特別調査委員会は立ち上げない。」と明言したり、中尾町長が本会議の場において、「特別調査委員会とかではなく、議員を交えた、利害関係者の懇談会を開催する用意がある。」と発言している。これは、町が議会を巻き込んで、町の意志を町民に対して詳らかにしようとする意志を欠いていることの、紛れもない現れではないか。町と議会の本来の責務がここで、既に放棄されている。私は先日、大藤風力発電事業計画に反対を公言している岩井雄之助議員、村井真菜議員、武田秀義議員に対して特別調査委員会を立ち上げるよう文書で依頼した。が、今の所、誰からも応答はない。恐らく応答がないことが、応答であると推測している。議会本会議という議員の仕事のハイライト部分で反対意見を公言した3名の議員から、特別調査委員会立ち上げ依頼への応答がない。つまり返事がない。この事実は、四万十町民にとって、22%引き上げられた議員報酬によって、町民が従来に増して感知できるはずの「議員の働き」を測る際には、抑えておくべき事ではないかと思う。

 私見では、議員の仕事とは、年4回の定例会で、一般質問(事前に要通告、一人1時間の時間制限あり)と呼ばれている、ある種の作文発表会に参加する事ではない。議会は、演舞場ではない。質問通告があれば当然、答弁する側も答えを準備できる。国会と同様、町議会においても質問取りと呼ばれる、答弁者が通告者本人に質問通告の意図を詳しく聞き出す、開会前の事前作業がある。この事前作業は、通告質問内容の担当課長によって通常行われる。私も何度か経験したし、質問取りを打診されて拒否したことはない。議会はあくまで、公開の場である本番、本会議が全てである。しかし、質問者にとってより的を得た答弁を引き出す目的での、事前の質問取りには一定の意義がある。狙い通りの答弁を引き出すためには、まず答弁者に質問の意図を正確に理解させる必要があることは、言うまでもない。ただしそれは、質問者の質問の意図の明確さ、言い換えれば、質問者が何を明らかにしたいかに大きく依存している。だから、質問自体が明確な意図を欠く場合は、事前に質問と答弁をすり合わせて、一般質問を滑らかに運営する,言い換えれば、議員のパフォーマンスとプレゼンテーションの黒子として執行部答弁が機能しつつ、議会本来の機能(物事を明らかにすることによって、より良い方向性を見出す)を骨抜きにするために、この質問取りが利用されているという、質問取りのもう一つの顔がある。かくて、議会とは、デキレースが性懲りもなく展開される議員集団と執行集団の共存共栄の場にもなるということである。このデキレースの裏舞台は通常非公式の場である。先日、用ありで議会事務局に行った。議長室(非常に立派な、まるで企業の重役室のような構え、議長机と副議長机があり、各机にはPCが設置されている。が、執務しているのは残念ながら見たことがない。)で、議長(下元昇)、副議長(緒方正綱)、議会運営委員長(酒井吉祥成功)議会事務局長(長谷部卓也)が打ち合わせ中であった。何の打ち合わせかは不明である。用と言うのは、岸本氏と私が連名で出した公開質問状への対応について確認することであった。6月に出した質問状に、まだ答えがないのである。委員会単位で回答を用意し、全員協議会で最終的に決済するという段取りだけ決まっているらしいが、回答が用意されつつある気配が全くない。おそらく膠着状態、別目棚上げ状態に陥っていると推測するので、当方としては、目下、質問を一点に絞り込むことを岸元氏に提案中である。質問の情報量が多すぎて、恐らく彼らのCPUがクラッシュしているのだ。それにそもそも、質問するより質問に答える方が、遥かに難易度が高い。事物への知識、理解度、全体的な見識が問われる。選挙時の応援演説と見栄えの良さであれほど名を馳せた小泉進次郎が、環境大臣に就任し、国連で記者インタビューを受けたり、国会で答弁に立った途端、立ち往生した事が、格好の実例ではないか。その意味でも、議会で注目すべきは、事前に通告できる一般質問ではなく、議案質疑である。ここでの執行部との応酬に、少なくとも一般質問より議員の実力が出る。議案質疑には決まりがある。一議案一人3回までで、尚且つ一括質問一括答弁という形式で質疑しなくてはならない。この形式は、まるで知られていないと思うので、簡単に解説する。まず議員の質問は、一般質問と議案質疑に二分される。一般質問は町政全般に渡って、議案と関係ないことでも自由に設問を設定できる。議案質疑は、執行部が上程した一数々の議案に対して,一議案につき一人3回まで質疑できる。ただし、1回目の質問で質疑内容すべてを提示しなくてはならないのだ。分かりにくいと思う。ある議員が、質問A、質問B、質問Cを聞くと、執行部が答えA、答えB、答えCと答えていくのである。これが三回繰り返されるというわけである。二回目以降に、質問Dは追加できないという不便さもさることながら、この形式で、質問A、質問B、質問Cが結局どうなったのか、傍聴者はおろか質問する側も、正確に論点を追えるだろうか。答えは否である。そしてこのような会議規則を持っているのは日本だけなのである。実にバカバかしくないか。質問とは論点を明らかにしてこそ意味がある。ところが、このバカバカしさから恩恵を受けているのは、答える側ではなくて、質問する側なのである。明らかになりにくい論点は、質疑能力の可否を覆い隠してくれる。怠けていたい、若しくは質疑能力に自信がない議員にとっては極めて好都合な会議規則であるとも言える。だからこそ、このある意味都合のいい会議規則を変えようという動きは、議会内部からは出てきた試しがない。実はこの奇妙な、日本特有の質疑形式は、敗戦後にGHQが、自国の民俗学種ルースベネデイクト(「菊と刀」で有名)で日本人特有の民族性を研究させた結果導入された質問形式であるということである.私は、このことを全国の町村議会の会議規則の雛形を作成している、「全国町村議会議長会」経由で知った。この事実は、私にとって衝撃的であった。物ごとが明らかになりにくい質問形式が日本人の民族性などと、殖民地政策が、まんまと続いているのか、である。そしてそれは,中央集権にとっても都合がいいはずである。これはこちらにも責任がある。「依らしむべし、知らしむべからず」で統治されてきた我々のDNAがそれを本能的に受け入れたとも言えるからである。事態は単純ではない。歴史的に形成された何か、であるからだ。されど、この質問形式の害は否めず、議会が機能不全化していることの大きな要因の一つである。

 ここで、高知県議会に目を転じてみる。四万十町議会はケーブル放映されている。高知県議会もケーブル放映されている。多くの人にとって、高知県議会はもっと更に分かりにくいとの印象があるのではないか。私自身には、大いにある。そこで、ある時高知県議会事務局に質問形式に関する会議規則を聞いてみた。聞いてみて初めて、分かりにくく、デキレースにしか見えない理由が判明した。何と県議会は、一般質問だけでなく、議案質疑も全て事前通告しているとのこと、さらに一人の議員が、持ち時間の中で、一般質問と議案質疑を抱き合わせて一挙にやる方式であるとのことであった。どおりで、答える側がもれなく延々と目線を下に原稿を読んでいるし、全体として臨場感が極度になく、従って以外な展開等毛頭なく、従って全く面白くなく興味を引かれないはずであると、ひとしきり思った。この全く芸のない高知県議会、高知県予算書によれば、議員数36名で議員歳費(議員の給与と賞与と政務調査費の合計額)は、有に10億円を超えているのである。方や、県議会の議会図書室の資料購入費は年間300万円相当である。私自身の体験から言えば、議会図書室に中央政府が発行する白書及び官報全てと数多の県政資料を据え置き、それらに目を通し、後は担当職員から聞くだけで、精緻で実効性のある質問は用意できる。それをやり切れば、政務調査や議員視察(海外も含む)は不要になるのではないか。高知県議会の議員視察と言えば、高知県議会の体質を物語る、ある個人的体験談もある。当時議員であった私の所に、一枚のファクスが届いた。内容を一読した限りでは、四万十町仁井田の水利組合代表者名で、組合員に配布した文章のようであった。ファックス受信直後に電話が鳴り、「水利組合員である親戚の人間から依頼を受け、私に対して、仁井田にある山の斜面に設置されたメガソーラーから水路に流れ込む土砂被害についての説明会があるので、聞きに行って欲しい。」と依頼された。私はその気になったので、翌朝、話し合いを見学してもいいか許可を得ようと考え、水利組合代表者に電話した。そこで初めて、高知県議会農林水産商工委員会が赴くので、地元住民を集めてくれと依頼されたと聞いた。まだ、ここまででは詳細は分からない。そこで高知県議会事務局に聞いた。そこでやっと、高知県議会農林水産商工委員会による視察(現地設備の見学と地元水路土砂被害に関する事業者と地域住民ヒアリング)であることが判明した。その時返す返す思ったのは、一般の人は、高知県議会の委員会視察と言われてもピンとこないし、それを理解してはいないという事であった。そこで私は、議会事務局を通じて、県議会農林水産商工委員会の委員長に対して、地元水利組合会員である住民から間接的に依頼を受けた地元議員である私のヒアリングの見学許可を打診してもらった。四万十町内に設置されている太陽光設備の事業者と地域住民ヒアリングであるので、高知県議会と四万十町議会の共通の課題であると言えるし、地元議員がヒアリングを見学することに、特に問題があるとも思えなかった。が、農林水産商工委員会委員長は、私の見学を許可しなかったのである。委員長ではなかったが、その委員会には、地元選出武石俊彦県議が所属していた。委員長判断であったので、武石県議がこの一件をどこまで知っているのかは分からない。ただ私は、この時の県議会の委員長判断に異議を覚えたので、同じ委員会に属する武石県議に、この一件に関する見解をメールで聞こうと思い立った。県議会事務局に武石県議のメールアドレス聞き出そうとしたが、「武石県議はメールアドレスを一般に公開していません。」と応答されたので、メールで聞くこともできなかったのである。私が、この時、メールアドレスを一般公開しない武石県議のスタンスに失望したのは言うまでもない。事後的に分かった事は、四万十町議会産業建設常任委員会には事前説明があり、四万十町建設課課長はヒアリングに出席していたという。県議会事務局からのメール内容によれば、ヒアリングには水組合代表者だけが出席依頼を受けたそうである。県議会農林水産商工委員会が、尾崎知事の意向を受けて、事業者と地域住民双方の意見聴取及び現地視察に乗り出したという事らしかった。会場の混乱を避けるため、出席を依頼したのは水利組合代表者一人であり、四万十建設課には出席依頼があり、四万十町議会産業建設常任委員会には出席依頼がなく、私などは問題外であったのだろう。しかし、このヒアリングは、紛れもなく、法的に付与された議会委員会の調査権の行使である。その議会特有の権限を行使する場が公開であっていけない訳はない。だから、見学の申し出を拒否する理由は本来ないはずである。その証拠に、四万十町議会が立ち上げた「西ノ川取水問題特別調査委員会」(現職である田辺哲夫議員の水道料金未払い疑惑事件)は全て公開の場で行われたではないか。この一件で、高知県議会が私に垣間見せた体質を、私なりに表現するとすれば、「知事を見上げ、県民に向きあわない。」である。都道府県知事は、終戦まで官選であったし、東大卒財務省出身の尾崎知事の威光に高知県議会は目を眩まされたのか、と思う。この体質に5期20年間浸ってきた武石俊彦県議が、次期四万十町長になった暁には、いかに町民に向き合い、いかに町民に対して説明責任を果たせるのかに、中尾町政以上に注視が必要だろう。

 

 

 

風力発電と蠢く町政(9)

 オリックス社「議会にご説明したい」と申し出る

先日四万十町議会議員の村井真菜氏のSNS上で、「今日は、午前中は、オリックス社の議員説明会で、午後からは、高知町村議会議長会の記念式典と講演会です。」という記記載を見た。オリックス社の議員説明会って何だ、と思い、岩井優の介議員に聞いてみた。オリックス社からの申し出で、議員が議員派遣(議長会記念式典出席、開催地高知市)のために参集する機会を捉えて、出発前に40分ほどの説明会があった、という事であった。中尾町長及び四万十町各課管理職も勢揃いの説明会であったそうだ。オリッス者は、3名が出席、プロジェクターを持ち込んでの説明、議員数名からの質疑もあったようだが、行政職からは、質疑が全くなかったそうだ。中尾町長、風車から出る健康被害上問題視されているのが、超低周波なのか、電磁波なのか、質問しなきゃ。それと、山本康夫企画課課長、二酸化炭素が排出されず、地球温暖化を促進しない再生可能エネルギーに、原発が入るかどうか、質問しなきゃ、中井四万十川対策室長、「意見公募で寄せられた意見の要約とそれらの意見に対する事業者見解」を町HPで掲載するよう要望が上がっている(町民から)旨、オリックスに伝えなきゃ、とこれだけ咄嗟に思ったが、そのような発意の発揮も行政側に全くないとは、それだけで「オリックスサイドからの非公式な議会対策目的の説明会に町が全面的に協力している。」としか解釈できない。このブログもアクセス解析によれば、「大藤風力発電から四万十町議会を見る。」辺りに、アクセスが集中しているので、概ね因果関係も成立する。

質疑の中身は、岩井氏によれば、

田辺哲夫議員:工事に伴って排出される土砂による土砂災害の危険性は。

オリックス側:.万全を尽くす(具体策には言及せず)。

村井真菜議員:20年後の風車の撤去は。

オリックス側:撤去はするが、20年経てば、風景に馴染む。

岩井優ノ介議員談:風車搬送路の画像を見て、議会での山本康夫企画課課長答弁「既存の林道を使用すると事業者が言っている。」に合致しない、新設の幅の広い道を目にしたので、もう一回見せてくれと言ったが、オリックス側が見せてくれなかった。他の議員から、時間がないとか、他の議員も質問したいからとか、制止された。

 説明会を申し入れて来たのが、オリックス側でありながら、岩井議員が「見たい」と言っているものを、説明者であるオリッスク側が、プロジェクターをプレイバックして見せようとしなかったことに対して、どこからも批判的な意見が出ていない。他の議員からも町側からもである。土砂災害対策として、設置工事に併用した貯水地の設置等あるはずであるが(勉強会で市川弁護士から学習)、それも、勉強会に出席していた田辺哲夫議員の追加質問に出てこない。村井議員の質問に対しても、「風車が風景に馴染む」とは撤去を急がない、しばし放置するの含意か、それにしてものうのうと。いずれにしても、オリックスが作成した方法書を精査した筋によれば、大正の希の川の橋から一の又の山頂までの林道を谷を埋めて拡幅して、ブレード片翼40mを搬送すると、読解できるそうだ。谷を埋める土は当然山から切り出す。谷にパイプを埋める等の丁寧な工事ならいいが、ただの埋め立てであれば、その後の土砂災害が当然危惧される。ここを追及されたくないから見せないのか。

 このような状況下、別筋によれば、昨日は町内ゴルフ場スカイベイで、武田秀義町義主催の町長杯ゴルフ大会が開催されたそうな。80人程度の参加があり、中尾町長始め、武石俊彦高知県議会議員や、地元土建事業者達で、賑わったらしい。武石県議に関しては、このゴルフイベントは、既に水面下では動いているらしい町長選への布石と見た。そう言えば、昨日、武石県議の県政事務所前を自転車で通りがかって気が付いたのは、今まで外に出していた「武石俊彦県政事務所」の看板が事務所内にしまわれていた事である。つまり、本格的に町政に軸足を移したと見える。おそらく自民党からの離党が拍車をかけたのだろう。しかし、武石県議は、中尾町政の一期目から、町長主催の住民座談会の席に必ず同席したり、四万十議会に武石県議が、講師として招かれたりがあった。あの頃は、次世代園芸と木質バイオマス事業、奥四万十博が目玉事業であった。高知県庁から担当課職員まで同行して、本会議場を使った、不自然にものものしい講演会であった。全体として、県政を浮揚させる重要施策が展開されている四万十町と鼓舞された様な記憶があるが、私としては、相当に違和感があったし、その時の配布資料が、尾崎知事の県議会での施政方針の写しであったので、当時高知県議会の議長として、尾崎知事のメッセンジャーを自認しているのかと、かなり白けた気持ちになったのを覚えている。そのような記憶を手繰り寄せつつ、次期町長選を見る時に、今から25年近く前に、武石県議が県会議員選に初出馬する時、当時の窪川町長前田哲夫氏と、同志社大学の先輩、後輩の間柄であったこともあって、昵懇であったことを覚えている(前田町長は、窪川町商工会青年部長武石俊彦氏を俊彦君、と呼んでいたので、関係性が想像できる。)が、確かに当時、商工会青年部長で、商工会青年部はかってない活気を見せ、「武石さんについていく。」と人望があった武石氏を自宅でミニ集会等開催し、それなり応援していた私が、「なぜいきなり県会議員選なのか、町長選や町議選と言う選択肢はないのか。」と聞けば、「あの雰囲気に染まりたくない。」と言った事が、25年の時を経て思い出される。

 結局政治家は、長くやればやるほど、つぶしが効かなくなり、適者生存の原則通り、政治家という特殊な専門職に進化していくのか。つぶしと言えば武石県議が主催する、自民党を離党するまで数年続いたという富士山登山のイベントには、森武士副町長の家族全員参加とか、川上哲夫教育長の姿もあったとか。安倍晋三首相のお友達政治の真似事かと、思ったが。昨今政治の世界は、政策論争より何より、気心と縁脈が、何より大事らしい。実に嫌な時代である。結局彼らも全員、自分の「つぶし」にからきし自信がないのだろう。ところで、町長杯の中尾町長、町長杯参集メンバーからすれば、議会答弁「経済的恩恵を受ける町民」って結局土建屋の事?、でも風車病の被害を受けるのも、損なわれた景観や、自然環境の被害を受けるのも町民なんだけど。それに、経済的恩恵は一過性で、被害のタイムスパンの長さや自然環境破壊の修復不能性位、比較の上で考慮できなきゃ、町長なんだから。知人が転送してくれた、twitter上の新聞記事が今年の3月から稼働している、高知県大月町の大洞山風力発電(グリーンインベストメント)の住民健康被害を伝えている。この新聞記事は残念なことに、地元紙、高知新聞の記事ではない。「長周新聞」と言う新聞である。ここに、転載させてもらうことにした。ご一読あれ。医学的因果関係の立証はなくても、報告が実在するのに、それを注視しないのは、信任に値する政治とは言えない、と私は思う。納税者が、最後に求めるのは、実にそこではないか。

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 元四万十町議会議員 西原真衣

 

 

 

 

風力発電と蠢く町政(10)

 風車病とは何か(超低周波音に起因する健康被害

 今回は、風車病について書いてみたい。風車病とは便宜的通称で、風力発電設備立地地でのみ報告される、近隣住民の身体に表れる不定愁訴の事らしい。頭痛や不眠が典型的症状で、風車から同じ距離にある家に居住する夫婦でも、片方が症状に悩み、片方は、全く無症状であったりするので、医学的因果関係の特定が非常に困難を極めているという。けれども、風車を離れれば、症状が漏れなく消失するということが、疫学的には立証されているので、一義的に「住民の生命と財産を守る」責務のある行政には、ここの事実をまずは、率直に認めることが要請されていると思う。大藤風力発電事業の申請事業者オリックス社は、意見公募で提出された、複数の四万十町民からの風車病への懸念に対して、

「騒音及び超低周波音」については、「風力発電装置から発生する騒音に関する指針」(平成29年5月環境省)を踏まえ、祭祀の知見に基づいた調査、風力発電機からのパワーレベル等の情報を基にした定量的な予測及び評価を実施し、その結果を踏まえ、環境影響をできる可能な限り回避又は極力低減できるような配置を含め、保全措置を検討してまいります。なお、低周波音の健康被害については、最新の環境省発表資料に置きましては、風力発電健康被害との因果関係は確認されておりませんが、超低周波から受ける影響については、個人差があり、未解明な部分も多いことから、国内外における最新の事例や、可能な限り最新の知見を参考にしながら、調査・予測及び評価を実施いたします。

と回答している。

「可能な限りの国内外の知見の収集に基づく健康被害の低減、回避努力、保全措置を講じる」と、回答しているが、この、低減、回避、保全措置は、すべての環境影響評価図書に現れる定型的、免罪的言い回しであり、あくまで事業者の努力意図の表明であり、結果責任に係るものではない。環境省が公式に示す、「風力発電装置から発生する騒音に関する指針」を基本的ガイドラインとして遵守するのが、事業者としての最大限の措置である。また同時に、「なお、低周波音の健康被害については、最新の環境省発表資料に置きましては、風力発電健康被害との因果関係は確認されておりませんが」と医学的因果関係に基づく,事業者の対被害者補償上の免責を再確認した上で、「超低周波から受ける影響については、個人差があり、未解明な部分も多いことから」と留保し、「国内外における最新の事例や、可能な限り最新の知見を参考にしながら、調査・予測及び評価を実施いたします。」と環境省の基準以上の誠意ある対応を示唆して締め括っている。この最後の、調査、予測、評価の評価書が、大月町HPで周知されていた。以下がそれである。

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「なお、閲覧期間以外での閲覧も可能ですが、協議が必要となるため申請から閲覧まで日数をいただくことがあります。」を文字通り読めば、申請すれば、閲覧可能であり、閲覧時期は、協議で決定と解釈できる。ところが、その旨電話で確認したところ、「協議結果による、閲覧を保障できるものではない。」とのことであった。結局、事業者は見せたくないのだし、役所はそれを忖度せざるを得ないという事か。それであれば、実に曖昧な、玉虫色の表現である。影の主役は、やはり著作権である。知人によれば、一昨日発効したTPPの知的財産権を巡る関係諸国間の取り決め内容と、この環境影響票評価と図書に設定できる著作権は関係しているらしいが、それであれば、グローバルな事業展開を目論む企業の利益が、国土の保全や国民の健康被害に優先することになるという価値観を政府が、自ら選択しているという事でしかない。最低限、図書を事前、事後に自由に閲覧できてこそ、環境影響評価に関する知見が蓄積されるのである。本気で環境影響評価を実施することと、この著作権の設定、どう考えても両立しない。時の政府の浅はかな選択に、高知県や大月町はどう対応しているのだろうか。因みに、高知県環境共生課は、9月9日に開催された、オリックス社の大藤風力発電事業の方法書について審議する高知県環境評価技術審査会の会議録をまだ県HPに掲載していない。大月町まちづくり推進課は、長周新聞の健康被害の記事を持っているが、健康被害を直に町役場に申し出ている地域住民は、一人だけであり、その人とは協議を重ねているとの事である。高知県職員に、議事録はタイムリーでなければ情報価値を失うと指摘しても、ピンときているようには見えなかった。とりあえず、高知県環境共生課は、議事録作成を急ぐ、大月町は、環境省の騒音基準で、最終的には判断せざるを得ない、と締め括った。私としては、実にすっきりしない。そんな中で、北海道大学大学院工学研究院に籍を置く、松井利仁教授の論文(長周新聞、2017年7月28日掲載)に出会って、頭の靄が晴れた。この論文を一読すれば、環境省の言っていることが極めて非科学的であることが、私のような素人でも十二分に理解できる。一言で言えば風車病の原因は、騒音でなく振動であるという事である。だから騒音基準を持ち出しても、物差し自体が間違っているということである。裏を返せば、これは環境省の故ある作為である。それに唯々諾々と従えるほど、我々は情報リテラシーが低くない。侮るなかれ、である。とりあえず、風車病に半信半疑の人は、是非「風車騒音の健康影響 北海道大学大学院工学研究院教授 松井利仁」を検索してもらいたい。頭がすっきりすること間違いないので、お勧めする。法律はなべてすっきりと、分かり易く、納得できるものであらまほしいが、通常その真逆である。けれども、所詮人間が作ったものである限り、ありとあらゆるシステムには、バグがある。バグにはパッチが当てられる。そうやってシステムが進化するように法律も進化し得る。法とは言語システムである。勿論、退化もし得る。人間が作ったものである以上,これは免れない。だから、法の合理性と合目的性は、運用の場において、常に検証され続けなくてはならないと思う。でなければ、我々は徐々に、法の正当性の名に置いて、管理され、統制され、支配され、自由と自律を失い続けるに違いないと直感するからだ。法は、政治家と官僚と、それらにぶら下がった財界の私物ではない。改めて、思い起こすべき、国民主権とは、それではないか。

四万十町議会議員  西原真衣