呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(7)

前にも書いたが、加計学園問題の本質は、直感的には安倍政権と加計孝太郎氏が共謀した、公金の不法な詐取である。が誰もそれを国会の場で明らかにできなかった。これは、既に議会制民主主義の崩壊を意味していないか。文書を出さない、証人喚問に応じない、公文書を改ざんする、官僚が官邸と口裏を合わせるでは、国政調査権を発動しようがない。崩壊している、と思う。基盤が崩壊した政権が運営する国家は、なおも、憲法改正によって、その屋台骨に穴があけられようとしている。一国の首相と腹心の友である人物が理事長を務める学校法人が、93億円の公金を不透明な経路で受け取れる国家とは、普通に考えて、白昼堂々と汚職行為が行われる腐敗国家ではないだろうか。後から知ったが、今治市民ネットワークが開示請求して出てきた、愛媛県文書が、国会議員の手に渡り、加計学園問題が、国会で質疑されたという経緯らしい。であれば、情報公開制度は、国会の国政調査権を実質しのぐ可能性を秘めた、国民の政治参画への有効な手段となるのではないかと思う。そして国会が愚弄されている以上、最後の自浄作用を司法の場に期待するしかない現状があるのではないか。今、今治市民ネットワーク代表の村上治氏がTwitterで、加計学園裁判記録を公開している。「今治加計獣医学を考える会」が提起した住民監査請求に基づく住民訴訟、「第8号学校法人に対する不当利得返還及び補助金差止請求事件」である。被告は、今治市長、菅良二である。原告準備書面に対する、今治市側の準備書面が裁判所に提出されている。それを見るに先立って、私は、10月6日、今治市愛媛県地域政策課に電話して、以下の問答をした。

私:あらゆる補助事業は、まず補助金を交付する側(国、県、市町村)が補助交付要綱を作成し、これを告示することから始まると認識しているのですが、そうじゃないんでしょうか。そうであれば、補助交付要綱はどのようにして見れますか。見たいんですけど。

今治市職員:担当者3名が全員出張してます。補助交付要綱は、HP等では公表していません。

愛媛県地域政策課:担当が電話中です。担当でないと分かりません。

愛媛県議会事務局:補助交付要綱は、議会事務局にはありません。財政が担当ではないかと思います。

注釈、10億円を今治市に補助した愛媛県議会は、補助交付要綱を審議参考資料と認識していない。そして、10億円の補助事業を議決した。

財政課:担当者がいません。担当は松木と言います。補助交付要綱は作成しています。告示については、把握がありません。

電話した時点で、私の念頭には、補助金には、法律補助と予算補助の二種類があること。そのうち予算補助事業においては、かって、明文化された補助交付要綱の作成に根拠法がなく、そのため、経費内訳や補助対象経費や,その審査過程が極めて不透明で、いわゆる族議員がはびこり、政、官、財の癒着の温床となっていたことへの批判から制定された経緯を持つ「補助金等の予算の適正な執行に関する法律」に基づき、補助交付要綱の作成と告示が、官公庁において定式化されるようになったことへの認識があった。これは非常に重要な点である。例えばであるが、教員給与の半額国庫負担義務は法律補助であり、これについては、法改正がなけれが削減できない。職員給与は、条例に基づき支給されているので、条例改正、つまり議会の議決で削減できる。議決権の及ぶ範疇に関わる事であるので、だからこそこの区分の認識は非常に重要なのである。予算計上されるほとんどの事業は予算補助事業なので、補助交付要綱の内容が補助事業の目的、補助交付対象経費と経費毎の補助率を規定する。従って、この補助交付要綱に基づいて、補助事業者(この場合は加計学園側)から行政側に提出された実績報告内容を精査し、経費毎の精査、積算で補助金総額が最終決定されるのである。従って、行政の監視機関である議会における補助事業の精査は、まず補助交付要綱と実績報告の精査抜きには成立しない。私は、議員の時に,単独でその作業を蓄積していたので、四万十町においては、一時期四万十ドラマへの補助額が他を制していたばかりではなく、補助交付要綱作成時からの係り、さらにそれ以上の補助事業そのものの提案が四万十ドラマによって行政に対して為されていたのも、ある程度把握していたのだ。国政においては、首相となじみの人物が、補助事業の提案を首相に持ち掛けるのと同様の構図である。因みに高知県四万十町は、補助交付要綱を、一般的な告示(役場前の掲示板に貼る)以外にも、町のHPの例規集に織り込んで公表している。この判断は、正解である。補助交付要綱とは、補助事業の目的、補助対象経費、補助率、補助事業者の実績報告義務、交付側の検査権限と補助事業者の規定違反とその罰則(補助金差し止めや返還)が必ず書き込まれている。従ってすべての予算補助事業の罰則付き実施要領となっている。正しく適正な補助金等の予算の執行を唯一担保する規定であるので、例規集に入れるのは正解である。ところが、ところが、である。あの国会を紛糾させた加計学園岡山理科大学獣医学部今治キャンパス設置補助金を合計93億円も拠出した、地元今治市愛媛県の職員対応が、信じられないことに、この状態であったのだ。誰も答えを提示しようとする意志を欠いたま、ただ戦々恐々と、表面的な丁重さを装って対応するのみである。うかつなことを言うまいと、ただそれだけなのだろう。何という委縮、何という骨の髄までの保身。基本的に法律の不勉強、職務懈怠の方が勝っているのである。その上に、「上の意向」に対するはからいから、何重にも自己保身が上塗りされている。

補助金等の予算の適正な執行に関する法律」を所管するのは、財務省である。念のために、財務省に「補助金等の予算の適正な執行に関する法律」に関して、補助交付要綱の作成と告示の義務付けの解釈を質してみた。その物ずばりの義務付けの記載はないからである。主計局職員とのやり取りが以下である。

西原:補助交付要綱の作成と告示の義務付けは、「補助金等の予算の適正な執行に関する法律」上どうなっているのですか。

主計局職員:直に義務付けはありませんが、「補助金等の予算の適正な執行に関する法律」に基づいて補助交付要綱が作成され、官報に掲載されると、認識しています。

告示を巡って応酬があった。質問の意図が分からないとか、何のためにそんなことを聞くのかと、その主計局職員に言われた。

「意図」を聞くのは、分かる。が、「目的」は余計である。公僕に主権者の質問を選ぶ権利でもあると思っているのだろうか。設問は、目的も含めてこちらの自由意志によって作成される。このようなことを言う事こと自体、甚だしい、認識の誤りである。

告示で手間取ったが、告示とは、公示(一般公衆に知らせること)の法的用語で、公告ともいう、らしいので、官報に掲載するのは即ち告示だろうと、解釈できる。

結局「補助金等の予算の適正な執行に関する法律」の実務を担保するには補助交付要綱の作成、公知は必須であるという事だろう。翻って、加計学園問題では、その補助交付要綱を公表せずに、93億の補助金が議決され、拠出されたという事になる。これは、一体、汚職以外の何だ。

この証拠を今治市側が、松山地裁に提出した準備書面から、見てみたい。まず、村上氏が松山地裁から開示させた、今治市側が提出した書面の一部が以下である。

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補助金等の予算の適正な執行に関する法律」に基づく、今回の岡山理科大学獣医学部今治キャンパス施設整備を目的とする、「今治市大学立地事業費補助金交付要綱」の解釈部分を抜粋する。

今治市補助交付要綱は一般的な内容の物である。補助金は、申請を受けてからはじめて申請内容に則った補助金の必要性を検討するようなものではない。補助金を支出するためには、予め補助要件(補助対象事業、補助対象経費、補助金額等)を定めた上で、申請を受け付け、交付決定することとなる。予め補助要件を定めることによって補助事業は補補助事業者は収支の見込みを出し補助事業についての計画を立てることができるようになる。更に、補助要件が定められているからこそ、財務会計担当者が、審査をすることができるようになる。補助対対象経費の審査については、後述するが、補助対象経費として認められた額は、補助金額計算野基礎となる。従って、補助対象経費が定まれば、補助金額の上限が自動的に決定されうることは補助制度の基本であり、機械的に決定されるスキームに問題があるかのような原告の主張は、補助金の制度設計を理解しない独自の解釈に基づくものである。」

補助交付要綱の補助金制に置ける位置付けについての、まるで教科書のような分かりやすい解説である。理解も容易である。ところが、これが、先日報道された、「今治市が隠し続けた文書が愛媛県か流出、黒塗り忘れで、職員謝罪」の記事となると、一転

「誤って開示した部分には、獣医学部がある今治キャンパスの設置経費の内訳などが記載され、工事の請負金額と、県が審査して減額した金額などが含まれていた。又支払い時期の年次計画も黒塗りされていなかった。」と報道されている。以下が、私の地元高知新聞紙上で報道された、愛媛県謝罪会見である。

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そもそも,今治市側の準備書面で論証されているように、補助金制度における補助交付要綱の位置付けは、愛媛県今治市とで異なるはずがない以上、後付けで、黒塗りすべきだったとされた箇所が、設置金額の内訳、工事の請負金額(契約金額)、県が審査して減額した金額、支払い時期の年次計画であるというならば、それらは全て、補助交付要綱で予め規定された補助対象経費(内訳毎)と経費内訳毎の県の審査権限にもとづく減額修正額であり、支払い時期の年次計画とは、愛媛県が債務負担行為で、複数年度に分けて拠出する補助金の拠出計画のことであるので、被告今治市準備書面の主張通り、「全て補助交付要綱に予め規定されたスキームの自動的な執行そのものである。」従って、行政が自ら制定した補助交付要綱に従って公正な補助事業事務を執行していることを裏付ける唯一の公文書であるものが、報道では、「黒塗り忘れ」であり、「誤った開示」となっているという事になる。この行政側の自己矛盾の甚だしさを白昼の下に晒したのが、この裁判所開示書類と、新聞報道である。この成果は、国会を遥かに凌駕する。加計学園問題を考える会」の皆さんと、裁判資料を開示請求し、ネットで公開してくれたで今治市民ネットワーク共同代表の村上治氏に深く感謝したい。

 

四万十町議会議員  西原真衣