呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(116)

   「地域商社」の補助金ビジネスモデル

 四万十町賑わい創出課によれば、「地域商社」と命名している町内事業者が4社ある。「株式会社四万十ドラマ」「株式会社四万十ノ」「有限会社宮内商店」「有限会社四万十生産」の4社である。地元商品を手広く扱い(集荷、加工、出荷)販売している地域密着型の地元事業者という意で「地域商社」と位置付けられているが、それぞれ出自は異なっている。まず有名どころの「四万十ドラマ」である。旧大正町、旧十和村、旧西土佐村が出資して設立した第三セクターから始まっている。十和村からの出向者が設立時社長を務めていたらしいが、その後民営化され公募に応じた当JA 幡多の職員であった畦地履正氏が選任後、社長に就任したらしい(政策金融公庫資料による)。四万十ノ株式会社は、設立が2012年、代表取締役には、不動産業が本業の岡村厚志氏が就いている。宮内商店は、仁井田米にこまるの商標登録者としてJA四万十に先んじた、名実共の地元実業家宮内重延氏率いる契約栽培農家63軒を抱える有限会社である。宮内氏は、農林水産省が年に打ち出した強い農業、競争力のある農業の政府スローガンである「6次化産業」という概念が押し出される前から、農業畜産分野で、加工、流通、外食と手広い事業経験を持つ実業家であり、現在物産、飲食部門を持つ観光物産センター「ゆういんぐ四万十」を経営する「株式会社しまんと」の代表取締役でもある。最後は、大正に拠点を置く「有限会社四万十生産」である。ここは、鮎、鰻、川のりの佃煮等の四万十川の産物に特化した加工食品業者のようである。この4社の地域商社は、賑わい創出課の目玉事業である「ふるさと支援事業」に不可欠な存在である。町内80事業者の商品を、ふるさと納税寄付サイトに登録、販売する仕事を町から請け負っている。この業務は「中間管理業務」と呼ばれ、町が指定する「中間管理業者」は全部で8社ある。

1. 有限会社宮内商店:傘下の事業者数(5)

2.株式会社四万十ドラマ:傘下の事業者数(16)

3.株式会社四万十ノ:傘下の事業者数(33)

4. 株式会社ブラウン:傘下の事業者数(0)

5.株式会社四万十うなぎ:傘下の事業者数(0)

6.有限会社四万十生産:傘下の事業者数(4)

7.株式会社デュロックファーム:傘下の事業者数(0)

8.一般社団法人四万十町観光協会:傘下の事業者数(4)

中間管理業務には以下の仕様がある。

1.商品画像の作成:単価2万円

2.商品説明文の作成:単価1万5千円

3.寄付サイトへの登録:単価設定なし、「レジホーム」というアプリを使用して町から付与されたIDによってふるさと納税寄付サイトへ商品を登録する

4.商品クレーム対応

5.商品の梱包及び発送

上記1~3 は、町からの委託業務として上記単価で町に委託料を請求できる。4は事業者が、事業者が受け取る町の買取代金(買取価格は、が寄付金額の3割以内を総務省が推奨)から手数料(町は10%以内を推奨)として中間管理業者に支払う、4の梱包発送は、事業者自らやる場合もあれば、中間管理事業者に委託も可能(その際の手数料率は全体で15%以内を町は推奨している)である。ここで見落とせないのは、通常のネット販売であれば、送料は顧客負担となるが、ふるさと支援事業に置いては、返礼品はあくまで町からの寄付者への感謝を伝えるギフトとされているので、「送料は全額町が負担する」その総額は、昨年ベースでで1億5千6百万円である(賑わい創出課ふるさと納税担当)。四万十町への寄付金額は、近年12億円相当で推移している。自治体への寄付が、なぜ「ふるさと納税」と呼ばれているのか、寄付した人はその仕組みを良く知っているだろうが、寄付の経験がない人には、一見かなり分かりづらい。ふるさと納税とは、「寄付金額-2000円の全額がその年の住民税と所得税から全額税額控除される」という実に奇抜な制度である。寄付とは言え実質は、税収を失う自治体から税収(寄付金としての)を増やす自治体への税の移転なのである。さらに税収減となった自治体へは、減収分の75%が交付税措置され、増収分は基準財政収入額には算入されないという総務省ならではの手厚い制度設計がなされている。「地場産品を全国にPRし、頑張って地域起しをして下さい。」と言わんばかリの制度である。

参照:地方交付税交付金=基準財政収需要額-基準財政収入額

要は自治体の産物で自助努力によって税収を上げなさいという事なのだろうが、これを地方創成というならば、自治体主催の全国版物産ネット通販事業を国が主導したということになる。この仕組みの奇抜さによって、自治体間の寄付金獲得過当競争を煽ったのは他ならぬ総務省なのだが、自治体が、インターネット通信販売業者になり果てた挙句、火消し目的で「返礼品は寄付金額の3割以内ルール」が制定された経緯がある。過熱問題(地場産品以外の物を競って出展したり高額な返礼品を用意する)が噴出し、一時は存続が危ぶまれたこの「ふるさと納税制度」は、この「3割ルール」の制定で存続が図られた。この奇抜な制度自体の功罪はさて置き、実利面でこのふるさと納税制度は、ここ四万十町には、確実に恩恵をもたらしている。固定資産税7億円を凌ぐ12億円の歳入増を町にもたらしているからである。事業経費に当たる送料と返礼品買取代金総額が、概算で5億1千6百万円なので、歳入の純増額は、差額の6億8千4百万円となる。平成28年ふるさと納税制度に参入した四万十町は令和3年までの8年間をかけて、寄付金額12億円レベルを維持できるまでに、町は、ふるさと納税全国レースで実績を積み上げて来た。この事業の事業名は「ふるさと支援事業」である。が、ここに来て若干の異変が生じている。町が返礼品を買い取り寄付者に送っている以上、公然たる町の公共調達事業と言えるこの「ふるさと支援事業」の企画立案と方向性の決定に大きく関与しているのが、ふるさと納税推進協議会代表者会」である。先ほどの中間管理業者の全てが(実際には中間管理業務を行わない2社を加えた)この代表者会のメンバーであり、会長は宮内氏、副会長は、岡村氏、畦地氏、大前氏である。「ふるさと支援事業」の今までの実績をてこにし、「ふるさと支援事業とタイアップした(という触れ込みの)」新たな四万十町物産ネット販売事業」が、令和2年12月に事業化された。提案者は岡村氏と畦地氏である。補助事業主体として四万十町ネット販売推進協議会」が設立された。設立時には25事業者が参加、現在事業者数は35事業者に増えている。役員会の会長が岡村氏、副会長が畦地氏、福永氏(無手無冠)、監査が岡田米穀店である。この協議会に今までに交付された補助金を洗い出してみた。

令和2年当初予算:891万円(「リバーノート」構築委託料)

令和2年12月補正予算:1540万円「リバーストア」構築運営と「リバーノート」運営補助金

令和3年度:1893万円 (同上)

合計額:4324万円

令3年4月10日にオープンしたこのネットショップの売上は9月時点までの累計額2百数十万円というから実に不調である(9月定例会下元昇議員一般質問への小笹賑わい創出課課長答弁)おまけに補助率が10/10(自己負担額なし)という破格の補助交付要綱が用意されていた。情報発信サイト「リバーノート」の記事作成には、一人の部外者を除いて全員が四万十ノと四万十ドラマの従業員が充当された。そして何より「リバーストア」の構築、運営の全てが、「協議会」より「四万十ノ」に委託されている。この「協議会」と「四万十ノ」間の「委託契約書・仕様書」と「協議会規約」を開示請求によって入手した。以下である。www.dropbox.com

www.dropbox.com

規約によれば、会長兼事務局が岡村氏であり、委託契約は、岡村氏と岡村氏間の契約となっている。更に仕様書を読めば、物流会社と物流費の設定、価格設定、販売促進企画等、全て協議会から岡村氏への一任事項と規定されている。協議会が補助事業者(言い換えれば補助金の受け皿)でありながら、役員会に重要事項決定権があり、協議会には報告するだけでよいとも規定されている。このいかにも隠然たる目論見ありげな妙な規約から生じた事態が以下である。

1.卸価格(仕入れ価)の3割増しの価格が設定された。当然同一商品が自社サイト(中間管理業者は全て自社サイトを持ちそこで自社商品を販売している)の商品より高額になる。同一の四万十町物産が、インターネットショップ上では2重価格となる。

2.返品対応が、事務手数料3300円+商品代金の20%のキャンセル料金+往復送料1760円というどう見ても異常なものになった。

四万十町の情報発信目的で構築された「リバーノート」であるが、委託料891万円は随意契約で「四万十ノ」に委託された経緯がある。今回の随意契約の理由は「(四万十ノが)他に替えがたいネット販売の事績あり」とされている。が、上記実態を知れば、一体何を持って「実績」と見なせばいいのだろうか。むしろ、畦地氏とタグマッチを組んで、役場相手の、競合相手(他の中間管理業者)出し抜き的な補助事業の獲得に余念がない岡村氏の姿しか浮かび上がってこないのである。その証拠に、ふるさと納税推進協議会代表者会」「ネット販売推進協議会役員会」の間で全く意思疎通が図られていない。協議会設立時の事業者獲得のための岡村氏と畦地氏の声のかけ方に藻、意思疎通のなさが現われていたようである(賑わい創出課による)。

岡村氏:ふるさと納税代表者会から是非ともこの事業をやってくれと頼まれた。町も後押ししている。

注釈:頼まれていない。捏造に近い。両組織間の意思疎通は図られていない。この事実はふるさと納税推進協議会全体会」に出席し、会長の宮内氏や副会長の大前氏からの指摘によって確認済み。

畦地氏:補助金が出たので、商品を出さないか。

注釈:まず補助金ありきの、実に畦地氏らしい勧誘文句である。この人物は副町長森武士に直接「提案」を持ち込むことが常習化しているという。強引で人脈頼みの姿勢が濃厚であり、片や肝心な協議会への周知や説明は、軽視してきたのではないか。

補助金の出し手行政側にも大いに問題がある。補助金を出した賑わい創出課は、「リバーストア」を精査していない。ウェブサイトの仕様や運営方針の精査前に、ネトショップがオープンされている。四万十の日(4月1日にオープンに何とか漕ぎつけたいとの向こう側の意向があって、精査が間に合わなかった」というのが賑わい創出課の言い分であるが、結果的にオープン後にも異常な返品対応内容も見逃していたのである。行政側が「提案」に押されて、提出書類が形式的に揃ってさえいれば、易々と補助金を出して来たのではないかと疑わざるを得ないし、向こう側がオープンを急いだ背景として「新たな補助金流入を見越した会社経営の実態」が推測されるのである。今回、この運営状況は、「リバーストア」の売上げ低迷で、ちらしをふるさと納税の寄付者向けの返礼品梱包に中に同封して欲しいと、宮内会長が岡村氏から依頼を受けたことで発覚した。顧客情報を共有し得るような両組織(ふるさと納税推進協議会トネット販売推進協議会)間の意思疎通や意思確認等を完璧に欠いたまま補助事業が勝手に動き出していたという事である。宮内会長に言わせれば、「両組織に跨る執行役員が一方の組織の利益目的で他方の顧客情報を入手しようとした「利益相反」事件なのであり、高額の価格設定は四万十町物産にネット上の二重価格を生じさせ、今まで営々と築いてきた四万十ブランドを毀損する」という認識があるようであり、宮内会長の言い分には、確かに一定の説得力がある。岡村氏と畦地氏のこのようなやり方から類推でれば、協議会規約や、委託契約の内容も協議会内まず共有されてはいないだろう。賑わい抄出課に確認した所、予想通り、4月10日にストアがオープン、規約を協議会で配布したのが9月、委託契約書に至っては協議会に示していないというお粗末さであった。それで多額の補助金が補助事業者の役員の一部により、会社経営の維持を含めた単なる自己利益の最大化目的で使われてきたとしたら、これほど公正さに欠ける話はないだろう。まずは何を変えていく必要があるのか、会長の宮内氏には、ふるさと納税代表者会体制の在り方に関して、「手数料一律5%」「役場から補助金を受けていない利害関係のない委員を入れた委員会の設立」「ウェブサイトの運営に詳しい専門家による研修の実施」等の改革案があるらしい、が私の考えは、補助金補助交付要」そして補助金の受け手となる「協議会の規約」及び「役員会議事要旨」をまず町民に対して公表すべしということである。「補助交付要」綱」は、告示されているが、それを見なければそのままである。「ふるさと支援事業」においても「規約」「議事要旨」は従来公表されてこなかった。「ネット販売推進協議会」に至っては事務局が岡村氏であり、議事録は作成していないという事である。政府調達においても、政治献金等を通じて政治家に近しい業者が政策立案会議の民間委員に委嘱され、場合によっては法改正まで首謀した挙句、事業化後は、その政府発注事業の受注者となっている事例が多発している。安倍政権以降にその傾向が著しいことは周知の事実である。このような事態を「長期停滞」の著者である経済学者、金子勝氏は、「縁故資本主義」命名している。私からは、中尾博憲町長と森武士副町長の二人、町執行部は、この安倍政権以来の自民党政権の政治文化によって培われた「縁故資本主義」という親亀の背中で惰眠を貪る子亀に見えて仕方がない。「文化的施設」建設の背後にもこの「縁故資本主義」が生み出す自治体発出縁故マネーがちらつき始めていないか、四万十町議会には、予算を通した以上、監視義務があるはずである。

追記:「縁故資本主義」との絡みで、現況で四万十町大型公共工事の筆頭受注事業者である田辺建設の会長職にある田辺聖氏が年6月の理事会で四万十公社役員改選で理事長職に就いた。公社常勤専務理事森雅伸氏は、役員改選議案と同時に役員報酬改定議案を上程し、可決された。改定内容は、理事長月額報酬5万円から10万円への増額である。報酬額の倍増を必要とする合理的な理由が、事長職の実務上どのように他の理事達に説明され、賛同を得たのか、そもそも四万十町所管課である企画課には、理事長出勤日数及び職務内容に関するどこまでの把握があるのか、更に参考までに、理事長前任者である中島親近氏(元JA組合長)前々任者である中平克己氏(元四万十町教育長)にもコメントを求めたい所である。次回はこの件をテーマにレポートしたい。

西原真衣