呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(99)

四万十町営塾を運営する「founding  base 」注意喚起論

 四万十町が町を挙げて存続に向けて公費支援している窪川高校と四万十高校の今年の入学者数は、窪川高校28名、四万十高校21名であった。高知県教育委員会高等教育課が設定した、「2年継続して入学者数が20人を切れば両校を統合する」という指針の下、四万十町高校応援大作戦」事業が平成28年11月に開始された。地元高校2校の存続を政策目標としたこの事業の予算額は、経年変化はあるが令和3年当初予算ベースでは以下のようになっている。抜粋する。

町営運営委託料:1860万、委託先株式会社ファウンデイングベース

高校魅力化支援隊用住居借上料金:4, 291,000円

町営塾備品購入費:200,000円

窪川高校教育振興会助成金:8, 666,000円

高等学校通学費助成金:2, 600,000円

四万十高校教育振興会助成金:7,505,000円

奨学金等返還支援事業補助金:6,000,000円

地元高校入学祝金:5,000,000円

総額で、49,596, 000円である。

地元高校2校の存続に年間5千万円を使う事の是非については議論が必要である。記憶する限り、「地元高校から地元国公立へ進学できるような学力の養成」によって地元高校進学率を高めようという意気込みで始まったこの事業である。が、開設から4年が経過した令和3年4月までに未だ地元国庫立への志願者が皆無という実態がある(塾長高橋氏談)。冷静に考えてみようそもそも窪川高校全校生徒68人、教員数26人、四万十高校全校生徒61人、教員数23名という陣容で養成できないで来た学力を学習塾に何ら知見のない町が町営塾によって養成しようという端から無謀な試みなのである。しかも四万十高校に至っては、今年の入学者数21人中8名が県外生であり寮に寄宿せざるを得ない。令和元年から始めた「地域未来留学」という名称の高校生全国募集新制度を通じて政策的に他県の受験生を四万十高校に誘導しているのである。この経費(旅費やマッチング業者へに支払い手数料)に年間90万円が費やされている(四万十高校振興会助成金の内訳)。専ら四万十高校の生徒数確保が目的である。結果的に県外性の増加によって寮が満杯状態となり、使用されていない元信用金庫の社宅を町が買収し、改修後一部を県外生の寮として使用するという施策までが繰り出されているのである。表向きは「お試し滞在住宅」の新設であり、このあたりが、地元大正出身の屋康議員が議会発言中「裏話」と称した所以であろうが、この様なばかばかしい「裏話」は町民を欺くものであり、本来不要であると私は思うのだが、どうだろう。更に「入学祝金10万円制度」までもが令和3年度に新設された。これに反発する地元高校入学者にだけ祝金10万円支給するのは不公平ではないか。という意見が今役場の掲示板に張られている。これだけではない奨学金返還支援金」までが新設されている。実に怪訝である。ここまで来れば、行政が不当な圧力によって歪められていると見るべきではないか。補助金ゾンビ企業を生き延びさせているかの如き感さえしてくるのだ。「地元高校存続」を聖域化すれば、なにが背後ではびこるか、この際まずは、地元高校というより地元高校生を取り巻く進学進路環境における社会、経済情勢をまずは整理しておきたい。

  少子化によって全国の大学は生き残り残りをかけて、入試の推薦枠を拡充している。推薦には指定校推薦(成績基準による校長推薦)と総合選抜推薦(面接や高校時代の活動評価による選抜)の2種類がある。成績とはクラス内相対評価である。窪川高校の偏差値は36、四万十高校の偏差値は37である。因みに新設された須崎総合高校の偏差値は37~39であり、参考までに高知県トップの進学校土佐高校の偏差値は67である。四万十町内小中学生の就学援助(学校給食、修学旅行、学用品への補助金拠出)受給比率が25%(4人に1人)である町の実情を見れば、進学先選択は、生徒数が多く、選択肢も多く若干ではあるが偏差値も高い須崎総合高校となるのは必定である。さらに、先述したように、大学進学のハードルは少子化によっ年々低くなっているのである。が、当時者にとっての高校、大学進学状況本体から離れたところで、窪川高校存続の熱意を遥かに凌駕する四万十高校存続への地元熱意という現象が存在している。合併前に旧大正町で合併の是非と問う住民投票があった事と不合併後の地元高校存続への執念とはおそらく連動している。「せめて地元高校だけは残したい」というセンチメントが充満してるのだろう。これに、論議なし迎合ありの窪川出身政治家中尾博憲が垂涎状態となり、補助金をこれでもかこれでもか繰り出しているというのが実情に近いのではないか。その証拠地元田辺哲夫議員は、四万十高在校生向けに資格取得費用や自動車免許取得時に補助金を出す等の珍妙な支援策を地元票目当てで議会でアピールしてきたし、中屋康も、大正給食センターの存続や寮問題に言及し,地元票を意識した四万十高校振興アピールに余念がないのである。一般に知られていないが、窪川高校振興会の会長は元町議の槙野理恵子氏であり、役員に窪川出身現職議員はいない。方や四万十高校振興会会長は現職議員堀本伸一であり、役員に村井真菜や林健三も名前を連ねている。四万十高校存続の聖域化は彼らの票田の聖域化に直結しているのである。論議なき迎合政治家中尾博憲が動かない訳がないではないか。中尾博憲が金銭(血税)バラマキで議会対策をやる人間であることは、とっくの昔に証明済みである。往年のJリーガー中山ゴンの言い草であった、「俺頭悪いですから。頭脳プレーできませんから。走るだけですから」になぞらえば、中尾博憲バージョンは、「俺頭悪いですから、論議できませんから、補助金ばらまくだけですから。」となる。私は中山ゴンは好きだったが、中尾博憲は心底嫌いである。ゴンは走ってチームに貢献したが、政治家の頭が悪いのは厄災に近いからであり、それでもその地位にとどまり続けるという厚顔さが我慢ならないのである。今回その厄災ぶりを町営塾に焦点を当ててオブザーブしてみた所、想像以上の実態が見えて来たのでここにレポートしたい。

  町営塾の運営は、自治体運営塾コンサル「founding base 」に一任されている。この社員平均年齢30歳に満たないであろう教育関連ベンチャー企業は「founding base 」のHPを開くと、現れるのが、以下である。

 「自由」をUpdateする というMISSIONのもと、地方を軸に事業展開している地方共創ベンチャー企業です。

Updateできる自由とは「founding base 」というベンダーによって簡単にバージョンアップできるマイクロソフトのOSソフトのような物であるらしい。「地方共創」というからには、地方の高校生を自由のUpdateへと誘うMISSIONを担っているという意味であろうか。議会に居た頃広報誌でも紹介された、「founding base 」からの出向者で、月給25万円であった伊藤君(運営委託料2500万円から拠出)が、議場で議員を前に挨拶をした。

「田舎の高校生が普段あこがれている都会の格好いいお兄さん、お姉さんと交流する機会を提供することを通じて広い世界への興味関心を喚起しつつ自分もその格好いいお兄さん、お姉さんのようになる夢を実現する手助けをしたい」

「かっこよさへのあこがれ発、夢をかなえるための勉学意欲の喚起」という理屈である。この伊藤君からもらった名刺には, 「Joint Maker」という珍しい職名が記載されている。とにかく英語表記が好きである。どうも英語だとかっこいと思い込んでいるようである。この伊藤君、広報誌の取材に、「以前勤めていた旅行代理店でパワハラにあった」と答えている。田舎の高校生は都会から来たファッショナブルで高学歴な若者にあこがれ、その憧れをばバネに、自分も後に続きたいと、勉学に励んで夢をかなえていくという実に今風に貧相なサクセスストーリを田舎の高校生に吹き込むと言うならば、それは実に低レベル且つ質の悪い自己啓発セミナー」のようなものではないだろうか。この「founding base 」からの出向者自身が起業家を自認する同世代社長から既に完璧に洗脳されているのではないのか。都会における若い世代の労働環境の劣化(非正規化、低賃金化、労働時間の長時間化)と片方で少子化による大学進学難易度の低下、及び田舎の高校存続への地元住民の執着というファクターの組み合わせにこのリクルート社出身の若き起業家は商機を見出したのである。そのような社会経済情勢が生んだ「学生リクルート」ビジネスがもうかる仕組みとは、運営委託料こそ1830万円であるが、「じゅうく」スタッフ全員の家賃と賃金は全額町持ちである。高校魅力化支援隊用住居借上料金:4, 291,000円と、塾長以外のスタッフの月額報酬は、1年目18万円、2年目19万円、3年目20万円だということである。1年目が3名、2年目が2名、3年目が2名だということなので、報酬合計額は、15, 840,000円となる。家賃プラス報酬で、20, 131, 000円となる。この経費が全て、町営運営委託料1860万とは別に町が出している。委託料830万円から塾長給与年額360万円を除けば、年額1500万円の丸々粗利ビジネスなのである。日本の人口減と少子化に悩む中山間地の自治体の地元高校存続に対する地元熱意への迎合と自治体の教育分野における知見の完璧な欠如につけこんだ新手の教関連ベンチャーと言えよう。この「founding base 」のface book上の求人広告を見れば、この企業が、実に低質な「自己啓発セミナー」まがいの学生リクルーターであることがありありと分かる。

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ここにはないが、新規自治体開拓分野求人も見つかった。この任務は「local producer」と呼称されている。およそまともな英語ではない、珍妙な和製英語の連発である。まともな英語力を持たない雇用主に雇用された講師たちが地元高校生に提供している英語の授業ぐらい、四万十町管理職は自ら見学し、理解を促す授業かどうかを視察し、更に教育委員会に所属する国際交流員(英語と日本語ができる)に授業評価させるぐらいしたらどうなのか。国交流員も月額報酬30万円、住居借り上げではないか。「じゅうく」の塾長高橋氏と同じ待遇である。この塾長、「浜田が参りました」時のプレゼンの場で冒頭で「founding base 」の宣伝をした後に四万十町の人はお酒が大好きで、温厚で、私もお酒が好きなので、毎日楽しく暮らしています。高校生全員にタブレットを無償で配布してくれたり、本当に四万十町は豊かだなと感じています。」と述べたのである。町営塾の塾長に町の豊かさを実感させている四万十町管理職は、この発言をどう聞いたか。豊かであれば、就学援助を4人に1人受けたりしない。3月31日町内居酒屋で管理職総出で総勢27人で2時間の歓送迎会をやったらしいが、彼らは一体税金を何だと思っているのだろうか。そのような体たらくだから平均年齢30歳に満たない悪質なベンチャー企業「founding base 」に易々とカモにされてしまうのである。

西原真衣