呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(4)

   風力発電勉強会その後「環境派」の動き

去る9月18日に、「四万十町ふるさとの自然を守る会」は、9000筆を超える署名を、中尾博憲町長に提出した。以下は、四万十町ふるさとの自然を守る」のHPに記載された記事の抜粋である。

提出者の一行には、代表者の佐藤さんをはじめ、四万十ブランドを支える商業者、(公社)生態系トラスト協会、町議員の総勢10名が集まった。そして町長、副町長、担当行政課に1時間の時間をいただき、以下の意見を伝えさせていただきました。

〇大規模風車群による懸念

〇環境破壊の問題

健康被害の問題

〇Iターーン、Uターンの人達は来なくなり集落維持・存続の危機に陥ること

〇四万十ブランドの商品に大きな損害を与える事

四万十川を中心として取り組む政策の全てに打撃を与え、町の根本を揺るがす計画であるため、危機感を以て対応してもらうようにとお伝えしました。

今後、四万十町議会は担当委員会が風力発電、本計画についての勉強をしていくとの事です。

町長、行政は方針を変えておらず、着々と計画は進んでいます。

〇環境破壊の問題は、確かにある。既存の林道だけで済むはずはなく、「可能な限り山以外に土砂を排出しない。」は、たとえ方法書に記載されていようと、所詮は、口約束にしか過ぎない。行政との間に契約書を交わすのであれば、違約が生じれば、損害賠償を争えるが、そうはなっていない。そもそも土砂は、有害物質が含まれていない限り、産業廃棄物と見なされず、産業廃棄物処理法の適用を受けない。となると起こった土砂災害は、我々の税金で修復するしかない。そして、売電収入は、オリックスが独占する。期待される固定資産税は、初年度で4億数千万、償却資産なので、10年目には1億数千万円台にまで落ち込こむ(四万十町税務課試算)。ふるさと納税の寄付金額12億円に遥かに劣る。これだけでも、「四万十川四万十町」のイメージの毀損は得策ではない、と判断できる。又、高知県環境影響評価技術審議会の計画段階配慮書への意見のなかに、委員の一人から「四万十川条例の記載がない。」という指摘が見られた。案の上オリックスは、「地元四万十町の景観保全条例は、可決されました。」と応答していたが、四万十川条例への言及がなかったことは、注目すべきことである。つまりオリックスにとっては風況が全てで、四万十川流域の自然環境や景観にはそもそも関心がないのだ。そりゃそうでしょう。地元に住んでるわけじゃないし、環境省が作成した風況マップで当地を立地予定地としたのだろうから。ところで、四万十川条例は、県条例である。高知県知事尾崎正直氏は、知事の事前意見として、ヤイロチョウの生態系調査と、生育環境への影響の回避と低減に万全を期すよう、事業者に要望してはいいるが、常識的に考えて、巨大風車群と共生できる絶命危惧種なんて、まずありえないと思う。さらに、オリックスの社長、宮内義彦氏が、安倍晋三首相の私的諮問機関であった「規制改革会議」や、この会議を継承した[営業経済再生諮問会議」の民間委員を歴任していること、又、現在高知県知事である尾崎正直氏は、地元出身ながら、東京大学経済学部卒、財務省主計局出身のエリート官僚出身の若き知事であり(3期目現在51歳)、今年11月の知事選には既に不出馬を表明し、国選への意欲を示していると来ている。この、一般の高知県人に取っては、まばゆいばかり経歴を持つ尾崎知事、やはり、安倍首相の私的諮問機関、「教育再生会議」の委員に名を連ねている。聞くところによれば、財務官僚時代に内閣府出向歴があり、当時から安倍晋三首相と距離が近かったとも言われており、国選に出るとのう噂は、ずっと絶えなかった人物である。この辺の人脈は、政治家の判断に影響力絶大な昨今なので、ここも風力発電事業の推移を見守る上での重要観測ポイントであると思う。因みに尾崎氏は、県議会において、国選に出る動機は「地方重視を国政の場で訴えるため。」と発言している。因みにこの尾崎氏の言動の結果が、私の所にはからずもトリクルダウウンしてきた、興味深い一件がある。この一件から、尾崎知事の言動の真意も見えそうでもある。その一件とは、私が、ある時、高知新聞で、JAL所縁の人物が、四万十町副町長、森武士が代表取締役を務める第三セクターである道の駅「あぐり窪川」の営業部長に就任したという紹介記事を目にしたことに始まる。その人物は今、あぐりの傘下にある松葉川温泉に常駐し、現場の状況を把握中、その後はインバウンドを視野に入れた営業戦略を期待できる人材であると、紹介記事は続いていた。JAL とインバウンド観光戦力、これは、ドンピシャリである。その時は、特に疑いも持たず、年齢が60歳と書かれていたので、てっきりJAL定年退職後に高知県に移住していた、ゆとりある退職者の社会貢献活動的な振舞いなんだろうと、漠然と想像していた。ところが、聞いてみれば、事実は全く異なっていた。当時、道の駅あぐり窪川には自社商品の豚まんの生産が追い付かない状況下で、加工施設の新設が既定路線であった。道の駅に隣接する土地の用地買収も含めて総工費6億円弱、令和元年四万十町当初予算に計上、可決されている。現在は工事に入っている。方や尾崎知事は、12年前の就任以来、高知県勢浮揚のための産業振興、地産外商に全力で取り組んできた知事である。そんな中、東京経済同友会地方創成委員会に招かれて、「経済同友会の皆様に期待したい事」という題材のスピーチをしたことを契機に、高知県と東京経済同友会は、連携協定を締結した。一方、同時期に内閣府では、「大企業連携」と銘打った、東京に本社を置く大企業の、地方創成への貢献目的の人材派遣事業が立ち上がり、高知県下では、県庁前に「移住定住促進・人材確保センタ―」という県の外郭団体が設立され、移住定住相談業務や事業継承も視野に入れた人材確保事業が準備された。具体的には、高知県東京事務所を通じて、連携協定や大企業連携に基づく人材情報が収集されていたようである。さて、ここからの動きである。高知県商工政策課と移住定住促進・人材確保センタ―がタイアップして、県の出先機関である高幡地域支援本部を通じて、四万十町人材育成センターからあぐり窪に対して、今後欲しい人材像のアンケート調査が実施された。加工施設の新設が既定路線のあぐり窪川は、当然「営業力のある人材」と調査シートに記入した。ここで注目すべきは、モデル的に第三セクターに限定して意向調査が実施されたという事実である。「移住定住促進・人材確保センタ―」が主催する県内事業所を回る視察旅行も数回開催される中で、大企業連携に参加する経済同友会会員企業JALの定年退職予定の某氏も視察旅行参加者であった。視察後JALより、「あぐり窪川に興味がある」旨が伝えられたそうである。マッチング成功である。あぐり窪川JALの某氏を営業部長に迎え、JALからの出向者として、JALに給与を振り込んでいると、あぐり窪川常勤専務理事池氏から直に聞いた。この東京経済同友会高知県東京事務所、商工政策課、人材育成促進・人材確保センター、産業振興高幡地域支援本部、四万十町人材育成センター、株式会社あぐり窪川関係機関間の一糸乱れぬ一連の連携行動は、表面的には、尾崎知事の東京経済同友会地方創成委員会でのスピーチに端を発した快挙[「あぐりに、あのJALから営業部長が来てくれた。」である。が、一町民の健全な一般社会常識からすれば、たった一人の人間の定年後の再就職の斡旋にこれだけの役所や外郭団体が業務で係っていることのバカバカしさと、天下のJALの定年退職後の再雇用の人件費を過疎地高知県西部の道の駅が支払っているという事実に,怪訝な気持ちにならざるを得ない。皆さんはどうだろうか。第一、JAL側の「あぐり窪川に興味がある」という言い分はどうだろうか。実に傲慢であり、考えようによっては憤慨ものである。連携という割には、決して対等ではない、上下関係意識が、露骨に出ている。「あぐり窪川JALに興味がある。」と、採用する側が、なぜ言えなのか。このような経緯で、JALに、地方が創生されてしまうのは、オリックスによって、風力発電事業によって開発されてしまうのと、実にアナロジカルではないか。実は私は、足元の四万十町で、年金支給開始年齢の引き上げに伴い、定年退職予定者(60歳)から再雇用希望を募り、希望者は全員再雇用で、年金支給開始まで再雇用継続可能で、再雇用時の月額報酬27万円、賞与ありを把握していたので、ピンと来るものがあったのである。つまりJALは、地方創成と大企業人材派遣を隠れ蓑に、60歳の社員の再雇用の人件費をあぐり窪川に付け替えることに成功したのだ。年金財政の破綻を回避する目的で、支給年齢が引き上げられる。そこで、定年退職者の再雇用が、役所と大企業に促される。役所はこれに唯々諾々と従うことができる。財政措置が施されるからだ。誰も直には、懐gあ、痛まない。ところが大企業はそうはいかない。これが、この、地方創成を絡めた大企業連携の裏の顔の一つである、という仮説に基づき、予算6億の加工施設建設は、町の投資であり、営業部長の人材確保のための費用(JALに振り込んでいる給与)は、投資を回収するためのコストである。」と言う理屈を捻り出し、あぐり窪川JALの契約書を開示請求してみた。この鳴り物入りで登場した、JALの出向者、あぐり窪川の営業部長の活躍をその後聞くことも全くなかったことも、私にとっては、一つの状況証拠であった。

開示請求の結果は、予想通り「法的文書不存在」という理由で非開示であった。以下が非開示通知である。

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この「法的文書不存在」の意味だが、株式会社あぐり窪川は、町が設立した株式会社で、代表取締役は、副町長の森武士である。副町長と株式会社の代表取締役は立場が異なり、代表取締役が保管するものは、副町長が保管するものとは見なされない、という事らしい。公文書の定義は「職員が職務上入手、作成し組織的に用いるもの」であるので町が設立した株式会社の筆答株主である四万十町を代表して取締役であるから、代表取締役となったので、この間の牽引性の強さに照らし合わせて、副町長の町民への説明事項(なぜ、このような対価を払って、JAL社員をあぐり窪川に営業部長としての出向を依頼したか)が含まれる契約書は、「職員が職務上入手、作成し組織的に用いるもの」に準じると、私は解釈するが、要は、見せたくないという事なのだろう。この辺が「あぐりJALに興味がある。」と、堂々と対等に渡り合えない理由なのだろう。これが,私の知り得た地方創成の実態の一つである。結論として、尾崎知事は、「国政で地方の重用性を訴える」つもりらしいが、地方のメンタリテイがこれでは、と思う。精神的に自立できていないのである。風力発電もここが鬼門である。地方が試されるいい機会かもしれない。必要なのは、想定される町民間の利害得失をいかにオープンに、かつ明確に論点化して議論できるかである。憶測と無知は分断をもたらす。ゆえに、意思決定過程の透明化の確保が是非とも必要とされる。四万十町議会の皆さん。議員の時、これがあなた方に理解されたことが、なかったんです、ついぞ、私としては。

 

四万十町議会議員 西原真衣