呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(13)

          風車模型現れ仰天する

昨夕、玄関先に突然現れた知人夫婦、何と、オリックス社の大藤風電事業計画立地予定地を中心とした、周辺地の模型(発砲スチロール製)を持ち込んで、見せてくれた。これを、役場本庁や大正振興局にも持参し、管理職に見せて説明したらしい。大学で建築を学んだというその知人が、玄関先で解説してくれた内容は、遠い昔に海辺の興津が隆起して、四万十川が逆流し、その際に現在の大正の町がある平地(模型で見ると、山々に囲まれた実に狭小な一角)が形成された事、四万十川は、全長が長く、上流と下流が入り組んで蛇行していることで有名だが、これも険しい地形の山々の隆起によって川が形成される際に生まれた川の形であるという事など、非常に面白く、興味深いものであった。ここ(打井川の四万十川地点)から見れば、この二つの風車が見えるとか、巨大な49基の風車から出る低周波の振動は、この大正の町全域に影響を与えるとかの解説は、模型で見ながら聞くと圧倒的な説得力であった。改めて私は、言葉を失った。百聞は一見に如かずとはよく言うが、全くその通りである。模型は、事物の大小と遠近を実感させてくれる。当たり前の話だが。こんなところに、こんなものができるのか、山しかないところに、山肌を削り、伐採し、これだけの面積に、この巨大な風車群が立ち、この、狭い、小さな大正の町に住む人々に影響がないはずがない、という単純にして強烈な本能的直観が、私の中で作動した。さらに、その模型を見れば見るほど、隆起する山々こそが土地つまり風景の主体であり、川が山の一部であり、山が川を作ったことが体感される。この体感は、教科書や平面的な地図では到底沸き起こってこないだろう。その体感は、人間はそこに、自然の恩恵を得てささやかに住まわせてもらっている存在であると、やっと、真実の姿が見えたような、不思議な安堵感を私にもたらしてくれた。自然とは、自分自身の身体感覚の延長にある、今だ知らない、外在性のようなものかもしれない。これは解剖生理学者である養老孟司先生が、「脳化社会論」とう命名で近年よく言っていることだ。ITが社会を脳化すると、脳化された社会によって、我々自身の内なる自然(身体)が侵食され、我々は、我々自身が自然によって形成された自然の一部である(全体の一部である)という本質的な安堵感を喪失する。これはよく分かる。なぜなら、コンピューターとは。間違いなく、脳を、脳だけを外在化(シミュレーション)したものであるからだ。夥しい他者の脳と接続されたインターネットを覗いていないと自分自身の位置確認ができなくなり、不安感に駆られそうになっているのは、日々の私自身のことでもある。

 知人は、風車病の懸念を語った。そして、それが、最も被害を受ける可能性のある大正の人々が、ことさらそれを知らないことへの危惧を語った。風車病は、疫学的には実在する。欧州でもアメリカでもこの日本でも。けれども医学的因果関係は実証されていない。少なくとも環境省はその因果関係を認めていない。行政側は、9月議会の答弁で、中尾町長は、「今後健康被害について勉強する。」と言ったなり、後日談を聞かない。それに、風車の搬送路は、「既存の林道を使うと事業者が言っている。」「土砂災害には万全を尽くすと事業者が言っている。」と答弁した山本企画課課長は、方法書から読み取れる(と知人が言う)「大正地区の希の川の橋向こうの谷を埋める」をどう解釈するのだろう。谷は、山の水脈である。谷に予め排水管を通してから埋めるのか、それが為されなければ、土砂災害は必至ではないか。山本企画課課長はオリックス側にそこをヒアリングすべきではないか。今までの経緯からすれば、方法書に著作権が設定されていることの怪は、どうもこの辺りに存在しそうである。また、中尾町長の、「11月末に町有地の賃貸借同意書をオリックス側に渡す。」や[特別調査委員会を立ち上げるとかではなく、議員や利害関係者を交えた協議会立ち上げを検討する。」という議会答弁と、それに連動した下元昇議会議長の発言「オリックス社に対する町有地賃貸借の同意の意志が、既に町側にあり、これは、議決事項でないので、特別調査委員会は設立しない。」がありながら、同時に、請願提出者である「四万十町ふるさとの自然を守る会」の代表佐藤さや氏に向けては、「排出土砂量の精査が必要である。」と、阿って見せた発言の背景にあるものは、何か。当然、オリックス側には、固定価格買取制度上、年々低下する買取価格を現状固定したいという意向がある。そして現況では、制度の申請時に発電地の貸借同意書の添付が要請されている、が、これは、再生エネルギーの普及への協賛とは別物である。買取価格は電気料金に上乗せされている以上、供給側の利益は消費側の不利益である。行政として、オリックス側に加担する理由はにはならない。従ってそれに連動した、下本昇議長の発言も全く意味を為さないし、そもそも議決事項でなければ、特別調査委員会が設置できないという自治法上の規定も存在しない。それでは、過去の「地方創成特別調査委員会」立ち上げは、一体何だったのか。説明してもらいたい。完璧な詭弁である。さらに「排出土砂量精査が必要」と認識するなら、むしろ議会は、何を置いても、特別調査委員会を立ち上げなくてはならないことになる。オリックス側を参考人招致して、土砂量の排出量算定根拠とその処理方法をヒアリングすべきである。それをしないからには、明らかに、町側と議会側が、既に、この発電計画を容認するという内々の合意で動いているとしか考えられないことになる。下元昇議長が、槙野章議員の本会欠席事由の政治倫理上の問題も含め、議会は、以前にも増して、見える可ではなく見えない可の一途を辿っているのは、誰の目にも明らかだという事に、気が付ついていないとすれば、議会の見える可を公約して議長選に出た以上、議長不適任としか言いようがない。尤もこの下元登議員の世評は、「二枚舌」である。この「二枚舌」は、欺きと阿りの回転車を回し続けて、ついに5期目に入った議員歴が生み出した世評であるので、一定の信ぴょう性がある。実に今回の発言にも、彼の特質、つまり下元昇議員の本質が現れている。

 昨年12月に議会からの要望に基づいて議員報酬引き上げ議案を上程した四万十町長、中尾博憲という人物についても、ここで、その来歴と言行を改めて辿ってみたい。現四万十町長中尾博憲は、窪川町職員を34年間務め、早期退職後(母親の介護と言う理由であったと聞く)町長選に初出馬した。その時は落選した、二度目の選挙で、高瀬満伸氏を破って初当選し、二期目は無投票で現在ニ期目である。私は5年間この人物と議会で対峙したが、議場外発言を議場で否定したり、覆したこと、多数回に及ぶ。以下列挙する。

1、初めての選挙時、「四万十町職員給与の2割削減」を戸別訪問時に、有権者に対して約束して回った。4年後ではあるが、そのことが念頭に合ってか、初登壇の議場で、「選挙時に誤解を与える情報があり、職員の皆さんにはご心配をかけたが、公務員給与は現状維持で行く。」と発言した。

2.海洋堂カッパ館落成式典の場で、「微々たるものではありますが、ホビー館設立時にはご支援させていただきました。」と発言した。この微々たるものとは四万十町ホビー館施設整備費のことで、2億9千万円であり、微々たるものでもなければ、町の施設の指定管理者が海洋堂であるという事なので、ご支援でもない。おまけに、この発言自体を議場で否定した。

3.二度目の選挙時に知人宅を戸別訪問し、知人に向けて、「議会とは是々非々で行く。」と言った。ところが、当選後議場では、「議会とは融和路線で行く。」となり、私が一般質問した「西の川取水問題」(当時の現職議員田辺哲夫氏に関する水道料金未納疑惑事件)では、「現職議員の責任を問う考えはない、行政の管理責任を精査する。」と答弁した。

4.平成30年度12月定例会で、議員報酬時期上げ議案の可決後、「ここ本会議場で反対討論出るのは想定外であった。本会議までに議員間で議論を尽くして、まな板の上の鯉状態であって欲しかった。」と発言した。

5.令和元年9月定例会において「大藤発風力発電事業計画」に対して、「特別調査委員会とかではなく、議員を交えた協議の場を設けることを検討する。」と答弁した。

 因みに4と5は、虚偽答弁ではなく、中尾町長の議会に対する由々しい「侮り」発言である。この侮りと迎合は、中尾町政の本質であり、これは選挙事務所で私に対しても発揮された。以下は、中尾町長夫人と私と中尾氏本人との会話である。

 

西原:この4年間、御主人は、出馬に向けて何らかの活動をしていたのですか。

夫人:主人は町長になりたい訳じゃないんです。町政に課題があるので、他にやってくれる人が居ないので、仕方なく自分が立ったのです。

西原:それではご主人は、町政にどのような課題があると言っているのですか。

夫人:そんなこと私に聞かれても困ります。知識がありませんから。(知識がないのに、夫人は自ら私に対して、「夫は町政に課題があるので出る、町長になりたいわけじゃない。」を強調した。)

西原:中尾さん、正直、奥さんに失望しました。なぜ町政に課題があるから、他にやってくれる人が居ないから、夫が立ったと言っておいて、その課題とやらを聞けば、いきなり知識がない、なんてことになるんですか。

中尾:俺に聞いてくれれればよかった。女房は関係ない。

西原:中尾さんは、戸別訪問でほとんど選挙事務所にいないじゃないですか。有権者が来ても、直には聞けない。奥さんは、選挙事務所に日参しているのだから、候補者の代弁者になるのが当然じゃないですか。関係あると思いますけど。ご夫婦でそのような安易な姿勢とは。もうここには来ません

 それで私は、二度と選挙事務所に出入りはしなかった。当時その選挙事務所に詰めていたのは、現職議員では水間淳一、下本昇の両氏であった。出陣式で挨拶をしたのは、味元和義である。無投票となった二期目の選挙時も出陣式が同一の場所で行われていた。その時の挨拶も恐らく同一人物であろう。内容は、「約1名(私の事である)を除いたらオール与党である。」とか何とか、実に和気合い々であったと聞く。そりゃ要望を出したら、議員報酬上がるはずだわ。この選挙事務所での一件は、後日、中尾町長本人からは、役場管理職つまりかっての同僚に対して、「いらん事言うき、(私を)おん出した。(土佐弁注釈:余計なことを言うから、選挙事務所から追い出した。)と語られたらしい。議会でも常々、「この人は、論点の把握ができない。」とは思っていたが、案の定である。上記言行録を読んでもらえれば分かるように、この人物は、ありとあらゆる所で対面相手に尻尾を振り、機嫌を取るという習性を発露させている。これは犬で言えば駄犬の習性である。従って、オリックスに対しても、この駄犬振りを全面的に発揮していることは想像に難くない。先日、四万十町役場は、男性上司が女性部下を下の名前で呼ぶ職場と書いたが、これは窪川町役場時代にも始終散見された。中尾町長は、窪川町役場に34年間もいたのである。町長になったからと言っておいそれと、その習性は抜けるものではない。今でも、実に嬉しそうに、総務課の女性職員に対して、「美貴ちゃん、この前はご苦労さん。」とか「彩ちゃん、お茶お願いね。」と声をかけて、執務室に入っていくのを目撃した。そればかりではない。あまつさえ、議場で、休憩時間に当時の宮地章一議長と目を合わせ、舌をベロット出してみたり、議会本会議の休憩時にも廊下に出るやいなや、「おい、久子」と当時の農業委員会の事務局長(議会答弁者である管理職)に声をかけたのには、さすがに私は、眉を顰めざるを得なかった。だが、これがいかに見苦しいことであるかに、本人が毛頭気付いていない。駄犬は、ある種の町民からすれば、おだてやすく、調子に乗りやすく、経済的恩恵にあずかりやすいという事か。町民ばかりではない、「給与は現状維持で行く(町長意志で削減しない、人事院勧告に従い年々上げる。実際中尾町政下では毎年上がってい)」を約束された職員もその中に含まれ、肝心な監視機関であるはずの議会も、この駄犬振りを利用して、町長提案という形で議員報酬を上げ、経済的恩恵に預かることにまんまと成功したのである。この、現状の醜悪さ、下劣さは、経済的恩恵とは縁遠い、大多数の四万十町民にとっては、目にこそ見えないが、しわじわ身体に影響を及ぼしてくる、大気汚染のようなものではないか。公益どころか、公害である。公益ではなく、公害を撒き散らすこの町長と議長の製造物責任四万十町民、どう取る。

四万十町議会議員  西原真衣