呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(70)

            風力発電はどうなる

 

 大藤風力発電所は、予想出力が146MW(最大設置基数49基)で、実現すれば日本最大級となる。伊方原発の発電能力が、運転終了となった1号基と2号基を覗いた3号基だけで85万kwなので、伊方原発3号基のおよそ1/6の出力となる。四国電力HPによれば、伊方原発は四国の電力需要の40%を賄っていたらしいので(1号基2号基3号基全部合わせたの合計出力合計220万kwで計算)その割合で試算すれば、大藤風力発電所は、四国の電力需要の2.7%を賄える計算となる。それはさて置き、風力発電事業計画にはこの規模からしての懸念が町民から少なからず寄せられている。

まず土砂災害であるオリックス社による排出土砂の試算値もなく、「山で収支均衡」としか方法書には書かれていない以上、懸念が払拭できないのにはそれなりに合理的な理由がある。山の山頂は知人の陶芸家武吉氏によれば、傾斜角度40度であり、このような所に高さ120m , 直径80mの飛行機並みの大きさの風車を49基も立てる(占有面積1640ha, 管理道 9km)のは、工事自体がそのまま大規模土砂崩れを誘発する、なぜなら幡多地区の山は水成岩で(過去に海底であり隆起して山となった)なので大雨が降れが容易に土砂化すると、言い切っている。参考までに武吉氏が送ってくれた図面を挿入する。武吉氏は2万5千分1の地図から一等高線から立体化し模型を作成した猛者である。因みに1枚目は、予定通り最も風況が良好な山の稜線上に設置した場合の図面で、2枚目は四万十町側の反対を受けて四万十市側に10m程度ずらした際の図面である。

 

www.dropbox.com

輸送時にも作業道の拡幅と尾根までの新設で、多大な土砂が出そうである。この件が気になって仕方がない。鮎には影響がないのか。ここにしかない貴重な生活資源且つ観光資源の四万十川の価値を毀損していいのか。おのずと答えは出て来るのではないのだろうか。ヤイロチョウだって絶命危惧種だからこそ貴重なのである。絶滅危惧種が来るような豊かな森が近くにあると言う事だ。その豊かさは本質的に換金できなし、一旦失われたら取り戻せない。オリックス社が発注する山仕事や20年の土地賃貸料が中尾博町長言うところの「経済的恩恵を受ける町民」側の理屈であるならば。その一自邸一過性経済的恩恵によって失われるものは、ここにしかない取り返せないものではないのだろうか。山は山主と林業事業体だけの物なのか。それであれば山の多面的機能の保全目的の補助金等受け取って欲しくはないし、今までの森林整備や木質バイオマスにかこつけた巨額の補助金は一体何だったのか。四万十町森林組合林野庁の委託事業として木質バイオマス事業委託料、7億8千3百万円を受け取っている。以下のサイトでそれが確認できる。

 

judgit.net

最近エレクトリカルジャパンという面白いサイトを発見した。種類別(原発、火力、水力風力、太陽光、地熱等)に切り替えられる発電所が日本地図上に蛍光色の丸の大きさで出力を表してプロットされていて、「見れば分かる」日本の電力事情となっている。是非ご一覧有れ。

agora.ex.nii.ac.jp

第一位は、「ウィンドファームつがる」で出力121.6mwである。二位は、「新青山高原ウインドファーム」で出力80MWである。四万十町に計画されているオリックス社の大藤風力発電所は、146MWである。稼働すれば堂々1位に躍り出る位大規模なのだ。「ウィンドファームつがる」は広い農地の中にある。

 

www.kankyo-business.jp

「新青山高原ウインドファーム」は、高原の山頂にある。

www.awf.co.jp

 

方や大藤は、日本で一番山の面積比率が高い高知県西部の四万十川流域の急峻な山の山頂なのである。ここに敢て大規模風力発電所を作るには、オリックス社にはそれなりの目論見があるのだろう。「新青山高原ウインドファーム」のHPに記載されている「風力発電を実現するには」部分には、

1.県民アンケートで75%の賛成

2.住居が近くにない

3.アクセス道路がある

4.高圧線が近くに来ている

とあったので興味を喚起され、問い合わせてみた。ところがは、1.県民アンケートで75%の賛成は、近隣の町が最初に設置した数基の風車の時のアンケートであり、当時は環境アセスの制度もなかったとの事であった。最も気になった2.住居が近くにない

は、最寄りの住宅が2.2kmの所にあり、曖昧ではあるがこのような表現となった(正直で実直な説明で好感を持った。)との事であった。因みにオリックス社の計画では、1km以内に10か所の住居があるし、全て「個人情報保護のため」地図を非公開にしているので、実直さや正直さは全く感じ取れない。3.アクセス道路がある、は県道があり、高原であるので観光道路として比較的上まで道路がついているが、それから設置場所までは別途道路の敷設が必要であったことを説明してくれた。最後に一番気になる排出土砂の処理方法について聞くと、浅い谷部分を埋めて崩れそうな危険性のある所では擁壁を設置したこと及び風車の基礎部分の傾斜を利用して、傾斜を平地化するのに切土を盛り土に使ったと、私のような素人にも分かるように簡潔に説明してくれたのである。この話を先述の武吉氏にすれば、「傾斜角度40度の山頂付近では、そのような工事自体が不可能であり、工事中に土砂崩れが起こる。第一あの山には浅い谷などない、地形が全く違う」と一喝された。わたしはこの部分こそ、オリックス社に説明を求めたい。なぜ四万十町議会は、特別調査委員会を設置しオリックス社を召喚し、説明を求めないのだろうか。それどころが、彼らの言い分は、以下である。

1.四万十町が反対しても四万十市が賛成すれば、立地をずらして風車は設置できるので、反対損になる(固定資産税の取りはぐれ、オリックス発注工事の取りはぐれ、貸借地代のの取りはぐれが生じる)。低周波音については国の基準に従うしかない。-堀本伸一議員

2.四万十市議会は賛成だとの噂を聞く―水間淳一議員

3.噂じゃなくて議員の一人から聞いている。稼働後の苦情対応は行政が窓口を設置すればいい―吉村アツ子議員

4.四万十町側には、木質バイオマス事業で立派な作業道が既に敷設されている。四万十市議会に施策を申しれたが、やんわり断られた。現状では話すことがないらしい。 ー古谷幹夫議員

これではまるで「一般町民座談会様放談会」の体ではないだろうか。土砂災害はそのまま四万十川の水質汚濁や水産資源に甚大な影響を及ぼすのではないだろうか。その懸念を払拭できる方向付けが本来の議会の仕事ではないだろうか。先日高知県環境共生課に問いあわせて、オリックス社作成の方法書に、「地形や地質が調査項目として選択されているか。」と聞いた。答えは、「されていない。」であった。次いで「知事意見(尾崎正直知事)には、「事業実施予定地には砂防指定地があり、急傾斜値もあるので十二分な環境影響の低減と回避に努められたい。」と記されています。」とも説明された。言い換えれば、強制力のない知事意見では、十二分な環境影響の低減と回避によって土砂災害が引き起こされない保障はどこにもないということである。普通に考えてみればこのような地形、地質の環境下で、1600ha、全長9kに及ぶ巨大な風車群の設置工事は、「住民生活の安心安全が担保できないし四万十川の水産及び観光上の資源価値も毀損される可能性が否めない」と自治体首長が英断して、事業推進の断念を事業者に本来迫るべきなのである。ところがここにはその「英断」がない。茫然とただ成り行きに任せているだけである。四万十川振興室長中井氏によれば、「地形と地質が調査項目に選択されているかどうかは覚えておらず、現在航空写真による測量が実施されており、知事意見を踏まえて今後は、地質面では文献調査を実施するのではないか。」などどいう始末である。四万十町は、四万十川対策事業を見越してこの人物を2年間環境省に出向させていたのである。それでこの有様である。中尾町長もこの四万十川振興室長中井氏も、環境影響評価に係る公文書を全く読み込んでいない。今まで目を通した公文書中最も有意な判断材料となったのが、風力発電事業の主務官庁である経済産業が設置した環境審査顧問会がオリックス社に提出を求めた補足説明資料と審査会の議事録である。

議事録には、ある顧問の発言である「土砂の排出量と処理方法の具体的記載がない。これでは方法書の体を為していない」が、はっきりと記録されている。以下が議事録のURLである。

www.meti.go.jp

ここで顧問から受けている指摘部分を読めば、オリックス社がどのような事業姿勢を持った会社であるかがよく分かる。首長は元より自治体職員とは、この様な文献を精査できて初めてその職責を果たせるのであるし、執行機関の監視機関である議会も同然である。彼らの身分の保証はそのためにあるのである。ところが、中尾町長と議会側はこのURLを認知していなかった。中井氏は「一瞥した」と言ってのけた。彼は町長も議会も全く懼れるに足らずなのである。ここで想起されるのは、9月定例会における田辺哲夫議員の一般質問項目「地元高校存続施策について」である。田辺議員は町長が、危機感に 欠け無策であるという叱責に続いて、いくつかの独自案を披歴した

1 自動車免許費用への助成金の拠出

2.在学中の社旗に出て有利な資格所得への助成金の拠出

3、四万十町職員への地元高校採用枠の創設

1,2は普通高校の教育課程の趣旨からの相当の逸脱であるが、3は、熊谷総務課長答弁「地方公務員法違反(採用の公平公正)に該当するので不可能である」は、檮原町が実践している納得できないと締めくくったのを私は半ば呆れながら傍聴席で聞いたのだが、この中井氏は愛媛県出身であることを最後に付け加えたいと思う。地方公務員法を遵守して能力ある職員を広く採用しても、上司や議会の査定力が怪しければ、その職員の手抜き仕事がまんまと通用するという事である。田辺哲夫議員、現職議員としては、「隗より始めよ」ではないだろうか。

 

西原真衣