呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(71)

 

                     酔っ払い男はなぜ女に電話したがるか  

 

 議員時代以来久しくなかったが昨夕、酔っ払い匿名男が私に電話をかけてきた。匿名、酔っ払い、憂さ晴らし電話である。性別はもれなく男である。議員であり(あった)、女であるから電話したくなるのである。憂さ晴らしには格好の相手と見なしているのだろう。夕食時にうっとおしいことこの上ないが、ここでやり過ごしてなるものかという持ち前の闘争心がむくむくと頭をもたげてくるのを感じながら、受話器を握り続けた。要は、何が言いたいがために電話してくるか、である。しかも、匿名で、酔って。参考までに会話を再現する。

男:議会を見ているがマニュアル通りで面白くもなんともない、あんたにも当初は腹を立てていたが、今になってみるとあんたのほうがましだったような気がして来始めた。もう一回議員をやる考えはないか。

私:考えはないが、この機会に、私の発言のどのような所に腹を立てていたのか教えくれる気はないか。

男:当時付き合っていた百姓の所に行っていた彼女が、よくあんたの悪口を言っていた。「しょっちゅう来てあの女は一体何だ。」

私:彼女は関係ないんじゃないか。

男:彼女に嫌われるのは嫌やったも。

ここでこの男が「真正バカ」であることが判明したが、妙な啓蒙心に駆られた私は続けた。この辺が、私のわきが甘いところである。

私:私が議員を今さらやったところで何も変わらない。それより多くの町民が今の議会に「デキレースは止めろ。」という声を届けて欲しい。一般町民は匿名で構わない。その声が届いていないから議員連中は、高を括って「出来レース」を続けているのだから。

男は少し神妙な風情を見せた。

男:あれ、質問内容は事前にわかっちゅうがやろ。

私:質問通告というのがあるから、分かっている。

男:議員に言ったことはある。

私:どの議員に言ったのか。

男:それは言えない。

私:なぜか、議員名が言えない理由はないだろう。

男:自分の身分が分かるし、妻の立場にも影響が出る。

「身分」ってなんだろう。「特定化される」という事以上のニュアンスが感知される。役場職員かもしれない。いや役場職員にしてはバカ過ぎる。けれども当時の彼女が「あの人ちょっ中来てなん何だ、忌々しい。」と私のことを言っていたとすれば、そこは、間違いなく役場である。

男:あんた職員の時間外手当のことを言ってただろう。

私:言いましたよ。

男:今からあんたにおいしい話を教えてあげる。

男:彼女から聞いた。真面目に仕事があって残業している職員もいる。が人によっては、家のローンの返済のために計画的に残業している。

私:残業については、「職員が特定化される恐れがある」を理由に職残業部分の務内容が議会で明らかにされてこなかった。情報公開条例と個人情報公開条例の解釈が間違っている。「職務内容は個人情報に該当しない」と明記されている。

男:そんなことはどうでもいいから。

私:どうでもよくない。ここが最も重要である。

この匿名酔っ払い男は、「おいしい話」で私の歓心を買えると本気で思っているのだろう。議会質疑の膠着状態の本質には全く関心を示さない。恐らくそのような歓心しか示さない議員を見続けて来たのであり、それらの議員と同様、条例などというものに関心が端からないのだ。第一おいしい話」などという表現が下劣である。名前は出せないと言っていながら、おそらく彼女が役場関係者(臨時職員)であったから知り得た内輪情報であり、その彼女が役場に日参する私に秘かに反感と嫌悪感をたぎらせていたという状況証拠を提供しているではないか。いずれにしてもこれ以上話してもせんなきことである。だがこれだけは言っておかなくてはならない。

私:あなたは妻(女)に配慮しているように見せかけて実は妻(女)に依存して生きている男なんですよ。(私に酔って電話してきて、議会放送にかこつけて、別れた彼女のことを延々と引き合いに出す。この男は別れた彼女に電話する代わりに私に電話して、彼女の思い出場を私に聞かせて、彼女を偲んでいるのである。その彼女が私を嫌いで、関連で私のことを思い出したのである。何というずうずうしさ且つ往生際の悪さだろう。)今の議会がデキレースで怪しからんと思うのなら、現職議員にそれを伝えるのが先決じゃないか。同じように酔っぱらって、他の男の議員全員に同じ内容の電話をしなさいよ。

ガチャと電話を切った。二度と電話してくるなと思いながら、そこは生来のしつこさでNTTの番号探知機能を使い、この男の電話番号の探知を試みた。「番号登録がありません」と応答された。携帯から固定に電話してきたのである。発信元が分からないような方法で、匿名で言いたいことを言うために電話してきたのである。後日文句をいわれたら、会話内容をブログに書いていいかどうか本人に許可を取りようがなかったと、言ってやるつもりだ。僅か5年間議員をやっただけでここまで警戒心、猜疑心が強くなるのである。

 議員という立場と女が合わさると、社会的正義感の皮を被った「やっかみ、妬み、嫉み」という人間(ここでは男の内面にある)の原初的な動物感情を、ぶつける格好の餌食にされるのだ。「あんた議員やろう。話を聞かんでええがかよ。次の選挙が気にならんがかよ。」という恫喝である。その根底にあるのが、男の中にある私に対する生意気な、気に障る女という、自己処理できない感情である。こっちはこのような低レベルの男相手に、「礼儀正しく対応する」という感情労働を強いられるのは今更まっぴらである。私は幼稚で馬鹿な男のケアワーカーを買って出るほどのお人良しではないのである。質問通告の事も今の議員連中の心理構造の事も時間手当に係る条例の事も教えてやったではないか。有難いと思え。

 ところで、本題に戻る。注目すべきは、男が使った、この「身分」という言葉の使い方である。今を遡る事10年、衆議院予算員会を傍聴したいと思った私は、衆議院HPに記載されている「衆院予算員会の傍聴には国家議員の紹介がいる」を見て、山本有二事務所に電話して、「選挙区の人間だが、予算員会の傍聴を紹介してもらえないか。」と頼んだことがある。すると、前田真二郎という名の山本有二の秘書から電話がかかってきて、「あなたの身分について伺いたい。」と聞かれたのである。「身分」って何と答えればいいのか。「自民党員」でもないし、唯一思い出すのは、実弟の結婚式に山本有二出席し、隣の席にいたので原発事故についてナトリューム冷却がどうのこうのの話をしたことと、総務省とかかわりのある日本電算企画という団体が発刊している、「補助金総覧」について、新庁舎の本会議室お披露目に見かけたときに何らかの質問をしただけである。これが山本有二との接点の全てなので、「身分」には答えようがなかったが、とにかく、衆議院予算員会の傍聴を紹介するか否かは、自民党としては「身分」によるらしい。ここで政権与党である自民党という政党を認識する上でのキーワードとして「身分」が浮上して来た。これに絡めて非常に気になったのが、先日の新聞報道である。以下、9月26日(土)配信デシタル朝日から引用する

 杉田氏は同日開かれた、来年度予算の概算要求の説明を受ける党の内閣部会などの合同会議に出席。会議は非公開だったが出席者によると、性暴力被害者を支援するための相談事業に関連し、杉田氏は元慰安婦支援団体に触れたうえで、事業を民間団体に任せることを批判。「女性はいくらでもウソをつけますから」と発言したという。  会議後、杉田氏は朝日新聞などの取材に「そういう発言はしていない」と否定。元慰安婦支援団体を話題にしたとされる点については「聖域になり、誰も切り込めないようになってはいけないという指摘はした。」と説明した。

この発言を巡り、まず性被害者の支援団体フラワーデモが議員辞職を求めるネット署名を開始した。これは、まもなく10万筆に届こうとしているらしい。私も署名した一人である。この署名サイトで、「本人は否定しており証拠がない以上これは魔女狩りではないか。」という書き込みを発見した。実に一見もっともらしい。理があるような錯覚が起こる。これは危険だ。そこで早速自民党本部に電話した。

「杉田議員の発言の真偽を確認したい。どの様な方法があるか教えて欲しい。」と切り出した。

自民党本郡で担当部署に回された。野太いドスの効いた声音の男性が応答した。私は官僚とはやり取り歴があるので全く声音が違う所が面白い。

私:報道によれば非公開と書いているが、各府省の概算予算要求資料は地元の議会の議会図書室で見たことがある。この資料自体は非公開ではないのではないか。

自民党本部:全部が電子化されている訳ではない。自民党は長年政権与党として議長会や知事会と年密接な関係にある。議長会を通じて、或いは都道府県会館に入っている各県の東京事務所を通じて概算要求資料が、都道府県に渡り、それに基づいた県(知事)からの要望聴取が為されてきた。内閣部会というのは自民党の内部組織であり、予算要求に対する自民党の承認を得る場でもある。慣例としてずっと非公開で開催し、議事録も取っていない。会議開催議後本題に入る前に、報道された共同通信等の新聞記者には退室してもらっている。その後彼らは会議室の扉に耳を付けて会議内容を伺っている。議事録を取らない理由はその方が、全体的に和やかな雰囲気の中、フリートークに近い自由闊達な議論が出やすいからである。一々議事録を取らないからギスギスしないで和やかにやれる。杉田議員発言は、本人が否定している以上、それが全てだと捉えている。

 結論から言えば、発言の真偽は確認しようがないのである。結果として、杉田水脈議員に「女である杉田水脈がいくらでも嘘がつける」環境を提供しているのは自民党本体である。この自由闊達にものが言える環境こそが、この女性議員が自己を他の女性議員から差別化させ、自民党女性議員としての商品価値を吊り上げさせる格好の機会を与えているのである。ただしここでの商品価値とは、あくまで政権与党たる自民党幹部から見た商品価値である。「煽り」がこの女性議員の本質であり、夫婦別姓や性被害の救済という「政治的公正さ」というものに反感と苛立ちをつのらせている層の「感情の救済役」として杉田水脈は実に使いでがあるのだろう。実際ある情報筋によれば、安倍晋三は、この杉田水脈について「杉田さんはすごい」と周辺に漏らしていたという。結局政権与党にあって野党にないのは、人間を動かすのは、特に人間の原初の闘争本能が喚起される選挙結果に作用するのは、人間の自尊感情を司る「好き嫌い感情」であり、決して「政治的公正さ」はないという、深い人間理解なのである。さすが長年の政権与党に蓄積された人間理解の深さ、と一先ずは認めておきたい。それに第一煽れば勝ちとは、SNS時代に適合している。さて、署名を受け取った、野田聖子橋本聖子の御自民党女性議員の対応を注視してみよう。稲田朋美の対応も注視対象である。日本に女性議員が少ない真の理由が徐々に炙り出されてきそうで目が離せない。

 

追記:「総理」の著作があるTBSデレクターで元ワシントン支局長の山口敬介氏を訴えた伊藤詩織さんとテニスの大阪直美さんが、米誌タイムの「Woman  Of  The  Year」に選ばれた。伊藤詩織さんは杉田水脈応援隊の漫画家「はすみとしこ」も訴えている。「はすみとしこ」は伊藤さんをSNS上でイラスト入りで枕営業の失敗」と揶揄しており、杉田水脈は実名でこれに「いいね」を押している。因みに山口敬介氏は伊藤さんが「嘘をついている」と言い張っている。嘘は嘘でも、日本人一般を騙すよりタイム誌を騙す方が遥かに難易度が高そうであるので、現況ではタイム誌の評価の方に肩入れしている。

西原真衣