呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(69)

                                         議事録がおかしい

 裁判の次回公判は、10月13日である。裁判は非常に悠長で、書面の受け渡しと次回日程の決定で10分程度で閉会になると噂では聞いていたが、それは本当だった。私はこの裁判の行方には絶大な関心を寄せている。というのも四万十町議会は、議事整理が正常から逸脱しており、その結果、「質問に答えない」事件が多発し、町民の町政を知り、町政に参画する権利が著しく侵害されている。それは、ざっとこの20年くらいはずっとそうである。エピソードを挙げれば切りがない位あるのだが、今回は係争中の裁判の争点に係る一件を紹介したい。議員報酬引き上げによって高知県内町村議会で最も高額な議員報酬となった四万十町議会が平成21年に制定した議会基本条例には、23条に以下のような記載がある。

(議員報酬)

第23条 議員報酬は、そのあり方を含め、その額が議員の職務及び職責に見合うよう適時に見直しするため、特別職報酬等審議会条例(平成18年四万十町条例第36号)に定める審議会の意見を参考にするものとする。

2 議員又は委員会が議員報酬の条例改正を提案する場合は、専門的知見並びに参考人制度及び公聴会制度を十分に活用し、明確な改正理由を付して提案するものとする。

 

原告側の谷脇弁護士は、この23条を議会側が「潜脱」していると状で主張している。「潜脱」とは聞きなれない言葉だが、調べると、「ある方法である結果を得ることが法的に禁止されて場合に、別の手法で同じ結果を得て法に触れないようにすること」と説明されている。

 23条の2項で議員報酬改正を試みれば、当然議員提案で公聴会の開催や参考人招致が必要となる。この手法による結果(議員報酬引き上げ)を潜脱する目的で、1項による手法を町長側に「指南した(要望した)」というのが、「潜脱」の本旨である。中尾町長が、議会の「指南」に関わらず完璧に自発的に議員報酬引き上げ議案を上程していれば、1項の適用となり何ら問題はなかったのである。「指南」を受けて議会対策目的で議員報酬引き上げ議案を上程し、「反対意見が出たことに違和感がある。議案上程までに議会内部での議論を尽くした議会意志の徹底的な統一が本来必要だったのではないか。言葉は悪いが、議員の皆さん達には、この場では、言葉は悪いが、言わば「まな板の上の鯉」でいて欲しかった。」という趣旨のことを議場でおめおめと発言し、議会との裏取引の実体を暴露してしまったのである。何という愚かしさだろうか。この部分が、「議会と行政の癒着」を他の解釈の余地なく物語っている。なぜなら議会とは法律上は議決機関であり、その議決権能は議案に対してのみ行使されるからである。従って議案上程前の議会意志の意思統一などは政党の党議拘束以外は、法的には想定外である。ところがあろうことか、それをより完璧にやるべきであったと発言した中尾町長とは、法律の理解もない、実に暗愚な町長であるとしか言いようもない。実に暗愚な議会と暗愚な町長(行政の最高責任者)が結託して、それぞれの集団(行政と議会)の利益の実現を目指している浅ましい姿こそが、議員報酬引き上げの背景にある四万十町の実態そのものである。かくて議場での中尾町長発言は、中尾町長の資質と能力の限界を浮き彫りにしたが、議員は必ずしもそうではない。議員は16名であり、発言の多寡があり、原則的に一般質問も任意である。例を挙げれば、槙野章議員や吉村アツ子議員は議場は愚か委員会等でも殆ど発言しない。町民が議員か国の資質や能力を知り得る範囲は極めて狭い実態がある議事内容を知るためには、議会HPを丹念にチェックし、委員会や全員協議会を傍聴したり、議事録(完成までに半年乃至1年かかる)を開示請求して読み込むしか方法が無い。実に理不尽ではないか。それはさておき裁判に戻れば、訴状の争点は、議会基本条例23条の潜脱である。それで私はこの23条の解釈の議事をマークして、傍聴や議事録入手を試みた。果たして議事録はどうなっていたか。

 この議会基本条例23条については、4年間に渡る議員定数等(報酬)についての調査研究期間を通じて一度も耳にしてこなかった。尤もこの調査研究を実施したのは、議会運営委員会であり、私はこの委員会のメンバーではなく全員協議会と呼ばれる議員の全体会で、議員定数と報酬についての議会運営委員会の調査研究結果の報告に基づく議論に参加しただけである。従って議会運営委員会で、この報酬部分がどのように審議されて来たかの実態は完璧には承知していない。ただしこの部分の議会運営委員会の議事録は手元にある、が議事録には基本条例23条への言及は一切ない。恐らくここに「潜脱」が一部有力議員(酒井祥成、橋本保、掘本伸一、下元昇)によって目論まれていた可能性が潜んでいる。さて、改選後に組成された総務常任委員会(委員長古谷幹夫、副委員長水間淳一)が、何を思ったか、「四万十町議会運用基準」や「四万十町議会基本条例」の見直しに着手した。令和元年の4月頃である。これは丁度、裁判を提訴した山本たけし氏、岸本英明氏、私西原真衣の3名で、議会に対して連名で公開質問状を出した時期と一致する。公開質問状への回答は今だないが、それを読んで彼らは、議会基本条例23条の解釈上の理論武装をする必要を感じて、それに着手したという内実があるのではないか。これが6月21日と7月16日の総務常任委員会議事録に残っている。7月16日分は、既にこのブログで公開しているので、今日は、時系列的には前になるが、6月21日分を公開したい。以下である。

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圧巻は、古谷委員長発言:暫時休憩にして意見を取りたい。である。実に不自然で作為的ではないだろうか。非必要な休憩の宣言であり、阿吽の呼吸の様ないものが感知される一幕である、元より議員の公式の場での意見は、全て町民に開陳されるべきであり、そのために議事録があるという認識が共有されているとは言い難い議会ではあるが、私が事あるごとに指摘してきた議事録の不備(恣意的な休憩の取り方や議事録作成の異常な遅さや公表しないこと)を指摘するたびに、発話内容が雑談的とか、不規則発言(会議規則違反)が多いとかの方便を並べたててきた下元昇議長であるが、そのようなことは本来抗弁できることではない。

休憩後には、意見の集約らしき内容が述べられているが、元々議会が制定した基本条例である。既に制定された条例の条項毎の解釈は、各議員に帰するべきものである。彼らは公式な条例の公式な制定権者であり、解釈を個々に求められる立場である。議会で統一された公式解釈などは必要ない。だから各自が議決機関の構成員たり得るのである。ところがここが不問に付されている。彼らが実感しているのは、議決権という公権力を党議拘束的に駆使して可決に持ち込み、まんまと高知県町村議会随一の高額な議員報酬引き上げに成功したという成功体験だけであり、この成功体験の毀損に繋がる可能性を内包する議事内容は、取り合えず隠避することに異論などあるはずもないのである。因みにこの総務常任委員会に属する議員名を再確認する。委員長:古谷幹夫、副委員長:水間淳一、下元昇、堀本伸一、吉村アツ子、田辺哲夫、このうち議員報酬引き上げ時には田辺哲夫以外は全員議員であり、全員が引き上げに賛成しているという事実は見逃せない。

 さらに委員会の再開直後の古谷幹夫委員長発言に注目してみよう。「解釈が大まかに二つに分かれるので、専門家の指南を仰ぐことに異議はないか。」である。これでは、この異なる解釈内容が全く分からない。それは、もやや議事録ではなく、単なる集約内容の確認である。議事録とは議論の足跡であり、議員報酬引き上げ時に議案上程前に本来議会内部で徹底的に行うべきであった討論がこの議会基本条例23条の解釈部分である。当時議員であった私自身も、非常に間欠的に、忘れた頃に取り上げられた2年余に及ぶ議員定数と報酬に関する議会内部の議論の中で、この議会基本条例23条の解釈が欠落していることにさえ気が付いていなかったことを白状するしかない。その位議会基本条例は全般的に議会運営の実務上、俎上に上がる事が無かったのである。「理念を書き連ねているので、実務的な適用場面で取り沙汰されなかった。」と言えば言い訳にしか聞こえないだろうが、そもそも議員報酬引き上げがそのスタートラインから全議員の出席する場で議題になったことはない。議会運営委員の視察結果を全員協議会で報告しながら、議員定数と報酬についての個々の議員の意見が聴取され(ここは議事録に残した)、いわば議会内部で言質を取られる格好で、噛んで含めるような暗黙の意思統一(賛成投票行動への促し)が目論まれたのである。視察に行ったのは議会運営委員会のメンバーであり、視察先の選択は、当時の議会運営委員会委員長の堀本伸一議員によれば、当時の議会事務局長宮地正人が、議員定数削減and議員報酬引き上げ」でネット検索して作成したリストから選んだ」ということらしい(現事務局著長谷べ卓也が堀本伸一議員より聞き取り)。つまり、議員定数を削減した後に議員報酬を引き上げた議会を検索したといく事である。調査研究と言いながら到達地点が既に決まっているではないか。そしてそれを決めたのは、一部の有力議員である。この辺の実証が潜脱の証左と成り得るのでは、と私は踏んでいるのである。もう一つの証左は、議案可決直後に議会運営委員会と全員協議会を緊急的に招集し、選挙時に議員報酬引き上げに言及する事への封殺が目論まれたことである。以前にも書いたが、確認のために、ここで再び掲載したい。

堀本伸一議員:今日は全部録音する。議会を混乱させ、町民に騒動を引き起こした責任を感じ町長、副町長に謝罪した。自分には、反対討論に立った議員から謝罪の言葉が無い。

注釈:この堀本議員は、今総務常任委員会の委員で、23条の解釈論で意見を述べる際には、休憩(議事録に残さない)を是認している。この対比がこの議員の本質を物語り、且つ義騎亜基本条例23条の潜脱の証拠ともなる。

古谷幹夫議員:反対意見が出たこと自体が不快であった。議会で事前に決めたことを本会議場で覆した。責任を取ってもらいたい。

釈:この議員は農協出身者であり、農協組織に置ける意思決定の局面と議会に置ける意思決定の局面のフェーズの違いを理解していない。議会とは議案に関してのみの合議体である。本会議が合議過程の実践場面であり、議案提出前の意思統一が、「談合」に当たることを端から理解できないのである。議員として持つべき基本的な認識に欠ける。

下元昇議員: この件を(選挙時の)政争の具にするな。

注釈:本会議場で、議員報酬意見取時の議事録を自席に持ち込み、「ここに議事録があるが、反対討論した人間は、この場では議員報酬は引き上げるべきと発言している。」と本会議場を、選挙前の政争の場にしたのはこの人物本体である。議案可決後の休憩時の議員控室ではこの人物の高笑いが響いた。

以上の3議員が今、議会基本条例23条の解釈を委員会の席で開陳するに当たって、

「暫時休憩」を臆面もなくやっており、それに水間淳一議員や吉村アツ子議員(共に議員報酬引き上げ賛成)が易々と追従していることの浅ましさを四万十町民は知る必要があるのではないだろうか。これが、我々町民が選出した議員達が公式の場でやっていることである。彼らは果たして議員報酬引き上げに値するだろうか。ハムレットのセリフを捩って、

彼らは報酬面で正当に評価されているのか否か、それが問題だ(高知県町村議会で最も高い報酬に値する議会か)

と結びたい。

西原真衣