呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(53)

 議会が職員時間外勤務をどう審査したか

4月21日総務常任委員会を傍聴した。議事は、

事件1:職員の時間外手当について

事件2:執行部からの説明について

事件3:その他

以上が議会HPに掲載されていたので、傍聴に行くことにした。事件1は、古谷幹夫委員長の説明するところによれば、「同僚議員の一般質問を受けて議題とした]

との事であった。説明のために委員会に招聘したのが、新総務課長熊谷敏郎氏と副課長人事担当小嶋氏である。3席用意された傍聴席には、既に資料が配布されていた。

資料1:過去3年間課別月別時間外勤務総時間数

資料2:過去3年間年間時間外総時間数上位10名(職員名アルファベット表記・所属課明記)

資料3:米々フェスタ職員業務分担及び充当時間一覧表(職員名表記)

「同僚議員の一般質問を受けて」の同僚議員とは、ほぼ間違いなく、味元和義議員であると咄嗟に思ったが、それはそれとして、事前に総務課に資料を作成させたこの調査目的は、一体どこにあったのだろうかと考え込んでしまった。というのも、上記資料1,2では、課内のどのような業務で時間外が発生しているかがさっぱり分からないからであった。又それを議員側も質疑しない。ただ、例によって、堀本伸一議員が十八番を開始した。

堀本伸一議員:自分が最も懸念するのは、これ時間外調査によって職員が意欲を失うことである。職員はなべて町民福祉の向上のために働いているはずである。時間外が恒常的に発生しているのであれば、正規職員を増やす方向性が望ましいし、このような質問が、今後議会で出てこないことが望ましい。

田辺哲夫議員:決して時間外が良くないと一律に思ってはいないが、時間外手当目的での時間外がないとは言えない現状があるのではないか。そこは管理職の責任になる。

水間淳一議員:時間外勤務はどのような手続きで行われ、管理職は業務内容をどのように把握しているのか。

彼らは、明らかに追及する気がないのである。不必要な時間外勤務を抑止するという本来の町民福祉の向上の視点に立てば、時間外勤務が発生している業務内容の経年比較によって時間外の発生要因が人的なものであるのか、業務内容自体であるのかの判別が、まず必要であるのも関わらず、ここには意識的に決して踏み込もうとはしない。又これに阿吽の呼吸で呼応するかのように、熊谷新総務課長は、応答したのである。

熊谷総務課長:時間外の発生要因には、恒常的、時節的、突発的なものがあります。自分も財政班に居たので、正しく時間外勤務が常態化していた訳です。(ところが、過去3年間の時間外上位10位の個票は課別に全くランダムであった。財政班が例年上位を占めていなかった。)最も良くないのは、上司への申告なしの時間外です。今働き方改革で、月80時間以上は産業医との面談が勧告され、また100時間以上は強制的な面談が義務付けられています。ただ、過去3年間の上位10位の時間外総時間の推移を見れば一定減少しているので、議会でご指摘を受けた効果かなと、ここは、非常に喜ばしく思っています。

玉虫色の答弁を志向していることが、ありありと見て取れる。御立派とまでは思わないが、かなり良くできている。少なくとも議員側とは雲泥の差である。議員の体面を立てながら、職員からの反感もかわしたいのである。実に公務員の鏡である。骨の髄までの保身なのである。ここで、最後に田辺哲夫議員が、自分の見せ場を作るべく、発言した。これはいつもの事である。

田辺哲夫議員:時間外が本当に減っているかは、上位10人じゃ分からない。職員全体の資料がいる。

熊谷総務課長:上位10名の傾向から全体の傾向は推測できるので、減少傾向にあると捉えています。

これには田辺哲夫議員は、反論しない。職員全体の時間外総時間数の推移は、ばらつきによっては、増減の傾向が異なってくる可能性がある。総務課が作成したザル的な統計資料を装ったものからさえ、伺われることはもっとあるはずだ。

古谷幹雄委員長:次回は全体の時間外総時間数が分かる資料を用意してもらうことにして、この議事はこれで終了したい。

注釈:時間外手当総額は決算から試算できるはずである。職員の定数管理ができているという前提で、手当額と時間数は合致する。議会図書室で決算資料から自作すればいいだけである。それにそもそも、150人は下らない非正規職員で一般行政職の事務補助に従事している人役を度外視していること自体で、本来の時間外発生調査になっていないのである。それに、最も肝心な業務内容の把握が欠けているので、不要な時間外を削減できているかどうかは、依然不明なままである。時間外勤務を本会議、一般質問で繰り返し指摘するという同僚議員の手抜き仕事の効果が精々、この上位10位までの時間外総時間数減少結果である。本会議で取り上げると時間外が減するという現象自体が、不要な時間外の発生を物語っている。それにしても何という効率の悪い、議会側の隠居仕事と、それに便乗した危機感に欠けた過疎地の役人仕事であろうか。彼らは決して互いに対峙しない。ただ弛緩と存続志向という似姿があるだけである。

税金という同じ釜の飯を食い続けて来た朋輩だけの事はある。町民福祉の向上が不在である。

さて、ここからの記述が、私の本題である。傍聴席を離れようとすれば、何と資料の回収を要請されたのである。要請者は小嶋副課長である。その理由とは、「総務常任委員会用に作成したものであり、町民向けには更に加工がいる。」からという事である。繰り返す。「総務常任委員会用に作成したものであり、町民向けには更に加工がいる。」からである。聞き返した。

西原:米々フェスタ業務一覧表以外は、記号化されて個人名はない。このどこに、公開できない個人情報があるのか。(誰も答えない。)古谷委員長判断はどうなのか。

古谷幹雄委員長:委員長権限で回収する。

田辺哲夫議員:議員も回収するのか。

古谷幹雄委員長:(相好を崩して)悩ましい部分である。(決して悩んでいるようには見えない。この人物は権限を発動するのが相当お好きらしい。)

四万十町民にとって、上記の会話は記憶するに値する。なぜなら、資料作成を要した側(議会)も、それに応じた側(総務課)条例の解釈、運用を誤っているからである。その条例とは、四万十町情報公開条例であり四万十町個人情報保護条例である。この二つの条例は、「職員の職務内容は、個人情報から除外する」と明記している。総務課課長と副課長は条例を適正に運用できていない。両者の職務遂行能力を疑わざるを得ない。議員側は、更に目も当てられない。彼らは、議会の体を為していない。地方自治法上、委員長の議事整整権は認められている。委員会には調査権審査権も付与されている。今回は職員時間外勤務の調査である。資料と審議は本来一体的なものであり、公開でやった会議の資料が持ち出し禁止であるという矛盾をどう説明できるのか。資料抜きで議事録を作成するつもりか。町民の町政への参画を保障するのが,代議制の一義的な存在意義である。議会に法的に付与された調査権の目的は、調査権の行使により、主権者である町民に対して、町政の実体を明らかにすることである。資料共々明らかにされた実態を議事録に残すのが彼らの責務である。その議事録によって町民から付託された代議制の実質を担保しなくてはならないのである。ところが、「議員だけが知り得る事実があること自体」が彼らの特権であると、曲解している。議員だけが知り得る事実は、民間人のプライバシーの保護目的以外にはない。議員のために議員の特権があるわけではないのである。これが分からないからこそ、議会で事前に合意して、議員報酬引き上げを図るようなことができたのである。よく考えてみれば、このような蛮行に及べた議会が、立法の主旨が理解できるはずもないのである。彼らはかくて、悪意と作為なく、ただの愚かさで、ただの慣習で、法治国家の基盤の腐食、崩壊に日々,手を貸し続けることになる。後日議会事務局に確認したところ、総務課は、議員には、回収を求めず、古谷委員長もこれに同調したという。総務課が、議会の要請に応じて作成した資料は、そもそも総務課に取扱い上の裁量権があるのだろうか。私は、ないと思う。なぜなら四万十町議会は独自の情報公開条例を持たず、四万十町情報公開条例の実施期間に位置付けられているからである。情報公開条例によれば、実施機関が保有す公文書の定義は、「職員が職務上作成、入手した資料で、組織的に用いるもの」である。地方自治法上に、議会の調査権が明記されている以上は、議会の要請に応じて作成し、組織的に用いた(委員や傍聴者に配布して時間外勤務の説明資料とした)文書は、総務課が保管する公文書でもあり、同時に、議会が、職務上入手し組織的に用いた(委員会審議の基礎資料とした文書でもあり、同一内容文書であるとはいえ、異なる実施機関である総務課と議会の各々が保管し、開示請求の対象とすべき文書である、と考えるからである。その意味では総務課が、傍聴者に対して回収を要請すること自体に、条例上の権限の根拠がない。「職員が特定化される懼れがあるので回収したい」が通用すると思っているのである。ここが根本的に間違ってる。たとえ、職員が結果的に特定化されようと、業務内容を特定化することで、不要不急の時間外勤務を抑止し、その業務が本当に必要であれば、恒常的な時間外の発生に対して、過労防止や人員配置の目配りが必要となる。又その職員がその業務に関しての職遂行能力に欠け時間外が発生する可能性も否めない。いずれにしても、職務内容の特定が先決である。これが、「職職内容は個人情報から除外する」規定の真の意図である。これを理解せず、ただ漠然と職員の特定化を回避しようとする出鱈目な運用に終始する総務課は、総務課の名に値しない。条例の本来の意図に適った運用を、監視を通じて、執行部に執行させるのが議会の責務である。そのために調査権が法的に付与されているのである。私は過去に、「議員個人に調査権はないにもかかわらず、情報を得るための議会の調査権から逸脱た調査活動」によって、「議員の地位を利用して、職員に圧力をかけ、業務に支障が生じた」疑義で、政治倫理審査会にかけられ、辞職勧告を受けた。私が実際に為したことは、何人でも利用できる情報公開制度を使って四万十町公文書を入手し、その公文書に係る関連質問を、自ら赴き担当職員に対してしただけの事であり、それが無ければ、電話一本で把握できるようなことをわざわざ本会議で聞くという愚劣にして効率の悪い議会質疑しかできないと考えていたからである。そしてそれは事実ではないだろうか。現況の議会を見れば一目瞭然ではないか。酒井祥成議員などは、議長選で、地方自治法の議員の調査権に触れ、私を標的とした議会運営について力説して議長に選任されたが、それならそれで、酒井祥成議長に対して「地方自治法に基づいての議会の調査権についての首長の見解を聞く」という一般質問通告をした時に、議会運営委員長の堀本伸一議員を通じて、「町の一般事務に該当しないので、却下する。」判断を下したのは、明らかな自己矛盾である。質問を許可するべきであった。あの時それを却下したがゆえに、議会の調査権についての、執行部と議会間で議会の調査権についての正しい認識の共有が未だなく、今回のような、意味不明にして有害な、会議資料回収事件が勃発するのである。議会の調査権について演説して議長となった酒井祥成議長は、町政の監視機関である議会は常に、執行側が法令の適正な理解に基づく、適正な運用を執行しているかをこそ監視しなくてはならないという自覚に欠ける議長であった。当時の堀本伸一議会運営委員長もしかりである。彼らは恐らく法令を理解していない。現職議会議員が、法令を理解していない。これは有害事象である。彼らの罪は重い。ところで、今仕方山本たけし氏の起こした裁判の相手側答弁書が私の手にも渡った。被告四万十町長中尾博憲は、訴訟代理人に顧問弁護士行田博文氏を立てた模様である。この人は、過去に「西原真衣議会報告」を町立図書館に置いて欲しいという、私から教育委員会に対する要望に対して、教育長川上哲夫が相談した相手でもある。「公共の施設の貸付、譲渡に当たるので、条例を制定するか議決が居る」が、行田弁護士の回答であった。「公共の施設の貸付、譲渡に当たるので、条例を制定するか議決が居る」が想定しているのは、売店や飲食店等の営業を目的とする事業体であるというのが、総務省行政課の解釈である。こじ付けもいいところである。その証拠に私が、行田氏に対して、「本会議室、委員会会議室、議図書館、議会事務局は、公共の施設の貸付、譲渡に当たらないのか、条例もなければ、議決もないが。」と聞き返したたところ、「それは別途調べてみないと分からない。」と対応したのである。随分とあやふやではないか。議会は言論の府であり、議員個々の言論の自由有権者へのその流布が最大限保障されていなければならない。これが民主主義の基本である。言論抜きに議員でありたい議員達と言論によって糺されることを渾身の力を込めて回避したい執行側、考えてみて欲しい、私が発刊したかった議会報告書「町政報告」を町立図書館の一角に議会共有スペースを設置して、置かせて欲しい、これだけの要望に対して、顧問弁護士に相談するほど、渾身の力を込めて回避行動に走った川上哲夫教育長と生涯学習課課長辻本明文氏が居たのである。背景にあるのは何か、「能力と資質を問われない採用と人事」これに尽きるのである。能力、資質を問われず、地位と報酬を死守したい議会と執行部は、互いの暗黙の了解で、法令の作為的な曲解をなし続けて来たのである。「地方議会は時の政権のインフラである」というのが私の持論であるが、四万十町議会HPの陳情・請願タブをクリックしてみて欲しい。直近3月の定例会で、陳情書 「「桜を見る会」徹底究明を求める意見書採択のお願い」が議長預かりになっているのが、見て取れる。「議長預かり」とは、「棚上げ」「議会で審議しない」という意味である。彼らから、安倍政権と同質の応答拒否の卑劣さが匂ってこないだろうか。

西原真衣