呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(40)

今回は、四万十町公設塾「じゅうく」について、詳細に考察したい。まずは、この「じゅうく」に、町はどのような予算付けをしているか、である。町のHPで公開されている「四万十町令和元年度予算書」によれば、

高校魅力化支援員嘱託職員報酬:11952千円

高校魅力化支援隊用住居借上料:3566千円

高校生海外研修事業委託料:6500千円

町営塾運営委託料:2200千円

総事業費:39736千円、実に4000万円近い経費である。

次に、生徒数はどうなっているか。

登録者:70人

窪川教室通塾生:30人(週3回の授業で週に少なくとも1回は通塾している生徒数)

大正教室通塾生: 15人(週2回の授業で週に少なくとも1回は通塾している生徒数)

平均一日当たり通塾生:窪川教室12人、大正教室8人

ここで簡単な計算を試みる。

39736千円÷(12人+8人)÷12(ケ月)=165千円

つまり、塾生一人当たり月に165千円の月謝を公費負担しているということである。

これは、かなりすごい話ではないだろうか。

次に成果、実績を見てみたい

まず、四万十町通信新年号によれば窪川高校と四万十高校の進路状況(進学及び就職先一覧)によれば進学に関しては、全て推薦である。(学校確認済み)。一般入試の合格歴はない。進路先を見れば分かるように、県内国公立合格実績もない。

「じゅうく」開設時には、「学力養成コース」と英語コースを併設するという説明であった。英語コースには地元講師を活用するということでもあった。

              と・こ・ろ・が

採用された地元講師は、全員辞めている。さらに、英語検定等の受験実績と合格実績も皆無であると判明した。それもそのはずである。英語の教員免許保持者は塾長みで、彼女は、コンサルタントからの派遣講師なのである。海外留学組13名のうち9名が、「じゅうく」内や改善センター会議室にあるPCでオンライ英会話のレッスンを受けている、と言う。1回380円で30分。契約先は「大人の英会話」契約当事者は「「ファウンデイングベース」と「大人の英会話」、契約料は委託料2200万円に含まれているそうである。山脇政策監曰く、「専門性のある会社が提供するオンライン英会話のレッスン」だそうであるが、テキストを見たことはないそうである。

テキストさえ見なくて、どうして専門性のある会社かが分かるのだろうか。

ここまでで、明らかなのは、「人材育成センター」の室長であり政策監である山脇章および他2人の男性正規職員には、「町営塾」運営ノウハウが全くない、という事である。中学校教員社会免許保持者であったかっての人材育成センター嘱託職員男性に、私は長年英語塾を経営していた経歴を買われて「英語で躓く点について示唆して欲しい」と依頼されて応じたこともある。が、その示唆がどう生かされたか、生かされなかったかが、その後全く伝わってこない。実に失礼な話ではないだろうか。「聞くだけ聞かれてそれきり」である。この時点でもう駄目である。案の定ではないか。その後その嘱託職員は、辞めてしまった。彼の意欲を評価し、フォローアップし、形にできる上司がいなかったのである。

次は、委託料2200万円の支払先であるコンサルタント「ファウンデイングベース」についてである。東京の会社で、社長の佐々木氏は30歳台でリクルート出身、全国10自治体と提携し、「個人の価値を最大化して地域の価値を最大化する」を理念とする人材育成と地域づくりに取り組む会社であるそうである( ファウンデイングベース自社HPより)。

「個人の価値を最大化して地域の価値を最大化する」と社名である「ファウンデイングベース」について、どういう印象を持つだろうか。私としては、実に座りの悪い、居心地の悪い思いがするのである。

「個人の価値を最大化して地域の価値を最大化する」に「なるほど感」が伴うだろうか、否である。単なるキャッチコピーである。個人とは支援対象の青少年、地域とは、事業の受託先自治体である。「地域を知らなければ、地域を活性できない。」という鉄則に照らし合わせた時、この一見よくできてる感を与えるキャッピコピーは木っ端微塵に吹き飛んでしまうのである。ここを感知、指摘できる地元民が一人たりとも居なかったことこそが、地方の衰退の根本理由であることにまだ気が付かないのである。バカじゃないか、と思うのである。このバカの範疇には、勿論、行政、議会、町民もろとも入る。目新しいキャッチコピーや初耳のカタカナ語に異様に弱いのである。行政、議会、町民もろとも。そこで私は、この現状を打開すべく、教育委員会に席を置く国際交流員に、「foundingbaseって日本語にするとどうなる。」と聞いてみた。答えは、「日本語にはならないけど、何かこう、力強いとかいうイメージはある。」とリップサービス満々で、その知能犯の国際交流員は答えた。要は日本語にならないのである。日本語にならないへんちくりんな和製英語を、行政、議会、町民こぞって有難がっている内に、我が四万十町予算2200財源は、このコンサルにまんまとむしり取られたのである。

因みに英語で「founder」の日本語訳は通常「創立者」である。「base」は「基礎、基盤、基地」である。「found」は動詞で、「設立する、創立する」である。であれば、「創立する基盤」とは、何だろう。基盤を創すると言う意図で造語したのなら「base for founding 」が正解じゃないか。因みに「faounding Fathers は、アメリカ建国の父の意であるそうだ。父が建国するという文脈で、foundingがFathersを就職しているとすれば、「foundingbase]とは、基地が設立しているという事になり、語法ミスである。だから英語を母国語とする国際交流員が、「日本語にできない」と言ったのである。本来行政側がここで探知すべきは、このコンサルタント会社の社長の学力レベルの疑わしさである。学力レベルの疑わしい社長が率いる町営塾で地元高校生の学力を養成しようというのだから、しゃれにならない。学力だけではないというならば、百歩譲って、若者を育成するのは、都会から来た若者ではなく、まずは地元の大人ではないか。その為に地元高校が存在している。フルタイムで学力を養成してきた地元高に養成できない学力は、にわか仕立ての町営塾それもまたたく間に、東京のコンサルに乗っ取られたパートタイム町営塾に養成できる訳がないのである。町営塾設立の経緯を知っているが、彼らは、津和野に視察に行き「ファウンデイングベース」運営の町営塾をマネすることに決めたのである。このような自治体が今では全国で10に登ったということである。「ファウンデイングベース」の圧勝である。佐々木社長は、少子高齢化と人口減少に喘ぐ全国過疎自治体に国から投下される地方創成マネー、ふるさと納税寄付金マネー、起業支援マネー人材育成マネーと言う金脈を掘り当てる程度のベンチャー魂はあったのであろう。そうそうこの人物が勝って所属していたというリクルート社は、過去に国会喚問された政治献金事件を初め、直近では、就活生の「リクナビ」閲覧情報を企業に提供していた位の「ニーズ」に目ざとい企業であるのだから、佐々木社長にも、そのような先見性はあるのだろう。ビズネスコンテストの審査員をした時にも、「起業して数年間は金がなく、そうめんだけで半年しのいだ。それでも起業したいかだ。」と、檄を飛ばしていたし、コンテスト終了後の懇親会でも「チェ・ゲバラ」の顔写真をプリントしたTシャツに、ベレー帽と言ういで立ちで現れ、社長と同席を余儀なくされた、「じゅうく」講師たちの緊張がひしひしと伝わってくる狭い店の中で私は、その服従振りに、東京で彼らの置かれている厳しい労働環境を想像せずにはいられなかったのである。

社長はこよなく柄が悪く、社員は、ガラの悪い狼にこよなくつき従う子羊のようだったのである。

そして、山脇室長初め、人材育成センタ―正規職員には、その現実が見えず、ビジネスコンテストに参加、観覧した懇親会出席者の雑談の輪に入って来ることさえできないでいたのである。

東京から来た「じゅうく」スタッフに「地元高校生は、地元のことしか知らない。極端に見分が狭い、見分を広めるには海外留学がもってこいだ。」とアドバイスされて、早速高校生海外研修委託料650万円が予算計上された。

これは、私が、「海外短期留学と学力養成の関連性」を議会質疑した時の山脇政策監の答弁内容である。山脇政策監はさらに続けた。

学力の養成は無論「じゅうく」の柱の一つではあるが、その前に勉学意欲を喚起するための意識の醸成が必要と判断している。

何という安直さであろうか。見分は公費で買えるのか、否である。青少年にとっての見分とは、まずは身近な大人から吸収するものでないのであろうか。そして非常にまずいことには、東京から来た「じゅうく」講師によりいきなり「見分」を問われた地元高校生だが、その背後には、「見分」を「一切問われたこともない」保護者や学校関係者、町職員、周辺の地元の大人達がいるということなのである。「見分」が疑わしい地元の大人によって選出された四万十町の首長や議会議員だからこそ、「個人の価値を最大化して地域の価値を最大化する」「ファウンデイングベース」「海外短期留学」の語感の前に思考停止になったではないのだろうか。この部分を吟味できないでいる内は、「地元高校生限定高校存続目的町営塾問題山積」というのが、私の偽らざる実感である。

 

四万十町議会議員  西原真衣