呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(36)

四万十町とアグリ窪川は一心同体である

四万十町とアグリ窪川は、常に緊密にコラボして事業展開してきた。コラボと言うよりむしろアグリ窪川は、ずっと四万十町の地産外商事業の実働部隊であった。だからこの関係性は一心同体に近い。

アグリ窪川が設立されたのは、1986~1994年にかけて開催された今のTPPの前身版であるウルグアイラウンド多角的貿易交渉において、多額の貿易黒字を抱えていた日本は、自動者輸出を守るためには米のミニマムアクセス、牛肉とオレンジ等の農産物輸入を受け入れる必要に迫られた。その時の国内農家対策、言い換えれば農協対策でもあり、自民党の集票構造の維持策でもあったのが、道の駅、公設観光物産センンター設立事業であった。当時山村振興法や過疎対策特別措置法が議員立法化され、農家所得の向上と地場産業振興を旗印に全国各地で道の駅が雨後の竹の子のように建設されたのである。その経緯から、アグリ窪川の正式名称は、地場産業振興センターであり、農家所得の向上が一義的な設立目的とされた。

             そ●れ●な●の●に

事業報告書を見ても農家所得に該当する項目、フリーマーケットコーナーにおける野菜や加工品の売上額、豚まん製造の原材料費(豚肉と野菜)の調達額が区分明記されていない。おまけに、地元兼業農家には、うるち米1.5kgまで、それもスペースがあるときに限り、売り場を提供する、という運営実態である。アグリ窪川の設立時には、張り切って店長を公募した。ルクルート社で従業員研修の経歴を持つ杉尾さんと言う人物が応募、採用され、アグリ窪川はスタートを切った。彼女は非常に意欲的で、彼女がしたためたアグリ窪川構想に関わるノート一冊分のイラストや覚書を見る機会があり、アグリ窪川に対する並々ならぬ思い入れを感じたことを覚えている。この意欲的な杉尾さんがなぜか突然役場から解雇されたと聞きつけ、私は当時の仲間とお別れを言いに行った。時の町長は前田哲夫氏、助役は武市協三氏、農林水産課課長は甲把英一氏であった。杉野駅長の解雇理由は表向き、「経理が堪能でなかった」とされている。いかにもこじ付けである。駅長である。面接して選考、採用したのは窪川町である。当時を知る知り合いの元窪川町議会議員によれば、「従業員が彼女についていけなかった」という裏事情があったらしい。それならそれで、解雇以外の方法があったのではないか。駅長はそもそも経理事務のために採用されていない。恐らく、彼女を首にした窪川町のトップ自体が彼女についていけなかったのではないか。その証左とも言える逸話がある。彼女が経理が分からないと言い切れるほど、高知県職員出身の前田窪川町長が経理が分かっていたとも思えないのだ。杉尾駅長追放後の駅長は、現職四万十町長中尾博氏であった。町からの出向と言う形でアグリの駅長に就任したのである。当時中尾駅長は、残業代だけで30万円を取っていたという噂があった。内部告発に近い噂と直感した私は、中尾氏が2回目に町長選に出馬した際に、直に本人にこれを確かめてみた。その時の町長選の判断材料として、一有権者である自分としては、避けて通れない事実確認事項であったからである。その時の会話をここに披露したい。場所は改善センターに入居している喫茶店「あぜ道」であり、モーニングサービスを食べていて、偶然中尾氏を見かけたので、「同席していいか。」と声をかけて席を移動し、中尾氏とモーニングサービスを相伴しながらの会話であった。

私:中尾さん、道の駅の駅長時代に、残業代だけで30万円と取っていたという噂がある。それは本当の所どうなのか。

中尾氏:釣りが趣味で土日は休んだ。それで平日に仕事が立て込んだ。

これが、中尾氏の回答の全てである。「残業代だけで30万円」は否定しなかった。否定せず、残業代が30万円に上った理由を、実にぬけぬけと述べたのである。役場からの出向者に残業代を払うのはアグリ窪川である。JALからの出向者の営業部長上の園氏に給与を振り込んでいるのはアグリ窪川である。JAから提示された上の園氏の給料は「法的公文書不存在」で私に開示されなかった。当時の中尾氏のアグリ窪川残業代は、窪川町職員時間外手当なので、単価が高く、月に30万円は下らなかったのであろう。窪川町に記録が残っていたのであり、それを見た他の職員から漏洩したのだろう。杉野氏の後任人事としてどうだろうか。自分の趣味の釣りにかまけて、最も忙しい週末に休み、平日の残業代の時間外手当を窪川町から月に30万円拠出させることに何ら躊躇のなかった中尾博憲駅長を配置した窪川町に、果たして経理感覚、別名経営センスがあったのだろうか。大いに疑問なのである。実にアグリと町の関係性がここに凝縮されている。設立当初から一心同体であり、共犯関係にあるのである。合併後にも、町がアグリに委託した事業は、数多あるが、その中から、2、3ピックアップして、「地場産業の振興と農家所得の向上が、どう実現されて来たのか、あるいは実現されなかったのか、又その原因はどこにあるか」を詳らかにしたいと思う。

まず取り上げたいのは、「滞在型観光モデル構築事業」である。

これは、四万十町商工観光課(賑わい創出課)がアグリ窪川に委託して実施した、観光振興事業である。目的は、四万十町内の観光施設(アグリ窪川、十和道の駅、大正であいの里、松葉川温泉、古民家カフェ半平、ホビー館、オートキャンプ場ウエル花夢等を繋いだ周遊コースを構築し、四万十町訪れた観光客の滞在時間を長くし、町にもっとお金をもっと落としてもらおうという試みである。目論見自体は理解できるし、観光振興施策的には定番であると言える。財源は主に過疎債である。これは町が謝金をし、青の7割が後年国から「措置される」「(地方交付税交付金算定に加算され、町に交付される)「非常医有利な起債」を使って財源が賄われた事業である。この非常に有利な起債が全国の過疎地で積み重なって、国債で賄う国家の財政赤字が積みあがったことは周知のことなので、「非常に有利な起債で町の持ち出しが少ない」と喜んでばかりはいられないのである。時の町長は高瀬満伸氏、商工観光課課長は宮地正人氏、植村有三氏、下藤広美氏と2年単位で目まぐるしく変遷した。アグリ窪川の社長は、高瀬町長が連れて来たとされる生田則明氏であった。この事業は平成24年から27年までの4年間実施された。事業総額は、2億2857万円で、この金額が委託料として全額アグリ窪川に支払われたことになる。

平成24年滞在型観光モデル構築事業
事業費実績値:8075000円
内人件費の額:6735544円
この事業に従事した全労働者数:3人
うちアグリ窪川の従業員数:3人
うち事業実施に伴い新たに雇用創出された者の数:2人
うち新規雇用雇用創出した失業者の数:2人

平成25年滞在型観光モデル構築事業
事業費実績値:7235000円
内人件費の額:5425123円
この事業に従事した全労働者数:3人
うちアグリ窪川の従業員数:3人
うち事業実施に伴い新たに雇用創出された者の数:2人
うち新規雇用雇用創出した失業者の数:2人

平成26年滞在型観光モデル構築事業
事業費実績値:7387000円
内人件費の額:5497652円
この事業に従事した全労働者数:3人
うちアグリ窪川の従業員数:3人
うち事業実施に伴い新たに雇用創出された者の数:2人
うち新規雇用雇用創出した失業者の数:2人

平成27年滞在型観光モデル構築事業
事業費実績値:5160000円
内人件費の額:3921732円
この事業に従事した全労働者数:3人
うちアグリ窪川の従業員数:3人
うち事業実施に伴い新たに雇用創出された者の数:3人
うち新規雇用雇用創出した失業者の数:3人

この事業の成果は、アグリ窪川の従業員を9名新規採用し、新たな加工商品や旅行メニューの開発が試行された。旅行商品としては、松葉川温泉宿泊とホビー館、カッパ組合川下り、ラフテイング、鮎の火ぶり体験、北辰の館でのそば打ち体験等の観光資源を組み合わせ数種類の滞在型観光モデル事業の構築と、旅行商品の旅行会社ヘのセールス及び情報発信と概括できる。これらの周遊プランで、商品として売り出され、現在まで存続しているものは皆無である。そもそも四万十町を訪れる観光客の動向調査について全く言及がなく、単に旅行会社へのセースル時に、一般的な旅行者ニーズを聞き取っているだけである。まず必要だったのは、四万十町を訪れている当時の観光客の足取り、動向調査ではなかったのか。彼らがしたことは、なじみの関係機関(上流淡水漁協、観光協会、町等)との協議だけだったのである。下界が見えていない。因みに令和2年度における商工観光課改め賑わい創出課の観光担当管理職、副課長武井氏は、過去に2億3千万円の公金を拠出して構築を試みた四万十町周遊プランについて、現況でどのような認識を持っているのだろうか。以下が武井氏談である。

※旅行会社企画による四万十町周遊プランが売り出されているかを把握していない。

(因みに四万十町HPには周遊プランの発信はない)

※年に数回赴く東京で亜記載される、旅行関係者や市町村職員観光担当が一堂に会する商談会で、四万十町の観光資源の情報発信をしている。その結果については、把握していない。観光協会も同行している。

観光協会事務局長渋谷氏談として

※情報発信だけではいけない。派遣する職員には、旅行会社に対して消費者ニーズをヒアリングしてこいと指示している。観光資源の紹介とは、そのスポット訪問を織り込んだ(四万十町に立ち寄ってもらう)商品開発を促す目的である。事後的にもメールでやり取りし、フォロ-アップしろと職員には指示している。

賑わい創出課副課長と町外郭団体四万十町観光協会事務局長の言い分の違いに注目して欲しい。渋谷事務局長は、観光振興を仕事にするべく公募で事務局長に就任した、地元出身の民間企業出身者である。渋谷局長の認識と行動は、武井氏に比べれば遥かにノーマルである。感覚が麻痺し切った公務員に産業振興は不可能である。これは賑わい創出課副課長武井氏個人の資質の問題ではない。役所と言う組織の根深い体質の問題なのである。

更に渋谷局長は、「商談会に町職員が行く必要を感じない。」と言い切った。同感である。全国市町村観光担当職員の皆様に言いたい。何のために観光協会を設置し、運営費を例年補助しているのか。税金を使って、二重の給人件費コストで、一人分の仕事をしている。平成8年のリーマンショク以来の企業の倒産件数値が公表されたばかりだが、最も多かった倒産理由が人手不足だったって、知っているのだろうか。知っててもらわなきゃ困る。労働行政も賑わい創出課の所管である。いい加減にしてくれ、である。役所は、税金を食いつぶす考えなのであろうか。

 

四万十町議会議員

西原真衣