呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(34)

 

外国人青年招致招致事」を止めさせたい、と長年思い続けている。理由はいくつかある。まず、自分自身が英語塾の経営経験が20年ほどある中で、ALT(外国語指導助手)が入った授業によって、英語塾の塾の生徒の英語力が向上したという実感が持てたことが一度もないということがある。ALTとは、英語のネイテイブスピーカーであるだけである。アメ、英国、ニュージーランド、オーストラリア等から招聘されている。日本語能力は問われない、第測が条件らしい。各国の領事館で面接を受けるだけらしい。英語教授法を取得している訳でもない。ただネイテイブスピーカーであるだけである。あまりにも怪訝な取り組みなので一度事業を見学した。歌とゲームでゴマ化していた。英語しか話せないので、単独で授業はできない。英語で英語を教えるにしても教授法も知らないのである。結局日本人英語教員の助手をするしかない。そんな彼らに月額報酬30万円が支給される。住居も教育委員会予算で借り上げているし、渡航費用も、傷害保険の掛け金も、研修費用も全て公費負担である。大学を出て(一先ず識字能力が担保され)母国語の英語が話せ(当たり前である)、品行に問題がなければ採用されると考えていいのじゃないか。そして一年毎の更新で最長5年間教育委員会に席を置けるとの事である。こんな、穴場就職口は、まずは本国では見いだせないに違いない。その証拠に、私が見分した外国人の中には、母国ニュージーランドに帰還して広大な土地を購入した青年、新婚の夫を連れて赴任して来たうら若いアメリカ人女性(夫は無職であった)、契約期間満了後にドイツの大学院に入学するということを退任の挨拶で述べていたアメリカ人女性等がいた。彼らは、至れり、尽くせりの日本滞在体験をしながら、3年間鋭気を養い、貯金に励みつつ、人生の次のステップの足掛かりとして、この制度を大いに活用しているのである。この事業の正式名称が「外国青年招致事業」である。昭和62年に、総務省、外務省、文部科学省の三府省乗り入れで創設された。ここで、まず怪訝感が立ち上がってくる。縦割で縄張り意識が伝統的に強い中央省庁が連携してまで新設事業を創設する際には、まず、その事業が本質的に不要不急であるので、尤もらしい方便と、交付税措置と租税特別法に代表される、誘導策、陽動作戦が援用されるのが常である。

私:まずこの事業は任意事業か否か。任意事業であれば、普通交付税措置までして事業を推奨している理由は何か。

総務省自治財政課:交付税の算定をしている。交付税措置が為されている理由は、担当課で聞いて欲しい。

総務省行政局国際室:交付税措置をして事業を推奨している理由は、当時「自治体の国際化」という思想があった。学校教育の場においては、生の英語に触れる事や国際交流の機会を提供するという目的もあった。

私:大学入試共通テストへの英語の民間試験の導入を巡って国会が紛糾しているし、受験生も怒っている。英語の民間試験の導入目的は、グロ-バル人材育成のための4技能の検定と説明されているが、前段で、今までの外国人青年招致事業における外国人指導助手導入によるヒアリング、スピーキング技能向上の事業検証はなかったのか。

総務省行政局国際室:それは主管省である文部科学省に聞いて欲しい。

文部省外国語教育推進室:生の英語に触れることと、ヒアリング、スピーキング力を関連付けて検証した経緯はない。英語の民間試験導入と4技能検定の際にも、外国人青年招致事業をヒアリングとスピーキング力の向上の観点から検証した経緯はない。

外務省人材交流室:在外公館を通じて、人材募集、採用、面接、採用業務を実施している。

事業本体の実施者は(外国青年の渡航、就任、研修、帰還)を取り仕切るのは、一般財団法人自治体国際化協会」である。この一般財団法人は、HP上で財務書類や役員名簿を公開している。特筆すべきは、役員報酬の支払対象者は常勤役員3名で、理事長の岡本保氏は、元総務省事務次官であるで事である。非常勤役員も全て地方6団体関係者で占められている。どう入りで、収入に、一般財団法人全国市町村振興協会からの宝くじ交付金(2億5千9百万円)も計上されている。役員報酬年額平均は、2600万円相当で、退職金は,1100万円相当である。元事務次官が理事長である。これは何を意味するか。交付税を所管する総務省が予算の主導権を握れるという事であり、天下り先を確保できるという事である。事業の要不要は、全て後付けである。「自治体を国際化するという思想」この、噴飯ものの苦し紛れの方便が全てを物語っているではないか。問答は続く。

私:自治体の国際化とは具体的に何をしているのか。

総務省行政局国際室:海外姉妹都市の締結、地場産品海外見本市の開催等である。じゃあJETROあは何する所ぞ、と誰でも思う。国民を馬鹿にして自分達だけが税金を囲い込んで肥え太っているのである。財源を辿ってみよう。腹が立ってくること筆致である。

四万十町予算書から転載

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外務省JETプログラム行政レビューシート

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 四万十町外国青年招致事業の総事業費は、3288万9千円である。これは、外国青年7名文であるから、平成30年度の実績値7944名分は、単純計算で、373億2500万円の交付税措置額となる。これに外務省在外公館による募集、採用事業経費が1億3千万円相当である。それで、外国語指導補助業務の事業検証はなされないまま、4技能検定のための大学共通テスト英語民間試験が導入されようとしていたのである。高知大学人文学部の塩原俊彦教授(ロシア経済専門)は、自著、「民意と政治の断絶ななぜ起きた課」の中で、「日本においては、官僚がロビイストである」と喝破していたが、その通りである。英語民間試験の導入を巡っても、旧文部省の元事務次官が、試験実施団体であるベネッセと共同で検定試験を実施していた一般財団法人・進学基準研究機構に退任後再就職していたと報道されている。

 これだけインターネットが普及し、生の英語が溢れかえっている社会環境下で、単に「生の英語に触れる」目的で、このような金額の公費を負担することがあるとは思えない。それにそもそも、大学入試共通テストで英語の4技能を測るために民間試験を導入するという話と、この「生の英語の発音に触れる」の成果検証はどのように関連付けられているのか、耳にしたこともない有様である。ひょっとして生の外国人に触れることで国際感覚を養えるなどという余禄を期待しているとすればそれは全く見当外れである。私はALTの入った英語の授業を見学したことがある。ゲームと歌に終始していたので、TVでで原語アニメでも見させた方がはるかに安上がりである。英語弁論大会で彼らが審査員をやっているという話も聞いたが、「発音が悪い恐怖」や「英語を喋れない」恐怖心が、教育行政側のトラウマになっているだけである。心底バカバカしいと思う。その証拠が、いくつかある。教育委員会に外国人たちの席があり、授業がないときは、教育委員会内に設置された自席で待機している。授業の準備らしきことをしている人もいるが、教育委員会内部では一行に国際交流が進んでいるようには見えない。外人同志でしか雑談も成立しないほど、周りが外人に緊張しているので国際交流にはならない。教育委員会職員は国際交流なんて興味ないのである。ALTとは別の国際交流員(CIR)が2名いる。CIRには日本語能力が要請される。彼らは、老人ホームや保育園で折り紙や、お遊戯を通じて国際交流に勤しんでいるという事である。この国際交流員は、「異文化ふれあい教室」という名称の町民対象の英会話教室もやっている。町民側からすれば無料英会話教室であるが、国税国債の発行で賄っている普通交付税を使っているので、決してタダではないのである。私が参加していたある、「異文化ふれあい教室」でのCIRの余りのリラックス振りには驚かされた。彼女はコーラを飲みながら授業を展開していたし、そこに集まった有閑夫人たちは、着物を持ち込んで外国人に着せ付けてみたり、きれいに皮を剥いで切り分けた果物を持ち込んで外国人たちを饗応していたのである。楽しい、無料の異文化ふれあい教室だったのかもしれないが、飲食が一概にいけないとも思わなかったが、この事業風景を後で担当者に報告した時の担当者の慌て振りが、私としては、逆にかなり鼻についた。なぜならば、生涯学習課所属の担当職員、森田氏は、教室に参加したのが、CIRの紹介のため最初の1回だけとと言うし、彼女の上司であった川村副課長は、大慌てで、「コーラ飲みは、知らなかった。厳重注意する。」と言いつつ、「業務日誌を書かせてはいるが読んではいない。」とも言うではないか。彼らの、放漫と怠慢の隙をついて、知能犯であるCIRは自由自在にやっていたのである。業務日誌の書き方は心得ている。「コーラを飲みながら授業をしました。」と書く訳ない。教育委員会は彼らに馬鹿にされているのである。面白いエピソードがある。長年このような、自治体の国際化や外国語指導補助という政策の空転(理念と現場の滑稽かつ哀れを誘うようなギャップ)を目にしてきたので、ある日メールで彼らの一人にインタビューを試みた。英文で書いたので、どうせ連中は検閲もできないだろうと踏んだのである。

私:あなたの職場の教育委員会の人達は、表面的にはとてもあなたに親切であなたを丁重に扱うと思うけど、彼らはあなたに対して本当の意味でコミュニケートしようとしているように感じているか。

彼女(21歳のアメリカ人女性):私は学校で、第二次世界大戦戦争終結後、GHQがわずか2年の間に、日本の教育制度を根本から改革したという事を習ったので、一概に日本の教育委員会の人達を責める気にはなれません。

どうだろう。彼女は、周辺の年かさの日本人の誰よりも状況を把握、理解していたのである。もうここで、ノックアウトされている。国際交流どころじゃないはずである。

もう一つのエピソードはある日CIRとATLを家に招待した時の会話である。彼女たちの本音を聞き出したいという意向で招待した訳である。CIRはニュージーランド出身で、ATLはアメリカ出身、共に20歳代の若い女性であった。政治のことが話題になった。当時のアメリカは、ジョージ・ブッシュが大統領、日本の首相は、麻生太郎であった。

ATL(アメリカ人27歳女性):私はアメリカの大統領としてのブッシュを支持しない。けれどもブッシュを大統領にした責任の一端は、自分にもある。

私:人々を圧制から守る最後の砦は、真実を伝えるジャーナリズムだと思う。

CIR(ニュージーランド人、24歳女性):私もそう思う。

てな会話を英語でした。私の英語力で言いたいことが全部言えるわけではないのだが、少なくともこれくらいの会話は成立したのである。因みに彼女たちは国籍は違えど、自分たちを西洋人女性(Western GIrl)と称していた。この辺が興味深かった。

どうだろうか。「麻生太郎を首相にした責任の一旦は自分にもある。」と発言するだろう日本人の若い女性など、今も全くいそうにない状況で、一体何を彼らと国際交流できるのだろう。国際交流とはまず日本語における思考の中身なのである。それが無ければ、交流が成立しない。あれから、随分な時が経過した。けれども何も変わっていない。変わらないのは、「英語が使えるグローバル人材の育成」の標語の前に、ひれ伏してしまう、相変わらずの、我々の物悲しさである。だから、私は心底、この外国人青年招致事業を止めさせたい、と思ってしまうのだ。交付税措置とは、国税自治体に還流させる仕組みである。交付税の原資は今や税収ではなく、国債日本銀行による爆買いであることは誰でも知っている。まだ生まれてもいない日本人からの税収を前倒ししてまで、このような事業の既得権(官僚の天下り先の確保)が守られているのである。交付税国債の発行で賄われていることは、あの麻生太郎でも分かる事らしい。本人が認めている。なぜ、この愚かな政策を誰も止められないのか。ウキペデイアによれば、2010年の行政刷新会議で、この「外国人青年招致事業」の見直しが決まったが、それに「日米文化教育会議」が、反対声明を出したそうである。今の文部科学省の迷走を見れば、「文化教育」ではなく、GHQの改革以降の日本の「教育文化」の中身が既に崩壊していることを、最も間の当たりにしたのはきっと、現役受験生だろうと思う。彼らに取って、この痛手が真の意味での「主権者教育」となることを期待したい。やはり学ぶことは、ただではないのだ。

元四万十議会議会議員  西原真衣