呆れた議員達の行状

地方議会の実態から日本を見る

風力発電と蠢く町政(21)

 下元昇四万十町議会議長の反応のおざなりさに実にげんなりしたが、手をこまねいている訳にもいかない。そこで、次の一手四万十町総務常任委員会への公聴会開催への請願提出を画策している。公聴会とは、アメリカ議会委員会が政府関係者や利害関係のある民間人を公述人として招聘し、頻繁に公開でやっているあの公開ヒアリングである。あれは見ててかなり面白い。嘘の証言をしないという宣誓から始まり、議員からの質問に対して公述人が公述する。見る側からすれば、議員と公述人との質疑応答を通じて、今何が起きているかが可視化され、議会の機能も同時に可視化される。正しく議会の可視化を主張して、議長となった下元昇議長は元より、今年2月の議会議員選挙で、開票日の翌日の高知新聞の朝刊で、「合併以来20代、30代の立候補者が初めて出た選挙であった。議員報酬引き上げの効果かと思いきや、立候補者によれば、議会が何をしているか分からない、議会の可視化に取り組みたいということが立候補の動機であった。」と報道され、取材に応じた二人の候補者の一人である、30代の当選者、村井真菜議員にも是非積極的に、この大藤風力発電事業計画の公聴会開催に向けて動いてもらいたいと期待している。元より村井真菜議員は反対の立場で、3月にも9月にも質問しているので、期待もひとしおである。さて、公聴会開催請願提出に向けて、まず抑えておくべきは、以下の公聴会関連の法令である。

 まず地方自治法では、

115条の2( 利害関係者からの意見聴取)

普通地方公共団体の議会は、会議において、予算その他重要な議案、請願等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聞くことができる。

普通地方公共団体の議会は、会議において、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認める時は、参考人の出頭を求め、その意見を聞くことができる。

地方自治法109条の5

第115条の2( 利害関係者からの意見聴取)の規定は、委員会について準用する。

⑧委員会は、議会の議決より付議された特定の事件については、閉会中もこれを審査することができる。

 次に、四万十町議会基本条例では、

 3 議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第100条の2に規定する学識経験者等による専門的調査の活用並びに同法第109条第5項に規定する公聴会制度及び同条第6項に規定する参考人制度を活用して、町民等の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映するものとする。

と規定されている。

 次に、四万十町会議規則では、

第14章 公聴会
公聴会開催の手続き)
第117条 議会が、法第115条の第1項の規定により、会議において、公聴会を開こうとするときは、議会の議決でこれを決定する。
2議長は、前項の議決があったときは、その日時、場所及び意見を聴こうとする案件その他必要な事項を公示する。
(意見を述べようとする者の申し出)
第118条 公聴会に出席して意見を述べようとする者は、文書であらかじめその理由及び案件に対する賛否を議会に、申し出なければならない。
(公述人の決定)
第119条公聴会において意見を聴こうとする利害関係者及び学識経験者等(以下「公述人」という)は、前項の規定によりあらかじめ申し出た者及びその他の者の中から、議会において定め、議長は、本人に、その旨を通知する。
2あらかじめ申し出た者の中に、その案件委対して、賛成者及び反対者があるときは、一方にかたよらないように公述人を選ばなければならない。
(公述人の発言)
第120条 公述人が発言しようとするときは、議長の許可を得なければならない。
2前項の発言は、その意見を聴こうとする案件の範疇を超えてはならない。
③公述人の発言がその範囲を超え、又は公述人に不穏当な発言があるときには、議長は、発言を制止し、退席させることができる。
(議員と公述人の質疑)
第121条 議員は、公述人に対して質疑をすることができる。
2公述人は、議員に対して質疑をすることができない。
代理人又は文書による意見の陳述)
第122条 公述人は、代理人に意見を述べさせ、又は文書で意見を提示することが出来ない。ただし、議会が特に許可した場合は、この限りでない。
第15章 参考人
参考人
第123条 議会が、地方自治法115条の第2項の規定により、会議において、参考人の出席を求めようとするときは、議会の議決でこれを決定する。
2前項の場合において、議長は、参考人に、その日時、場所及び意見を聴こうとする案件その他必要な事項を通知しなければならない。
3 参考人については、第120条、第121条及び前条の規定を準用する。

 次に四万十町委員会条例では、

第3章 公聴会
公聴会の手続き)
第22条 委員会が、公聴会を開こうとするときは、議長の承認を経なければならない。
②議長は、前項の承認をしたときは、その日時、場所及び意見を聴こうとする案件その他の必要な事項を公示する。
(意見を述べようとする者の申し出)
第23条 公聴会に出席して意見を述べようとする者は、文書であらかじめその理由及び案件委対する賛否を、その委員会に申し出なければならない。
(公述人の決定)
第24条 公聴会において意見を聞こうとする利害関係者及び学識経験者等(以下「公述人」という)は、前条の規定によりあらかじめ申し出た者及びその他の者のうちから委員会において定め、議長を経て本人にその旨通知する。
2あらかじめ申し出た者のうちに、その案件に対して、賛成者及び反対者があるときは、一方に偏らないように公述人を選ばなければならない。
第25条 公述人が発言しようとするときは、委員長の許可を得なければならない。
②前項の発言は、その意見を聞こうとする案件の範囲を超えてはならない。
③公述人の発言がその範囲を超え、又は公述人に不穏当な言動があるときは、委員長は、発言を制止し、又は退席させることができる。
(委員と公述人の質疑)
第26条 委員は、公述人に対して質疑をすることができる。
2、公述人は、委員に対して質疑をすることができない。
代理人又は文書による意見の陳述)
第27条 公述人は、代理人に意見を述べさせ、又は文書で意見を提示することができない。
但し、委員会が特に許可した場合は、この限りでない。
第4章  参考人
参考人
第28条委員会が、参考人の出頭を求めるには、議長を経なければならない。
2前項の場合において、議長は、参考人にその日時、場所及び意見を聞こうとする案件その他必要な事項を通知しなければならない。
3.参考人については、第3条の規定を準用する。

と規定されている。会議規則と委員会条例とでは、公聴会開催の手続きに関する規定が一部重複しているが、公聴会開催関連法令として敢て、全文記載した。

 上記法令を読むかぎり、委員会、この場合総務常任委員会は、既に9月定例会中に、「四万十ふるさとの自然を守る会」から、村井真菜議員と武田秀義議員を紹介議員として提出された「大藤風力発電事業計画の中とヤイロ鳥保護条例の制定を求める請願書」審査が、既に議決を経て付託されているので、総務常任委員会で採決を経たうえで、議長の承認があれば、公聴会が開催可能である。総務常任委員会の委員は、古谷幹夫委員長、堀本伸一議員、田辺哲夫議員、水間淳一議員、吉村アツコ議員、下元昇議員である。開催が決定、公示されれば、真に利害を有する、意見を述べようとする者から、委員会に対して、賛否とその理由を明らかにした意見公述の申し出が為されることになる。申し出た者その他から委員会が、出席者を選定し、賛成、反対双方の立場で公平に意見を公述させる。公聴会であるので、無論、公開でやる。賛成意見は、まずオリックス社が述べてくれるだろう。四万十町議会執行部答弁によれば、方法書の段階では、「既存の林道を使う。」「土砂災害防止には、万全を期す。」また、高知県環境影響技術審査会ヒアリングでは「工事に伴って出る排出土砂は収支均衡(山から出さない)。」、景観協議会議事録によれば、「風車は、20年後には自己負担で撤去する。」また四万十町議会議員対象説明会では、「風車は20年後には風景に馴染む」と発言しているオリックス社は、ぜひ公開の場で、より具体策に踏み込んだ内容で公述してもらいたい。反対意見は、無論まず「四万十ふるさとの自然を守る会」代表佐藤さや氏が公述してくれるであろう。それはさることながら、もし委員会が招聘すれば、私見では、反対意見の圧巻は、大藤風力発電事業立地予定地立体模型の製作者、武吉廣和氏であろうと予測する。氏の場合は、早稲田大学理工学部建築学科の在籍歴からしても学識経験者の位置付けがふさわしい。折しも、総務常任委員会の委員長古谷幹夫議員は、従前の議会発言によって、「地元学」の熱心な推奨者であることが知られている。従ってこの機会に、武吉廣和氏を、「地元学」の実践的学識経験者として公聴会の公述人として選任することは、地元学振興に資する、古谷幹夫委員長の見識に裏打ちされた判断となるのではないか。大いに期待するところである。最後に賛成の立場で是非とも意見を公述してもらいたいのは、中尾町長が議会答弁中で言及した、「経済的恩恵を受ける町民」である。中尾町長は、「町長である以上、反対意見だけ聞くことはできない、町長として中立、公正な判断を下すには、双方の意見聴取が必要不可欠である。」と答弁した、実に御尤もである。そして、それはそのまま、公的議決機関である議会委員会にも該当する。ところが、である。現実問題として、経済的恩恵を受ける町民は、まずは賛否を自ら公にはしないのが常である。なぜなら、それが利権の本質であるからである。利権の本質上、彼らは公開の場には出てこない。しかし、である。彼らの存在を議会という、最高位の公的な場で、自ら進んで明らかにしたのが、この中尾博憲町長、その人なのである。「経済的恩恵を受ける町民」とはオリックス社から工事の発注を受ける町内事業者と立地予定地の地権者であることは、誰の目にも明らかである。中尾町長は、自分に聞こえてくる賛成意見の出所として「経済的恩恵を受ける町民である町内事業者」と発言した。議場の傍聴席で、私は、しかと聞いた。つまり中尾町長は議場でいみじくも、「利権とは経済的恩恵である」という、自分にとっての自明の理を、自明の理として議場で披歴したのである。高知県知事選を24日に控え、期日前投票が既に始まっている。聞くところでは、先日農村環境改善センターで実施された、浜田せいじ立候補者個人演説会には、中尾博憲町長と、森武士副町長の姿もあり、中尾町長は演壇に登ったらしい。国選の時は山本有二高野光二郎選挙カーに同乗していた。これらの一連の行動から見えてくるのは、己の政治的立場自体が、即ち利権であり、自己が享受している経済的恩恵の源泉であり、それだからこそ、自民党公認候補の応援に、町長として馳せ参じることに何ら躊躇がない中尾博憲の人物像である。ここでは、中立と公平は棚上げされているが、本人がその矛盾に明らかに気が付いていない。従って「利権とは経済的恩恵である。」という議会答弁は、中尾博憲本人の現実認識そのものである。中尾博憲にとって町長になることはそのまま、利権にあやかり、利権から来る恩恵を自分自身が享受することであったのだろう。だからこそ、その妻は、あえて選挙事務所で私に向って、敢て、「主人は町長になりたいんじゃないんです。町政に課題があるから、他にやってくれる人が居ないから町長選に出たんです。」と、私が聞いてもないことに、自ずから不自然な釈明めいたことを言ったのである。「利権とは,自身の経済的恩恵である」中尾町長が、「議員職とはうま味のある副業である。」という本音を共有している議会からの「議員報酬を町長発案で、引き上げてもらいたい」という要望に、阿吽の呼吸で理解を示したことが、その紛れもない証左である。町長と議会、彼らの内実の目撃者を自認している私としては、アメリカ議会の公聴会の如く、政府関係者ならぬ四万十町行政関係者、中尾町長、山本企画課課長、中井四万十川対策室長を参考人として招聘し、私が、ごく最近、直に、両人から聞き出した、

山本企画課課長の「オリックス社による大正地区限定の住民説明会の開催を新聞記事で知った。」「地区住民限定とは知らなかった。」

中井四万十川対策室長の「オリックス社から依頼を受けて、瀬里、打井川、上岡、下岡、轟崎、大正街中数ケ所の区長名と連絡先を教えた。」

「土砂が四万十川の汚濁と魚類及び水生生物に及ばす影響を高知県内の高専か工科大学に調査研究を委託しようかと考えている。ただし、あくまで一般論で。風車の輸送路の道路拡幅値や最終的な風車の立地基数と立地場所が決定されるのは、風況調査後の実施設計作成時だから2年後ぐ位じゃないかと推測している。アセスメントが終了するのは、4年後位じゃないか。それで、現時点で、風車設置工事に伴って排出される土砂量を試算しても意味がないので、その排出量試算値に基づく河川汚濁の影響調査、研究ではない。」とかを証言させてもらいたいものであると、強く思う。

かくて、町民が、かって見たことのない「機能する議会」を現出させてみたい、と私は妄想する環境影響評価法をざっと読んだだけの公聴会傍聴である私は、事業者から環境影響評価図書が送付され、事業者に意見を述べ、事業者にヒアリングができ、事業者に回答を求め、事業者に要望を出せる対場の行政が、なぜ「推測」に基づいて業務遂行しようとするのか、そしてオリックス社の任意の地域限定住民説明会開催に区長の名前と連絡先を情報提供して協力し、その説明会が、地域住民以外参加できないことを知っていながら、異を唱えない行政のあり方をつぶさに観察しながら、また同時にその真相を議会が質疑によってどこまで引き出せるかの力量を計りながら、公聴会に聞き入るだろう。開発事業者の真意を質し、この地の自然資源と住民の生活、健康を守るのは、行政と、行政を監視する議会の責務だ。今後大正地区10か所で随時開催されると高知新聞で報道された、地域住民以外に開催日時が周知されない住民説明会とは、開発事業者が行使する典型的な分断工作である。「権力」を「利権の配分に預かれる力」と定義すれば、莫大な金額の工事を発注できるオリックス社こそ、その持てる権力の本質を理解している。本会議で「経済的恩恵を受ける町民」などと口走り、利権の存在を可視化してしまった中尾町長の百倍も、権力の本質を理解している、と言える。真の利害関係が、大正の打井川、瀬里、下岡、上岡、轟崎と大正町街中にあると、オリックス社自らが示しているのではないか。巨大な利権の配分という絶大な権力を持つオリックス社が、地区住民以外の人間を招かない説明会の開催によって、情報の非対称化を目論んでいることが、四万十町には見抜けないとでも言うのだろうか。これが、前回書いた、「権力の根源は情報の非対称性にある」の意味である。年毎に基本給8500円の基本給の昇給が保証されている、そして中尾町政下で、毎年給与や賞与が引き上げられ続けてきた四万十町行政職の面々、そして昨年12月に22%の議員報酬が引き上げられたばかりの四万十町議会の面々、あなた方の仕事振りは、今こそ、注視されている。

四万十町議会議員  西原真衣